アジアンテイストのダブを基調に、クラブ、ロック、レゲエ、ヒップ ホップなどの様々な音楽要素を加えた独特な無国籍サウンドと過激な社会派メッセージで世界中に一大旋風を起こし続ける、ミクスチャー・ダブ・シーンの異端児集団エイジアン・ダブ・ファウンデーション(以下ADF)が3年振り6枚目となる最新アルバムを全世界に先駆け、日本で大幅先行リリース!!本作は、タイトル通りパンク・ロック要素も加わった渾身の1枚となっており、彼等の代表作『Enemy Of The Enemy』をも凌ぐ過去最大の勢いと激しさを兼ね備えた、まさにADF節炸裂!!とも言える大興奮内容。LIVEアンセムとなること間違いなしのキラー・チューン揃いで、ジャンルを問わず、全音楽ファンを魅了するであろう作品です!なんとイギー・ポップをフィーチャーして、ストゥージスの名曲“No Fun”をカヴァー!
タワーレコード(2009/04/08)
思えば、ADFはメンバー・チェンジのたびにサウンドの色合いを柔軟に変更してきたユニットである。2作目の『R.A.F.I.』や3作目『Community Music』を経てフロントマンのディーダーが脱退した際も、ツイン・ヴォーカルに切り替えてサウンドの突進力を強化し、結果的にはハードな『Enemy Of The Enemy』をキャリア最大のヒットに押し上げることに成功している。また、スキルフルなMCのゲットー・プリーストを加えた5作目『Tank』ではヒップホップ寄りのキャッチーな側面も見せていた。
だからして、中心メンバーだったドクター・ダスらの離脱も、ADFにとっての後退を意味しない。チャンドラソニックの弟だというマーティンを新ベーシストに据え、さらにMCのアル・ラムジェンも加えて臨んだ新作『Punkara』の多彩な仕上がりは、よりタイトになったバンド内の状態の良さを感じさせるものだ。ディック・デイルばりにギラギラしたサーフ・パンク“Super Power”で幕を開け、彼ららしいジャングルの“Burning Fence”が飛び出したかと思えば、攻撃的なソカの“S.O.C.A.”や、ジャクージーのサーシャ・パレーラとのコラボ曲、さらにはダブ・ステップを意識した“Bride Of Punkara”のような新機軸も披露される。また、神秘的な“Speed Of Light”はそれこそ初期の彼らを思わせるピースフルなレイヴ感に満ちてさえいるのだ。例えばM.I.A.の〈楽しいレベル・ミュージック〉をキャッチできる人なら、今回のADFはいつも以上に楽しめるんじゃないかな。
bounce (C)出嶌 孝次
タワーレコード(2008年04月号掲載 (P66))
フル・アルバムとしては2005年の『Tank』以来約3年ぶりとなる新作『Punkara』。ある意味ポップとも言えるメロディーを主軸としながら、ヒップホップやテクノなどを吸収した多様な音楽性が特徴的だった前作に対し、本作で聴けるストレートで開放感のあるサウンドは、メンバー・チェンジを経て3MC布陣となった新生エイジアン・ダブ・ファウンデーションを強く印象付けるもの。ベスト盤『Time Freeze 1995/2007』をリリースしたことによってひとつの区切りを付けたことも影響しているのかもしれないが、〈Punkara〉とのタイトルどおり〈パンク〉と〈バングラ〉という自分たちのルーツを見つめ直した、ある意味原点回帰とも言える内容だ。〈パンク〉に関して言えば、ストゥージズの名曲“No Fun”のカヴァーにイギー・ポップ本人をゲストに招いていることも大きなトピックだろう。とはいえ、パンクの持つ一元的なイメージに囚われて本作を聴くと肩透かしを喰らうことになるかもしれない。ギターをはじめとした生音中心のフィジカルな躍動感を持ったサウンドからは、怒りや反抗精神といったものよりも、むしろポジティヴなヴァイブが強く感じられる。すべてをデストロイするのではなく、DIY精神でみずから新たな行動を起こす――本作における〈パンク〉とはそういうことであり、そしてそれを自分たちの血肉であるバングラ・ビートに乗せて高らかに鳴らすことができるのは、いまの彼ら以外にはいない。
bounce (C)粟野 竜二
タワーレコード(2008年04月号掲載 (P66))