歴史と伝統の響きが今に蘇る!
ベートーヴェン没後150年記念当時(1977年)の最新技術、76ダイレクトでのマスターレコーディングを最新復刻!
ボッセがコンマス時代の最後期に当たるドイツ音楽正統派のライプツィヒ・ゲヴァントハウスQ、その崇高ともいえる感動の伝統美をSACDで鮮やかに再現!
当時の最高品位でのアナログ録音の音質に最大限拘り、原音を追求したマスタリングを実施
当作品はコンサートマスターのゲルハルト・ボッセが円熟期だった1970年代、霧島国際音楽祭の創明期に来日を重ねており、まさにその時期に録音されたものになります。世界最古のカルテットが奏でる音色をいかに忠実にリスナーに届けるかをテーマにプロジェクトが設置され、ドイツ(ライプツィヒ)音楽の伝承者によるベートーヴェンの力強さ、生命力、崇高な精神性と美しさを追い求め、当時の日本ビクターの最新技術と精鋭を集結して録音されました。今回の復刻にあたり、SACD層はオリジナルのアナログ・マスターテープ(76cm/sec)からダイレクトにDSD化。CD層はDSDでデジタル化後、出来るだけ工程ロスを減らしたピュアな方法で44.1kHzに変換して作成されています。尚、解説書(32ページ)には録音時のコメントと詳細データを含むLP発売時のものを再現し、新規序文解説と当時のディレクター野島友雄氏による「回想録」を新規で収録しています。
ゲヴァントハウス弦楽四重奏団は、ベートーヴェンが《ラズモフスキー》セットを作曲した僅か2年後の1808年、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のコンサートマスター、アウグスト・マッタイ(1781~1835)により結成された世界最古の弦楽四重奏団です。その後はゲヴァントハウスのコンサートマスターが代々引き継ぎ、その他の奏者も同団のメンバーにより受け継がれながら、現在まで活動をし続けている稀有な団体として知られています。ゲヴァントハウス弦楽四重奏団は1964年の初来日から日本の愛好家の心を捉え、3度目の来日となった1977年、ベートーヴェンの《ラズモフスキー》セットがビクターにより録音されました。この年はベートーヴェン没後150年、蓄音機発明100年の記念年にあたっています。そして第一ヴァイオリン、ゲルハルト・ボッセが55歳となり、同年9月より四重奏団のリーダーを弟子のカール・ズスケに譲ることが決まっており、ボッセ時代の最後の録音となりました。
ここには、母体となるライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団が1961年の初来日時に日本の聴衆を驚かせた「いぶし銀」と呼ばれた蒼古なサウンドと、ストレートで骨太な音楽の運びが、そのまま四重奏に反映されたような演奏が録音されています。その要因は、ヴィブラートを華美にではなく抑制的に使用する古風な美意識と、そのお化粧の無い音を、気取りなく素朴にぶつけ合わせ、力強く分厚い響きを指向する彼らの音楽性にあると言えそうです。ベートーヴェンの音楽を飾り気無く、率直に、逞しく鳴り響かせた良さがあり、かつライプツィヒでの長い演奏伝統に培われた共通する音楽観、音楽性、奏法によるアンサンブルの喜びを聴きとることができます。
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タワーレコード(2022/08/19)
こうしたゲヴァントハウス弦楽四重奏団の独自の響きを当時のビクター技術陣が「76cm/secダイレクトマスター録音」で捉えていたことも特筆されます。これは、当時のアナログ・ステレオの録音媒体である磁気テープを通常速度38cm/secの倍速で録ることで音質向上を狙ったもので、音の自然さの追求のためドルビー、dbx、コンプレッサー、リミッター、イコライザーを一切使わず録音されました。つまりアナログの最高品位で録音した上、音の加工を一切行っていないということで、おかげでSACD化するには最高のソースが残されることとなりました。
今回の復刻では、ビクターが温度管理も含め厳重に保管していたオリジナルの2chのアナログ・マスターテープを用い、録音当時も使用していたスチューダーのA-80で再生した音源をSACD層用にはDSDでダイレクトに、CD層用には同じくDSD化された音源を基に出来るだけ工程ロスを減らしたピュアな方法で44.1kMzに変換しています。製品化にあたってはスタジオでマスターテープと比較の上、DSD2.8MHz、DSD5.6MHz、DSD11.2MHz、PCMは44.1kHzから192や384等、可能な限りのレートで試聴を行った上で、DSD2.8MHzのダイレクトを採用しました。これは、SACDのフォーマットが2.8MHzのため工程で一番ロスが少ないこと(他のレートでは最終的に2.8MHzに変換するため工程が多くなる)で、弦楽器の質感や音色が一番アナログ・マスターテープに近かったことによります。もちろん、今回のテープの状態が非常に良くアナログ領域含め一切調整する必要が無かったこと、元々のマスターのバランスが非常に良いためEQ調整等を行う必要性も全く無かったことなど、良い条件が重なった結果です。従いまして、今回のSACD層は全くの未加工のため、限りなくアナログ・マスターテープそのものの音を再現できました。CD層もバランス等の調整は行っていませんが、44.1kHz/16bitに変換する際にエンジニアにより最小限の音色の管理は行っていますので、ほぼ無調整で原音のままと言えると思います(今回、全工程は広義な意味も含め「マスタリング」という言葉を使用しています)。当時のビクターによる録音技術の粋を集めた素晴らしい音源が、今回の復刻ではまさに蔵出し的な意味合いも十分感じられる出来に仕上がっていますので、現在の技術を用いたこの素晴らしい録音を最大限お楽しみいただけます。
尚、解説書にはLP発売時の解説や録音時のコメントと詳細データ(機材一覧や録音時の配置や写真を含む)と、新規で序文解説、そして収録時の録音ディレクターであった野島友雄氏に当時を振り返ってもらい「回想録」を書いていただきました。資料としての価値も高いです。また、ジャケットにはLP初出時のデザインを使用しましたが、1982年のLP再発時(VIC4139-40)と、CD初出時に使用されていた別ジャケットも解説書にカラーで掲載してあります。
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タワーレコード(2022/08/19)
ビクターが所有するアナログ・マスターテープを使用したSACD復刻企画がスタート。この音源は1977年の来日時に収録され、当時の最高音質を目指した録音は、現在においても第一級の価値を持つ。テープの状態も良く、今回の初SACD化ではほぼテープそのままの音質が味わえるため、まるで収録時に立ち会っているかのよう。アナログの最高品位で録音が行われ、音の加工を一切行っていない本作は一聴に値する。演奏も1stヴァイオリンのボッセが引退する直前で、極めて充実度が高い。まさにドイツ音楽の正統的な演奏で、このような素晴らしい音源が日本で残されたのは嬉しい。今後も良質音源をSACD化していく意義を感じた。
intoxicate (C)北村晋
タワーレコード(vol.160(2022年10月10日発行号)掲載)
正攻法に徹した何の外連もない演奏で、ヴィオラの音の太さ、ボッセのミスや音程不安定などもはやどうでもいいくらいの室内楽のお手本のようなヴァイオリン、3番の最終楽章の凄まじさ、本物の貫禄としか言いようがない。