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注目アイテム詳細

2016年3月5日に世を去ったカリスマ指揮者の追悼企画~アーノンクール・エターナル・コレクション

アーノンクール 

ひとつの歴史を築いた巨匠指揮者ニコラウス・アーノンクール。彼の素晴らしい遺産として、代表する名盤を再発売。彼の転機となった多くの演奏、現在入手にくいアイテムを厳選。全て日本語解説・歌詞対訳付。オリジナル・ジャケット・デザインを使用。
マタイとヨハネの最初の録音2タイトルでは、初版LP解説書に掲載されていた、アーノンクール自身による曲目解説の翻訳、多くのレコーディング風景写真、使用楽器の写真を掲載。
※日本独自企画のため、海外でのこの形での発売予定はございません。
(ワーナーミュージック)

2016年7月20日発売 8タイトル、2016年8月24日発売 8タイトル 計16タイトル

7月20日発売

【WPCS-13504/6】(3CD)

J・S・バッハ:『マタイ受難曲』BWV.244(1970年録音)
~クルト・エクヴィルツ:(福音史家:テノール), カール・リッダーブッシュ(イエス;バス), ウィーン少年合唱団員(ソプラノ), ポール・エスウッド(カウンターテナー), ジェームス・ボウマン(カウンターテナー), ナイジェル・ロジャース(テノール), マックス・ファン・エグモント(バス), ミヒャエル・ショッパー(バス), レーゲンスブルク大聖堂少年聖歌隊, ケンブリッジ・キングスカレッジ男声合唱団, デイヴィッド・ウィルコックス(合唱指揮)、ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス、ニコラウス・アーノンクール(管弦楽指揮)
[録音:1970年]
ピリオド楽器と男声のみによる初の世界初録音だった歴史的名盤。アーノンクール自身もチェロおよびヴィオラ・ダ・ガンバのソリストとして演奏している。日本語解説、歌詞対訳付。

【WPCS-13507/8】(2CD)
J・S・バッハ:『ヨハネ受難曲』BWV.245(1965年録音)
※ワーナーからは初国内盤化
~クルト・エクヴィルツ:(福音史家:テノール), マックス・ファン・エグモント(イエス:バス), ウィーン少年合唱団員(ソプラノ&アルト), ベルト・ファン・トホフ(テノール), ジャック・ヴィリセシュ(バス), ウィーン少年合唱団, コルス・ヴィエネンシス, ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス、レオンハルト・コンソート、グスタフ・レオンハルト(通奏低音(アリアのみ)), ニコラウス・アーノンクール(管弦楽指揮)、ハンス・ギレスベルガー(合唱指揮)
[録音:1965年]
ピリオド楽器と男声のみによる初の世界初録音だった歴史的名盤。アーノンクール自身はチェロおよびヴィオラ・ダ・ガンバのソリストとして演奏している。実際はレオンハルト・コンソートとの合同アンサンブルで、グスタフ・レオンハルトもアリアでは通奏低音を担当している貴重な演奏。日本語解説、歌詞対訳付。

【WPCS-13509/10】(2CD)
J・S・バッハ:『ミサ曲 ロ短調』BWV.232(1968年録音)
~ロートラウト・ハンスマン(ソプラノ), 飯山恵已子(ソプラノ), ヘレン・ワッツ(アルト), クルト・エクヴィルツ(テノール), マックス・ファン・エグモント(バス), ウィーン少年合唱団, コルス・ヴィエネンシス, ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス, ニコラウス・アーノンクール(管弦楽指揮)、ハンス・ギレスベルガー(合唱&総指揮)
[録音:1965年]
ピリオド楽器による初の世界初録音だった歴史的名盤。アーノンクールが、種々の考証と実験によって「バッハの理想」を響きとして具体化させた伝説的演奏。日本語解説、歌詞対訳付。

