驚くべき一報が届いた。幻のドイツ・ジャズレーベル〈Mod Records〉のアルバムと、それをプロデュースしたジジ・カンピが関わった音源がBOXセットで発売されると言うのである。その内訳が凄い!10インチ5枚、7インチ6枚、計11枚をレコードで。レコード11枚すべての音源+未発表ライヴを、4CDで。これに貴重な写真と資料からなる120ページのハードカバー本と、Mod Recordsの復刻版フルサイズ・ポスター1枚が付くと言うのだ。そのBOXに付ける紹介文を依頼され、もちろん二つ返事で引き受けた。Mod Recordsは、西ドイツはケルン生まれの資産家ジジ・カンピによって設立された幻のジャズ・レーベルである。1954~55年に録音した6枚の7インチと、3枚の10インチを残しレーベルは消滅した。現在、残された7インチ、10インチはすべて貴重なコレクターズアイテムで高額で取引がされているのはジャズ愛好家ならご存知の事でだろう。ジジ・カンピはクラーク=ボーランド・ビッグ・バンドの立役者として有名であり、熱狂的なジャズ・マニアぶりが高じて自身でジャズレコーディングをプロディースし、国内外からジャズミュージシャンを招いてコンサートを開催したプロモーターとしても名を馳せた人物である。Mod、なんと幻にふさわしいレーベル名であろうか。(1/2)
発売・販売元 提供資料(2014/06/25)
残された音楽も、まるで幻の一瞬の煌きを記録したかのように怪しく響くのである。 Mod Recordsには、ユタ・ヒップ、ハンス・コラー、エミール・アルバート・マンゲルスドルフ、ローランド・コバック、アッテラ・ゾラー、ヨキ・フロイト、 ルディ・セリングなど、後のドイツ・ジャズを代表するミュージシャンが凝縮して録音に名を連ねており、ドイツ・ジャズの根底に流れる知性と感性の狭間を行き交うこの音を、僕は厳選した極上の豆からシタシタと抽出した珈琲を時間をかけて味わうように腰をじっくりと落ち着かせて楽しんで来た。ハンス・コラーの10インチに収録された"Yesterdays"と"Ach Varmeland Du Skona (Dear Old Stockholm)"は、まさにその知性と感性の狭間を行き交うベストプレイと言っていいだろう。誰もが知るこの曲を、ハンス・コラーとローランド・コバックが「確信犯の如く」見事に知性と感情で表現しており、まんまと心を奪われてしまうのである。そしてModには秀逸なジャケも多く、僕のようなジャケ好きコレクターにはたまらないのだ。その代表的なのがユタ・ヒップの7インチと、1955年のハンス・コラーの10インチであろう。オリジナルを手にした者にとってそれは、絵画の如き家宝になるのは間違いない。Mod Recordsは、アルバムの存在を知れど聴きたくても聴けない…それが幻と言われる所以でもあり、過去に7インチと10インチに分けて収録した2枚のCDが発売された事があったが、現在それらは廃盤で高額で取引されているのが現状である。だが、もう悩む必要はない。このBOXを手にする事ですべて解決してしまうのだから。このBOXにはMod以外にもに未発表ライヴ音源や、リー・コニッツのイタリア盤Carischの3枚のEPも10インチの形で収録されており、Modのおまけとは呼べないほど充実した内容となっている。Mod Recordsの曲の多くがアレンジされたアンサンブルが響き、音の勢いが全面に迫る演奏ではないので物足りなさを感じるかも知れないが、それも含めてここにあるのは幻のレーベルModに残された戦後ドイツ・ジャズの揺るぎない記録なのである。(ジャズレコード・コレクター漫画家 橋本孤蔵)(2/2)
発売・販売元 提供資料(2014/06/25)