ジョージ・セルがクリーヴランド管弦楽団と成し遂げた"究極のオーケストラ演奏"としてあげるべき名演奏。セルの厳しい造形力とオーケストラの精緻なコントロール力によって、作品の音符の一つ一つに至るまで吟味され尽くされながらも、その表現はあくまでもしなやかで、ゆるぎない緊張感の中に素晴らしい生命力を内包している。特に対位法的な書法での完璧なバランスは、まさにこのコンビの独壇場ともいうべき見事さで、遅めのテンポの中で緻密に響きが積み重ねられ、ブルックナーの音楽の持つ巨大な相貌が姿を現す様は圧巻の一言に尽きるといえる。アナログ完成期ならではの充実したサウンドです。 (C)RS
JMD(2018/01/30)
タワーレコード x "Sony Classical"究極のSA-CDハイブリッド・コレクション第4回発売
~巨匠セルが最晩年に残した精緻なブルックナー解釈。交響曲第8番はセルとクリーヴランド管のコロンビアへの最後の録音。世界初SA-CD化!~
■セル&クリーヴランド管、究極の名演奏
このブルックナーの交響曲第3番と第8番は、1966年と69年という、ジョージ・セルとクリーヴランド管弦楽団のコンビとしては最後期ともいえる円熟期に成し遂げられた「究極のオーケストラ演奏」としてあげるべき名演奏です。いずれもセルの厳しい造形力とオーケストラの精緻なコントロール力によって、作品の音符の一つ一つに至るまで吟味されながらも、その表現はあくまでもしなやかで、ゆるぎない緊張感の中に素晴らしい生命力を内包しています。特に対位法的な書法での完璧なバランスは、まさにこのコンビの独壇場ともいうべき見事さで、遅めのテンポの中で緻密に響きが積み重ねられ、ブルックナーの音楽の持つ巨大な相貌が姿を現す様は圧巻の一言に尽きます。
■セルのブルックナー
セルがクリーヴランド管時代に定期演奏会で取り上げたブルックナーは第3、7、8、9番の4曲のみ。このうち第3番は1949/50年、1963/64年、1965/66年の3シーズンで取り上げられ、第8番は1947/48年、1948/49年、1954/55年、1969/70年の4シーズンで取り上げられました。そしてそれぞれその最後の機会に演奏会と並行してセッションが持たれ、基本的に1日でLP1枚分の録音を仕上げることが多かったセルとしては珍しく、第3番は2日間、第8番は大曲ゆえか何と4日間をかけてじっくりと収録されました。いずれもセル唯一の録音であり、セルが正規の録音セッションで残したブルックナーはこの2曲のみです。
■ブルックナー・ブームの端緒となった第3番
交響曲第3番は、ブルックナーが残した3つの稿の中で最もポピュラーでコンパクトにまとまっている第3稿を使用。この曲はドレスデン国立管(1965年ザルツブルク音楽祭)とのライヴ録音やモノクロながらウィーン・フィルとのライヴ映像(1966年ムジークフェライン)も残されているセルの愛奏曲の一つ。このセル盤は、交響曲第3番のステレオ録音としてはごく初期のもので、ハイティンク/コンセルトヘボウ盤(PHLIPS)、シューリヒト/ウィーン・フィル盤(EMI)、ヨッフム/バイエルン放送響盤(DG)などとほぼ同時期に録音されたものです。つまり1960年代になってステレオ収録が本格化し、ブルックナーの交響曲の録音が活発化されるようになった時期の所産といえるでしょう。(1/3)
ソニー・ミュージック
発売・販売元 提供資料(2018/01/25)
■雄大なスケールで描かれた第8番