【WPCS-13511/2】(2CD)
J・S・バッハ:『クリスマス・オラトリオ』BWV.248(1972年録音)
~ウィーン少年合唱団員(ソプラノ), ポール・エスウッド(カウンターテナー), クルト・エクヴィルツ(テノール), ジークムント・ニムスゲルン(バス), ウィーン少年合唱団, コルス・ヴィエネンシス, ハンス・ギレスベルガー(合唱指揮)、ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス, ニコラウス・アーノンクール(総指揮)
[録音:1972-1973年]
ピリオド楽器と男声のみによる初の世界初録音だったもの。祝祭的なバロック・サウンドと少年合唱の新鮮な響きによって、この曲の本質が再現された歴史的名盤。日本語解説、歌詞対訳付。

【WPCS-13513】(1CD)
J・S・バッハ:『カンタータ第197番「神はわれらの確き望みなり」』BWV.197
~ウィーン少年合唱団員(ソプラノ&アルト), クルト・エクヴィルツ(テノール), マックス・ファン・エグモント(バス), ウィーン少年合唱団, コルス・ヴィエネンシス, ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス, ニコラウス・アーノンクール(指揮)
[録音:1969年頃]
J・S・バッハ:『カンタータ第205番「破れ、砕け、壊て(鎮まりしアイオロス)」』BWV.205
 ~イヴォンヌ・ケニー(ソプラノ), マルヤーナ・リポヴシェク(アルト), クルト・エクヴィルツ(テノール), ロベルト・ホル(バス), アルノルト・シェーンベルク合唱団、ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス, ニコラウス・アーノンクール(指揮)
[録音:1983年頃]
バッハ唯一のオペラ的劇音楽のダイナミックなサウンドによる「鎮まりしアイオロス」。カンタータ197番は、バッハ:カンタータ全集が開始される前に1969年頃に録音されたもの。日本語解説、歌詞対訳付。

【WPCS-13514】(1CD)
J・S・バッハ:『モテット集第1~6番』BWV.225-230
「第1番:主に向かいて新しき歌を歌え BWV.225」「第2番:御霊は我らの弱きを助けたもう BWV.226」「第3番:イエスよ、我が喜び BWV.227」「第4番:恐れるな、われ汝とともにあり BWV.228」「第5番:来ませ、イエスよ、来ませ BWV.229」「第6番:主を頌めまつれ、諸々の異邦人よ BWV.230」
~ストックホルム・バッハ合唱団, ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス, ニコラウス・アーノンクール(指揮)
[録音:1979年]
バッハ・カンタータ全集録音から更に奥深い音楽美の追求するために成人合唱に求めた「モテット集」。どの演奏よりも集中度も高く濃厚な演奏が印象的な名盤。日本語解説、歌詞対訳付。

【WPCS-13515】(1CD)
J.S.バッハ:『ヴィオラ・ダ・ガンバ・ソナタ集』BWV.1027-1029
「ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロのためのソナタ 第1番 ト長調 BWV.1027」「ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロのためのソナタ 第2番 ニ長調 BWV.1028」「ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロのためのソナタ 第3番 ト短調 BWV.1029」「2本のフルートと通奏低音のためのソナタ(トリオ・ソナタ)ト長調 BWV.1039」
~ニコラウス・アーノンクール(ヴィオラ・ダ・ガンバ), ヘルベルト・タヘツィ(チェンバロ), レオポルト・シュタストニー&フランス・ブリュッヘン(フラウト・トラヴェルソ:BWV.1039)
[録音:1968年]
持続音のガンバの音色と一音一音すぐ音量が減衰するチェンバロとの対比の妙。アーノンクールとタヘツィの掛け合いは、当時のバロック語法を見事に再現した名演です。96kHz/24bitリマスター音源使用。日本語解説付。

