チャート・アクションを見てもどれだけ多くの人が待ち望んでいたのかがよくわかる、板橋育ちのラッパー/プロデューサー初のオリジナル・アルバム。冒頭のナレーションで〈2057年の自身が40年前に発表した初作を振り返る回想録〉の形をとっていることがわかり、ジャケットにあしらわれた「ゼイリブ」のVHSや「ウォッチメン」よろしくSF映画やグラフィック・ノヴェルのモチーフをあちこちに散りばめた冒険譚が繰り広げられる。ー曲ごとの強度が凄まじく、"Lovely Man"の〈ケツしめて ら～ら～ら～〉と歌う子どもたちの狂ったフックからぶっ飛ばされっ放し。ラップもビートもメロディーもポップで奇妙でフレッシュ。ATCQの引用も軽やかだな、多すぎない客演の配分が絶妙だななどと思いながら聴き進めていくうちに、やがて人生の選択の結果と経過した時間、未来の捉え方などが浮かび上がってきて、まるでタイムトラベルものの映画を見ているような感覚に。
bounce (C)南波一海