R&B――(1)
ビヨンセ!というのは空耳ですよ……。ダンス・トラックに傾注していたメジャー・シーンの流れが前年のブランディあたりから改めてR&Bらしさに立ち戻ってきた流れがある一方、R&Bの拡大解釈によってゴチャゴチャに見えたりもしましたが、メインストリームでは有望新人のK・ミッシェルや迷いをなくしたシアラ、そしてテイマー・ブラクストンといった女性シンガーたちが先進性と安定感を上手く両取りしていました。男性ではロビン・シックがついにクロスオーヴァーしたのも喜ばしい成果でしたし、TGTやアヴァント、ジャヒームら2000年代組の奮起が目立ちましたね。*出嶌
BRUNO MARS 『Unorthodox Jukebox』 Atlantic
ポリス風の先行曲から80年代レゲエ・オマージュ、ディプロとのコラボまで、音の意匠こそ幅広くなったが、何より図抜けたメロディーメイカーぶりによってこの2作目も大ヒット。結果的にもっとも2013年らしい仕上がりとなったのはブギーな“Treasure”か。*池谷
KEYSHIA COLE 『Woman To Woman』 Geffen
公私ともに心機一転となったアルバムだが、ロン・フェアの元を離れても従来のキーシャ・コール像はキープ。メロウな音に哀感を滲ませながら一途に歌い上げるソウル・ウーマンぶりは、共演した年上のアシャンティが小娘に見えるほど堂に入ったものだった。*林
GLENN LEWIS 『Moment Of Truth』 Ruffhouse
アルバム2枚分の楽曲がお蔵入りになる憂き目を経て11年ぶりの復帰作は、R&Bファンの求める彼らしさに見事応えた快作。デビュー時と同じくドレー&ヴィダルらフィリー人脈が関わった心温まるネオ・ソウルは、以前と変わらぬ芳香を放っていた。*池谷
MAYLEE TODD 『Escapology』 Do Right
カナダはトロントの自作自演派歌姫による2作目。バックパッカー的サイケ〜辺境趣味やフリーソウル文脈で聴いても芳しい良作だ。なかでも日本で人気を得た爽快なナンバー“Hieroglyphics”は、アシッド・ジャズ復権と呼びたい2013年の流れにこそフィットするものだった。*池谷
BOOKER T. JONES 『Sound The Alarm』 Stax/Concord
古巣のスタックスに戻って原点回帰かと思いきや、現行R&Bシンガーたちとのコラボで時代に向き合った巨匠。半世紀変わらないオルガンのヴィンテージな音色を軸としながら、アヴィラ兄弟らの援護を受けて凡百のレトロ・ソウルとの違いを見せつけた快作だ。*林
LE'JIT 『New Beginning』 MoHitz
インディー・ソウルの雄として人気を誇るルイジアナのアンソニー3兄弟による久々のアルバム。襲い掛かるようなロイの豪快なバリトンだけでも十分凄いが、クリスの超絶ファルセットが絡んで繰り広げるくんずほぐれつの歌合戦は、TGTを迎え撃つほどの迫力だった。*林
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