【WPCS-13516/7】
J.S.バッハ:『ヴァイオリン・ソナタ集と復元協奏曲』(2CD)
※国内盤初CD化
「ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ第1番ロ短調 BWV.1014」「ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ第2番イ長調 BWV.1015」「ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ第3番ホ長調 BWV.1016」「ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ第4番ハ短調 BWV.1017」「ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ第5番ヘ短調 BWV.1018」「ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ第6番ト長調 BWV.1019」
~アリス・アーノンクール(ヴァイオリン), ニコラウス・アーノンクール(ヴィオラ・ダ・ガンバ), ヘルベルト・タヘツィ(チェンバロ)
[録音:1975年]
「オーボエ・ダモーレ協奏曲イ長調 BWV1055R(復元版)」「ヴァイオリン協奏曲ニ短調 BWV1052R(復元版)」, シンフォニア ニ長調 BWV.1045
~アリス・アーノンクール(ヴァイオリン), ユルク・シェフトライン(オーボエ・ダモーレ), ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス, ニコラウス・アーノンクール(指揮)
[録音:1976年]
アーノンクール夫妻によるバッハのヴァイオリン・ソナタ集。現在ではヴァイオリンとチェンバロのみで演奏されるのが普通だが、ここでは通奏低音にガンバが追加されて演奏されている。当時最も美しい音色を出すヴァイオリンの名器「ヤコブ・シュタイナー」を使用。復元協奏曲の2曲を追加収録。日本語解説付。

8月24日発売

【WPCS-13518/9】(2CD)
J・S・バッハ:『ヨハネ受難曲』BWV.245(1993年録音)
~アンソニー・ロルフ・ジョンソン(福音史家:テノール), ロベルト・ホル(イエス:バス), アンジェラ・マリア・ブラーシ(ソプラノ), マリアーナ・リポヴシェク(アルト), フランツ・ライトナー(テノール), アントン・シャーリンガー(バス), アルノルト・シェーンベルク合唱団, ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス, ニコラウス・アーノンクール(指揮)
[録音:1993年]
アーノンクール2回目の「ヨハネ受難曲」の録音。4半世紀の古楽演奏の成果と演奏経験の積み重ねを反映し、高音声部には女声を起用し、全曲の進行と前後関係の自然な流れによる豊穣なる名演。日本語解説、歌詞対訳付

【WPCS-13520/1】(2CD)
J・S・バッハ:『ミサ曲 ロ短調』BWV.232(1986年録音)
アンジェラ・マリア・ブラーシ(ソプラノ), デローレス・ジーグラー(ソプラノ), ヤトヴィガ・ラッペ(アルト), クルト・エクヴィルツ(テノール), ロベルト・ホル(バス), アルノルト・シェーンベルク合唱団, ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス, ニコラウス・アーノンクール(指揮)
[録音:1986年]
アーノンクール2回目の「ミサ曲 ロ短調」。この再録盤では高音声部には女声が起用され、アルノルト・シェーンベルク合唱団もアーノンクールのバロック語法の要求に答えるべく演奏が可能となったもの。CMWの音楽の言葉表現を見事に乗り移ったもので、非常に深い音楽を導き出した名演。興味深いアーノンクールへのロング・インタビューの日本語訳, 日本語解説、歌詞対訳付

【WPCS-13522】(1CD)
モーツァルト:『セレナータ・ノットゥルナ ニ長調K.239』
~ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス, ニコラウス・アーノンクール(指揮)
[録音:1987年]
モーツァルト:『セレナード第7番ニ長調「ハフナー」K.250(248b)』
~トマス・ツェートマイアー(ヴァイオリン), ドレスデン・シュターツカペレ, ニコラウス・アーノンクール(指揮)
[録音:1985年]
「最もロマンティックな作曲家はモーツァルト」と話すアーノンクール。アーノンクールはモダン楽器オーケストラに当時の音楽語法取り入れた。伝統的な音をもつドレスデン・シュターツカペレとモーツァルトの音楽語法の融合によって生まれた「ハフナー・セレナーデ」。そして主兵CMWで演奏した、ユーモアあふれる「セレナータ・ノットゥルナ」も収録。日本語解説付

【WPCS-13523】(1CD)
モーツァルト:『ミサ曲 ハ短調K.427(417a)』(バイヤー版)
~クリスティーナ・ラーキ(ソプラノ), ジュジャナ・デーネシュ(ソプラノ), クルト・エクヴィルツ(テノール), ロベルト・ホル(バス), ウィーン国立歌劇場合唱団, ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス, ニコラウス・アーノンクール(指揮)
[録音:1984年]
強烈な演奏で驚かされた「モーツァルト:レクイエム」に続く録音だったもの。この曲でも彼が信頼するバイヤー版が基本でされ、幸福感と緊張感の対話によった名演。日本語解説、歌詞対訳付