交響曲第8番は文字通りセルとクリーヴランド管のコロンビアへの最後の録音で、この録音の最終日10月13日は、1947年以来20年以上にわたって継続されたコロンビアへの録音プロジェクトの最後の日となりました(セル唯一の録音)。基本的にノーヴァク版の第2稿を使用していますが、一部にいわゆる改訂版の表情を取り入れている箇所がある(例えばスケルツォ主部の第2エピソードを彩るピッツィカート)のは、改訂版で演奏し慣れたはずの19世紀生まれの世代らしい痕跡といえるでしょう。スケルツォ16分、アダージョ29分など、全体的にじっくりと落ち着いたテンポで進み、一瞬一瞬の響きがスケール雄大に描かれていますが、第4楽章では逆に緩急の差を鮮明につけて作品の構造が浮き彫りにされています。このセル盤が発売された時点で、既にこの交響曲に関しては、カラヤン/ベルリン・フィル(EMI)、シューリヒト/ウィーン・フィル(EMI)、ショルティ/ウィーン・フィル(Decca)、クナッパーツブッシュ/ミュンヘン・フィル(Westminster)など、主要ステレオ盤が出揃っていましたが、アメリカのオーケストラによる録音はこのセル/クリーヴランド管が初めてです。
■アナログ完成期の鮮明な「360サウンド」
いずれも「360サウンド」を標榜した、コロンビアのアナログ完成期のステレオ録音ならではの左右に大きく広がる鮮烈なサウンドがセルとクリーヴランドの豪快かつ緻密な演奏を見事に捉えきっています(第8番が発売された1970年の段階では、「360サウンド」のロゴは使われなくなっていましたが、クオリティの高さと音作りのポリシーは維持されていました)。収録場所は1929年に完成し、1931年に開館したクリーヴランド管の本拠地であるセヴェランス・ホール。1844席を擁する名ホールで、ギリシャ新古典様式の外観とアールデコを思わせる優美な内観で、「アメリカで最も美しいコンサートホール」と称されてきました。1958年にセルのイニシアチブで全面的な改修が行なわれ、セルが施行する各パートの明晰さとヨーロッパ的ともいうべき暖かみのある適度な残響感を備え、録音にも適した会場となりました。セル&クリーヴランド管のコロンビア/EPICへのレコーディングは全てここで行なわれているため、演奏者のみならず、プロデューサーはポール・マイヤースとアンドルー・カズディンの2人が分担していますが、彼ら以下エンジニアも含むレコーディング・スタッフは会場の音響特性を知り尽くした状況下で進められた理想的なセッションでした。(2/3)
ソニー・ミュージック
発売・販売元 提供資料(2018/01/25)
■リマスターについて
この2曲が初めてCD化されたのは、1984~85年のことで日本のCBSソニーによる「セル&クリーヴランドの芸術」シリーズの一環としてでした(第3番は32DC487、第8番は52DC207~8)。このシリーズは、CDという新しいメディアをクラシック・ファンに普及させるきっかけとなったブルーノ・ワルター/コロンビア響の録音のCD化に続くCBSソニーの重要なプロジェクトの一つであり、当時CBSソニーの初期CDは、アナログ録音のCD化の場合は、いずれも「NEW REMIX MASTER」と銘打たれていることからもわかるように、日本からの要請で、アメリカ本国でオリジナルのアナログ・マルチ・マスターから新たにステレオ用にリミックスが行なわれた上で、デジタル化された旨が明記されています。LPからCDへの転換期であったため、このCD用の「ニュー・リミックス・マスター」が翌年のLP再発シリーズのプレスにも使われました。海外での初CD化は1994年のEssential Classicsでのリリースで、アーサー・フィエロとレイモンド・ムーアがリマスターを担当しています。今回はその1994年以来、26年ぶりにオリジナルの3チャンネル・マスターからアンドレアス・K・マイヤーによってリミックスとDSDリマスターが行なわれることになります。
[シリーズ・コンセプト]
ソニー・クラシカルおよびRCA Red Sealの歴史的名盤を、これまでのリマスターも含め最高のクオリティを追求し、ハイブリッドディスクとして「究極」の形でフィジカル・リイッシューする「タワーレコード"Sony Classical"究極のSA-CDハイブリッド・コレクション」。ソニー・クラシカル秘蔵のオリジナル・マスターに遡り、アンドレアス・K・マイヤーをはじめとする経験豊富な名手が復刻を手掛ける究極のコレクションです。(3/3)
ソニー・ミュージック
発売・販売元 提供資料(2018/01/25)