MACKLEMORE & RYAN LEWIS
圧倒的な成功を収めた2013年の顔はこんな顔……
ビルボード誌の年間総括企画〈Best Of 2013〉、そして第56回グラミー賞のノミネーション発表を受けて、改めて2013年のマックルモア&ライアン・ルイスの無双ぶりを痛感している次第。彼らは年間シングル・チャートの1位に“Thrift Shop”、5位に“Can't Hold Us”を送り込んでいるほか、グラミーでは〈最優秀新人賞〉〈最優秀アルバム賞〉〈最優秀楽曲賞〉の主要3部門を含む計7部門で候補になったりと、誰が〈2013年の顔であったか〉を誇示するような圧倒的な強さを見せつけている。
USのヒップホップ・マップでも滅多にクローズアップされる機会がない太平洋岸北西部、ワシントン州シアトル出身のマックルモアがラッパーとしてのキャリアを本格的に歩みはじめたのは、2000年のこと。その後、2005年のデビュー・アルバム『The Language Of My World』、2009年のミックステープ『The Umplanned Mixtape』を経て、同郷のプロデューサーであるライアン・ルイスと知り合ってデュオを結成。2012年にはソース誌やXXL誌といった大手ヒップホップ・メディアの注目新人企画に取り上げられて一躍その名を知らしめた。“Thrift Shop”や“Can't Hold Us”を含むアルバム『The Heist』がリリースされるのは、この年の10月のことだ。
一連のヒット曲のポップなイメージも手伝って、今回突発的にブレイクした2人をポッと出の白人ヒップホッパーと軽視している向きもいるかもしれないが、彼らがシーンに認められた存在であることはその経歴はもちろん、BETアワードでの最優秀グループ賞受賞だったり、“Thrift Shop”や“Can't Hold Us”がR&B/ヒップホップ部門の年間チャートにおいてもそれぞれ1位と3位につけている事実からも容易に察することができると思う。“White Privilege”や“A Wake”などの楽曲、さらには“Thrift Shop”の〈That people like "Damn! That's a cold ass honkey"〉(「白人なのにイケてる」ってみんなが言う)というラインからも窺えるように、常に〈白人がラップすること〉と真摯に対峙してきたマックルモアは、十分信頼に足る思慮深いアーティストといっていい。
フリースタイル・フェローシップ、そしてスラッグやセイジ・フランシスらライムセイヤーズ勢からの強い影響下にあるスタイルも含めて、マックルモアはもっともっと語られて然るべきラッパーだろう。同性婚を支持した“Same Love”、物質主義/消費主義を扱った“Wings”(リサイクルショップを題材にした“Thrift Shop”も?)など、ヒップホップのステレオタイプに一石を投じる果敢な姿勢も実に頼もしい。今後は周辺アーティストとのコネクション、特にブラック・ヒッピーの面々との関係性がより強調されるような展開になってくると、また見え方が変わってくるんじゃないかと思っている。
▼『The Heist』に参加したアーティストの作品。
左から、アレン・ストーンの2011年作『Allen Stone』(StickyStone/ATO/Decca)、スクールボーイQの2012年作『Habits & Contradictions』(Top Dawg)、バンド・オブ・ホーセズの2012年作『Mirage Rock』(Columbia)
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