【WPCS-13524】(1CD)
メンデルスゾーン:『劇音楽「夏の夜の夢」Op.61』
~パメラ・コバーン(ソプラノ), エリザーベト・フォン・マグヌス(アルト), クリストフ・バンツァー(語り), アルノルト・シェーンベルク合唱団, ヨーロッパ室内管弦楽団, ニコラウス・アーノンクール(指揮)
[録音:1992年]
メンデルスゾーン:『カンタータ「最初のワルプルギスの夜」Op.60』
~ブリギット・レンメルト(ソプラノ), ウヴェ・ハイルマン(テノール), トーマス・ハンプソン(バリトン), ルネ・パーペ(バス), アルノルト・シェーンベルク合唱団, ヨーロッパ室内管弦楽団, ニコラウス・アーノンクール(指揮)
[録音:1992年]
「愛らしい妖精が舞い、魔法の園が目の前に出現する・・・音楽における雄弁術は重要だ」と語るアーノンクール。初期ロマン派特有の淡彩の美しさを彼特有の語法で見事に描いた「メンデルスゾーン」。日本語解説、歌詞対訳付

【WPCS-13525/6】(2CD)
フランツ・シュミット:オラトリオ『7つの封印の書』
~クルト・シュトライト(聖ヨハネ:テノール), ドロテア・レシュマン(ソプラノ), マルヤーナ・リポヴシェク(アルト), フランツ・ハヴラタ(バス:主の御声), ヘルベルト・タヘツィ(オルガン), ウィーン楽友協会合唱団, ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団, ニコラウス・アーノンクール(指揮)
[録音:2000年]
20世紀最高の黙示録を題材として再評価の高い大作。20世紀音楽に関心を持ち、アーノンクールが長年の「軌跡」と、充実を極める「今」が、最良の果実となって結実した意義深い録音。日本語解説、歌詞対訳付

【WPCS-13527】(1CD)
オランダ・フェスティヴァル1973 ライヴ
※国内盤初CD化
ヴィヴァルディ:『フルート協奏曲ト短調 Op.10-2, RV.439「夜」』, ヘンデル:『オーボエ協奏曲第3番ト短調 HWV.287』, マレ:組曲『アルシオーヌ』, ラモー:組曲『カストールとポリュクス』, ビーバー:『ソナタ「宗教的・世俗的弦楽曲集」』より第1番、第8番、第10番,
~ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス, ニコラウス・アーノンクール(指揮&チェロ)
[録音:1973年、デン・ハーグ、ルター派教会]
1971年にテレフンケンと専属契約したアーノンクール。この時のヨーロッパ・ツアーの一環のオランダ音楽祭に出演した時のライヴ録音。各パート1人による小編成での演奏で、様々な描写を大胆に表現した当時の最も斬新な演奏。フラウト・トラヴェルソは、フリードリヒ大王が使用していたオリジナル。日本語解説付

【WPCS-13528】(1CD)
ウィーン、レオポルト1世の宮廷にて
※国内盤初CD化
フックス:『シンフォニア第2番』, レグレンツィ:『4つのヴィオラ・ダ・ガンバのための5声のソナタ』, ビーバー:『パルス第3番』, フックス:『シンフォニア第7番』, シュメルツァー:『ソナタ第3番』, レオポルト1世:『『天の女王』, シュメルツァー:『ソナタ第10番』
~ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス, ニコラウス・アーノンクール(指揮, チェロ, ヴィオラ・ダ・ガンバ)
[録音:1963年]
アーノンクールが唯一EMI(エレクトローラ)に録音した珍しい音源。レオポルト1世(1640-1705)は、もともとは聖職者になるべく教育を受けた人物だったが、熱心な音楽愛好家ということもあり、自ら作曲までおこなうほどの腕前の持ち主であった。さらに宮廷には楽団を置き、多くの音楽家たちを擁してもしていた。若きアーノンクールが録音当時ほとんど知られていなかった作品を引き出した、興味深いアルバム。日本語解説付

