桑原あいトリオ・プロジェクトが音楽史への敬意と愛を込めた異色のカヴァー・アルバム。エンニオ・モリコーネによる名曲「デボラのテーマ」のイントロに「アマポーラ」を加えた11分に及ぶ1曲目からはじまり、アストル・ピアソラ作品、ジャズ・スタンダード、スタンリー・キューブリックの映画テーマ曲、そしてキング・クリムゾンからスクエアプッシャーまで、聴きどころ満載の一枚。 (C)RS
JMD(2015/03/31)
ai kuwabara trio projectの4枚目のアルバムは音楽史と音楽そのものへの敬意と愛に溢れた、これまで誰も聴いたことのないような、全曲1発録りによるカヴァー・アルバム。名画「Once Upon A Time In America」より、モリコーネによる名曲"Deborah's Theme"のイントロに"Amapola"を加えた11分に及ぶ桑原あいの感動的な大名演で幕を開ける。心地よくバウンスするリズムの上でエレキベースが旋律をなぞるさわやかなビートルズ"Here There and Everywhere"、ウッドベースのアルコが唸り泣き嗚咽する、美しく力強いピアソラの"Finale"、レイドバックした桑原のピアノソロが気持ちいい!マイルスの名演で知られる"In Your Own Sweet Way"、ミドルテンポの前のめりなスイングがかっこいいグラント・グリーンの演奏で有名な"Nomad"、映像美で知られるキューブリックの映画「バリーリンドン~ラブ・テーマ~」を実際の映画からインスパイアされ桑原が見事にアレンジ、18世紀のアイルランドの美しい風景と戦争に煙った空気感、そして人生の栄枯を聴かせる"Barry Lyndon"、若きパッションと技術が大爆発!!キングクリムゾンのプログレッシブな難曲を張り詰めたテンションのまま突っ走る"21st Century Schizoid Man"、一転ホレス・シルヴァーの美しいバラッド、ベース~ピアノのソロリレーと、ドラム石若駿のブラシワークがさすがな"Peace"、今作の大きな聴き所のひとつがこちらゲッツ-エヴァンスの演奏で知られるメロディがとても美しい名曲を桑原あいがフーガ調にアレンジ、ピアノとアコベのデュオでクラシカルに聴かせる"Grandfather's Waltz"、そしてエレベもアコベも全員参加で奏でるスクエアプッシャー、ラストのリフレインから、いきいきとした音楽を奏でる喜び、音楽が鳴り続けてゆく喜びが聴こえてくる"A Journey To Reedham"。選曲も演奏もアレンジも、そこに詰まった思いも全部含めて、こんなカヴァー・アルバム聴いたことないっ!という傑作ができました!!
発売・販売元 提供資料(2015/02/20)
桑原あいトリオ・プロジェクトの通算4作目となる今作は全曲カヴァー曲集という内容で、前作『the Window』の若さ溢れる先鋭さを華麗に裏切ってくれる素晴らしい一枚となっている。確かにこれまでのアルバムでも、そのセンシブルで美しいピアニズムを披露してきたけれども、ここでは原曲がもつ旋律美や躍動感といったものを、しっかりと自己の音楽として描いて行く様に、桑原あいの引き出しの多さと懐の深さを再認識させられる。アコースティック・ベースに加え、若手No.1の呼び声も高い石若駿がドラマーとして参加していることも、今作の大きな注目だ。
intoxicate (C)千葉広克
タワーレコード(vol.114(2015年2月10日発行号)掲載)