高純度のヒロイン、その輝きの向こう側に透けて見えるものは……
ロードことエラ・イェリッチ・オコナーという最近17歳になった女の子の、どこがそれほどまでに革新的だったのか。ニュージーランド出身の彼女が放った“Royals”はどうして全米シングル・チャートで9週間も1位をキープし、そしてグラミー賞で最優秀レコード/最優秀楽曲という主要部門を含む4つの項目にノミネートされたのか。日本ではその凄さがまだちょっと伝わりきれていない部分もあるかと思うので、ここで考えてみたい。
ロードが注目されたのは、あまり宣伝がなかったにもかかわらずEP『The Love Club』で本国チャート1位を獲得した2012年のこと。しかしバイオによれば、彼女が現在のレーベルと契約したのはその3年前にあたる13歳の時だ。当時の映像をネットで観ればわかる通り、すでにだいぶ大人びた歌い方をしている。その歌唱法を磨いて特徴化させると同時に、頭のなかにある曲のイメージを顕在化させる術を教えた人物こそ、2014年2月に日本盤化されるファースト・アルバム『Pure Heroine』を手掛けたプロデューサー兼ソングライターのジョエル・リトル。ネプチューンズに多大な影響を受けたという彼は、ヒップホップのビートを薄〜く敷きつつ、ロードが大好きだと言うジェイムズ・ブレイクのような引き算の美学に貫かれたサウンドで“Royals”も仕上げた。なかでも際立っているのが、印象的な主役のヴォーカルとフローレンス・アンド・ザ・マシーンを想起させる重層的かつ広がりのあるコーラスで、それが“Royals”をスペシャルなものたらしめている。
ロードの歌はと言えばラナ・デル・レイがよく引き合いに出されるくらいアンニュイだけど、メロディーそのものは口ずさみやすい。ライヴ会場では“Royals”の時に女の子がみんなでシンガロングしているようで、それはクールな音と親しみやすい歌メロの融合という成り立ち方によるところも大きいのだろう。そして、忘れちゃいけないのが歌詞について。〈お金とか名声とかそっちが夢中になっていることに、こっちは振り回されたりしないんだから〉といった箇所から〈女王様って呼んでもいいよ、そしたら期待に応えてあげるから〉と続くあたりは芯の強さを通り越してパンク的というか、〈あっち側の住人〉に毒づいているようで痛快だ。〈私は自分の生きたいように生きる!〉宣言を、こうして批評的に歌える聡明さおよび文学的な感性(彼女の母親は有名な詩人)も、ティーンの価値観を揺さぶったのかもしれない。
頭は良さそうだけど、決して頭でっかちではない──そんなニュージーランド娘の歌による革命は、でもまだ始まったばかり。さあ、ロード、キミの唱える〈カッコイイことは何てカッコ悪いんだろう〉の意味を世界中に教えてやれ!
▼関連盤を紹介。
左から、ジェイムズ・ブレイクの2013年作『Overgrown』(Atlas/A&M)、フローレンス・アンド・ザ・マシーンの2011年作『Ceremonials』(Island)、ラナ・デル・レイの2012年作『Born To Die』(Stranger/Interscope)
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