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『第10回ラテンビート映画祭』

カテゴリ
o-cha-no-ma CINEMA
公開
2013/10/10   10:00
ソース
intoxicate vol.106(2013年10月10日発行号)
テキスト
text : 長屋美保


ラテンビート
Photo by Paola Ardizzoni & Emilio Pereda © El Deseo



映画にこめられた、ラテンの人々の肝のすわりかたから学ぶこと

ラテンの人々は肝がすわっている。ピンチのときこそ、どんと構えて乗り切り、失敗しても恥など考えず、何度でもやり直す。そんなラテンの「肝」、すなわち「覚悟」を伝えるラテンアメリカやスペインの映画を日本に紹介してきたラテンビート映画祭が、今年で10回目を迎える。

今回の映画祭では、国際的に頭角を現すチリの監督セバスティアン・シルバの『クリスタル・フェアリー』と『マジック・マジック』や、キューブリックの『時計じかけのオレンジ』『博士の異常な愛情』のタイトルデザインを手がけたキューバのアーティスト、パブロ・フェロの生き様に迫ったドキュメンタリーでチャード・ゴールジェヴィッチ監督の『パブロ』、グリム童話の白雪姫の舞台を1920年代のスペインに置き換え、全編モノクロ無声映画という大胆な手法に挑戦し、ゴヤ賞など各国の映画祭50部門で受賞したパブロ・ベルヘル監督の『ブランカニエベス』、2013年のオスカー外国語映画賞にもノミネートされた、チリのアウグスト・ピノチェト独裁政権の継続か否かを問う1988年に行われた国民投票前の賛成「Si」派と反対「No」派によるテレビキャンペーン合戦を描いた心理劇の秀作、パブロ・ラライン監督の『NO』など、世界的に評価された話題作を多く含む、新旧映画が計19本上映される。

なかでも必見なのが、スペインの鬼才ペドロ・アルモドバルの新作映画『Los amantes pasajeros (英題I'm So Excited!)』。人間の深い闇を描いてきたアルモドバルが、辛辣なコメディ路線の初期作品『神経衰弱ぎりぎりの女たち』に立ち返ったかのような語り口で、物語はスペインからメキシコへむかう機体トラブルを起こした旅客機内を中心に展開する。パニックに陥る乗客たちを落ち着かせようと、オネエ系の客室乗務員たちが、ディスコダンスを披露し、麻薬入りカクテルをふるまう姿に大爆笑しつつも、かたくなだった乗客たちが、人生最大の危機に立ち向かい、立場やプライドを捨て、殻を破り、時を謳歌する姿にこころ打たれる。

また、2013年のカンヌ国際映画祭最優秀監督賞となった、メキシコ人監督、アマ・エスカランテの『エリ』も見逃せない。メキシコの地方にある日系自動車部品工場で働く若者とその家族が、警察と麻薬組織の癒着による犯罪に巻き込まれる姿をリアルに描き、目を背けたくなる暴力や、絶望的な無力に打ち拉がれる。しかし、敗北感を抱えながらも権力に立ち向かおうとする、主人公のあがきに共感するのだ。

映画祭のラインナップには日本劇場公開決定作品も含まれているが、この機会を逃したらなかなか観れない作品もたくさんある。映画との出会いも一期一会。あなたの肝に効く映画に出会えるかもしれない。



オープニング上映作品
映画『I'm So Excited!(英題) Los Amantes Pasajeros』


監督:ペドロ・アルモドバル
出演:カルロス・アレセス/ハビエル・カマラ/ラウル・アレバロ/ロラ・ドゥエニャス/セシリア・ロス/ブランカ・スアレス/他
配給:ショウゲート(2013年 スペイン)
◎2014/1/25(土) 新宿ピカデリー他にて公開



【第10回ラテンビート映画祭 】


◎東京:10/9 (水)~14(月・祝)新宿バルト9
◎京都:10/17(木)~20(日)T・ジョイ京都
◎横浜:10/24(木)~27(日)横浜ブルク13
◎梅田:11/8 (金)~10(日)梅田ブルク7

〈作品ラインナップ〉
●『ブランカニエベス Blanca Nieves』監督:パブロ・ベルヘル
●『5月5日の戦いCinco de Mayo:La batalla』監督:ラファ・ララ
●『ふたりのアトリエ~ある彫刻家とモデル El Artista y la Modelo』監督:フェルナンド・トルエバ
●『ワコルダ Wakolda』監督:ルシア・プエンソ
●『リオ2096 Uma História de Amor e Fúria』監督:ルイス・ボロネーズィ
●『パブロPablo』監督:リチャード・ゴールジェヴィッチ
●『マジック・マジック Magic Magic』監督:セバスティアン・シルバ
●『エリ Heli』監督:アマ・エスカランテ
●『イノセンテの描く未来 Inocente』監督:ショーン・ファイン、アンドレア・ニックス・ファイン
●『ダヤニ・クリスタルの謎』(英・メキシコ)監督:マーク・シルバー
●『NO』(チリ)監督:パブロ・ラライン
●『暗殺者と呼ばれた男』(コロンビア・アルゼンチン)監督:アンドレス・バイス
●『グロリア(仮題)』(チリ・スペイン)監督:セバスティアン・レイロ
●『クリスタル・フェアリー』(チリ)監督:セバスティアン・シルバ

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