インタビュー

LONG REVIEW――LAMA 『Modanica』



幻惑的なサイケデリア



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カットアップされるフルカワミキの声と、ハイファイなアンビエンス、輪郭のくっきりした電子音――再生するやいなや、モダンに構築された音響の快楽にずっぽりとハマってしまう。LAMAのファースト・アルバム『New!』は、エレクトロニックな要素を配合しつつもキャッチーなバンド・サウンドを主軸とした作品だった。だがこの新作で彼らは、メンバーそれぞれが繰り出す音をより緻密に分解&再構築。テクノ~エレクトロニック・ミュージックの最前線ともシンクロする耳新しい響きを獲得している。なによりもこの質感こそが本作のキモだろう。

前半は昂揚感たっぷりのメロディアスでアッパーな楽曲が並んでおり、特にナカコーがヴォーカルを取る“Parallel Sign”はアンセミックな風格を湛えた名曲だ。中盤に置かれた“D.B.A.”と“Domino”はミニマルな骨格のナンバーで、スタジオワークに特化し、テクノ方面へと傾倒する本作でのバンドの姿勢がもっとも顕著に出ていると言えるだろう。

そして後半には、よりディープに潜航する音世界が待ち受けている。メロウでメランコリックな“Dear”、現行インディー界のノイズ~ドローン趣味を採り入れた“So”や“Life”……とにかく多面的なサウンドが展開されているわけだが、それらすべてをひっくるめてあえて一言で形容するなら〈サイケデリック〉ということになるかもしれない。あらゆるスタイルで繰り広げられる眩惑的で心地良い音の波。聴いていると、ここから抜け出せなくなるようなヤバさすら感じてしまう。

総じてエクスペリメンタル寄りのエッジーな作品であり、かつ親しみやすく開放的。それはLAMAがデビュー時から備え続けている魅力でもある。堂々たるキャリアを持った4人が集結しつつ、バンドであるからして責任は4等分されるわけで、それゆえの気楽さがLAMAの軽みを生み出しているのかも。それこそがあらゆるバンド・マジックの正体なのかも……なんてことも考えてしまった。


カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2012年12月12日 18:01

更新: 2012年12月12日 18:01

文/澤田大輔