トリプルファイヤーの新譜。それだけで特別。
待ちに待ったなんと7年ぶりのアルバム。言葉選びにはさらに磨きがかかり、誰にも似ていない特異な音楽性はさらにキレキレに。「相席屋に行きたい」というフレーズが歌詞として成立していることが奇跡。問答無用にカッコイイんですが、トリプルファイヤーが大好きって言いたいけど、言わないでおこうかな、、っていう距離感の傑作です。インストのCD付。オススメ(1)(2)(8)(9)
タワーレコード(2024/10/04)
前作『FIRE』より7年、いよいよトリプルファイヤーの最新アルバム『EXTRA』。
CDは、Instrumental盤が付いた二枚組。
最新作『EXTRA』におけるあまりにも多様な音楽性は、トリプルファイヤーが世に出た際に名付けられた「高田馬場のジョイ・ディヴィジョン」という最高ではあるキャッチフレーズともかけ離れてしまっているのです。
しかしながらじゃあ誰なの?「トーキング・ヘッズ?ジョージ・クリントン??」と考えたところで、さまざまな要素が粘土をこねくり回した様に異形化しており、結論を申し上げますと「柴又の寅さん」のごとく、「高田馬場のトリプルファイヤー」としか形容しえない独創性を獲得しています。
難産の末、「トリプルファイヤー」ここに極まりと胸を張って言える、これまで以上にポップでエンターテイメント性にも飛んだバケモノの子が産み落とされています。
アフロ・ビート、ファンク、ロック、ブラジル、そしてそれらが混ぜ込ぜになった先人たちの名盤の数々を、バンドが表現したいことを一番の指針としたブランニューな音楽に見事に昇華。
池田若菜 (Flute)、沼澤成毅 (Keyboards)、シマダボーイ (Percussion)、PLASTICMAI (M6 Guest Vocal)の強力なサポート、馬場友美の録音、The Anticipation Illicit Tsuboiのミックス・マスタリングによりこれまで以上にメンバーのやりたかったイメージにも辿り着くことができました。
その結果、彼らの音楽の基盤となる"楽しく踊れる音楽"がジャケットに描かれたキャラクターのごとく、次々に姿を表します。
サウンド面では鳥居真道 (Guitar)が陣頭指揮を取りながら、山本慶幸 (Bass)、大垣翔 (Drums)、吉田靖直 (Vocal)とゲストたちによる、とてつもなくユニークで、とてつもなく楽しいミュージックです。
また、一時の「タモリ倶楽部」準レギュラー的ポジションなど、インパクト大のお茶の間露出から、エッセイや脚本など文筆方面でも活躍するヴォーカリスト・吉田靖直の「自分が本気で思っていることを書く」スタイルのリリックと、ヴォーカル・フロウ含めた、バンドのサウンドの探求の掛け算が黄金律で成立してしまっていることが、この世界的に見ても摩訶不思議な音楽の重要なポイントであります。
吉田の自己からにじみ出てしまっている言葉であるのに、神様視点にも感じる詩の世界。
少し加齢し、おじさんっぽく扱われ始める局面にも直面することで生まれた"あがきと諦め"。
誰も歌にしてこなかった共感しかない歌たちが揃い踏みです。
<相席屋に行きたい/相席屋に生きたい> HIP HOPシーンにもしっかり届いている、パンチライン製造機としての切れ味もマシマシであります。
言葉の面白みだけでなく、これまで以上にメロディアスな歌やお洒落でもあるサウンドも相まって、より多くの人に届きそうな予感がする7年ぶり・等身大な大傑作。
今の時代に日本から生まれる面白い音楽はこういうものではないだろうか?!そんな仮説に頷きたくなる、待ちに待ったニューアルバムです。
発売・販売元 提供資料(2024/08/16)
〈酩酊した俺〉の無敵感を訴えたり、素手でトイレを磨くような胡散臭さをあえて大肯定したり、心に抱えるモヤモヤを吐き出す吉田靖直のボヤキ歌は、7年ぶりのアルバムでさらに深みが増した。アフロビートやファンクなどを煮詰めた異国情緒あるサウンドも痛快(ゲストの池田若菜による妖しいフルートが効果テキメン)。カッコよくて、おもしろくて、踊れる。
bounce (C)田山雄士
タワーレコード(vol.490(2024年9月25日発行号)掲載)