ニコラウス・アーノンクール(1926年12月6日 – 2016年3月5日)
 1929年、ベルリンに生まれたアーノンクール氏はオーストリアのグラーツで少年~青年期を過ごし、1952年にカラヤンによってウィーン交響楽団のチェロ奏者に採用されました(1969年まで在籍)。古楽への強い関心を持っていたアーノンクール氏は、その翌年自らの古楽アンサンブルを組織し、1954年にはパウル・ヒンデミット指揮のもとウィーン・コンツェルトハウスでデビューを飾りました。このアンサンブルは1957年からはウィーン・コンツェントゥス・ムジクスの名を冠され、世界的な名声を博することになります。
 1970年代からアーノンクール氏はロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団、ヨーロッパ室内管弦楽団、ベルリン・フィル、ウィーン・フィルを中心とする名門オーケストラ、チューリヒ歌劇場、ウィーン国立歌劇場、アン・デア・ウィーン劇場などのオペラハウスに活動の場を広げていきました。1985年にはグラーツにシュティリアルテ音楽祭を創設し、1990年代初頭からはザルツブルク音楽祭の常連となりました。1972年から1992年にかけては同じザルツブルクにあるモーツァルテウム音楽院で教育活動にも従事しています。
 アーノンクール氏はその演奏と録音、そして『言葉としての音楽』『音楽は対話である』などの著作などの音楽的業績に対して、ポーラー音楽賞(1994年)、エルンスト・フォン・ジーメンス賞(2002年)、京都賞(2005年)など、さまざまな賞を受賞しています。2009年にはグラモフォン誌の生涯業績賞を、2014年にはその業績に対してエコー・クラシック賞がおくられています。
 
「アーノンクールが変えた世界」の記録
矢澤孝樹(音楽評論)

 もし音楽家ニコラウス・アーノンクールがこの世界に現れなかったら、20世紀中葉以降の「クラシック」演奏は、どうなっていただろう。

 まず、パーセルのヴィオールのためのファンタジアや、ムッファトやビーバーなどJ.S.バッハに先立つドイツ・オーストリアのバロック音楽や、マレの《膀胱結石手術図》や、その他数多のバロック音楽の至宝の再発見は、ずいぶん遅れていただろう。
 あるいはJ.S.バッハの《マタイ受難曲》は荘厳かつ厳格なカール・リヒター様式で、ヘンデルの《メサイア》はサー・トマス・ビーチャム編曲で聴くことが今でも当たり前だったかもしれない。
 ヴィヴァルディの《四季》が、イ・ムジチ流の心地よい世界から脱し、イル・ジャルディーノ・アルモニコからベルリン古楽アカデミーまで、それぞれに曲に潜む劇的なドラマを聴かせてくれる演奏の多様性が、果たして実現されただろうか。
 モンテヴェルディ、ラモーからハイドンまで、過去の遺物と見なされていたバロック/古典派のオペラが、現代的な演出と共にかくも生き生きと蘇る、そんな状況が訪れただろうか?
 ベルリン・フィルやロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団をはじめとする世界の名だたるオーケストラ、さらにはウィーン・フィルまでもが、そのサウンドを勇気をもって変革し、巨匠たちの時代の残影を振りきり21世紀にふさわしい新しい響きへと進化した現在は、果たしてあり得たか。
 ギドン・クレーメル、サイモン・ラトル、パーヴォ・ヤルヴィ、チェチーリア・バルトリ、イザベル・ファウスト、パトリツィア・コパチンスカヤ、テオドール・クルレンツィス…。現代の第一線で先進的な活動をくりひろげるこれらの音楽家たちの歩みは、いったいどうなっていただろう。
 さらには、「クラシック」がハイ・アートを気取って他ジャンルの音楽を見下すようなかつての状況から、ワールド・ミュージックやジャズ、ロック、タンゴ、ヒップホップやエレクトロニカ等々と生き生きとした交流を交わすようになるまでの歩みを、想像できただろうか。

 これらすべてを100%アーノンクールの功績に帰す、とまでは言わない。上記の変革は、20世紀後半から大きな潮流となっていった古楽演奏のムーヴメントに、種子として胚胎されていた要素ばかりである。その発芽と開花のためにアーノンクールと共に尽力し、偉大な成果を残した巨匠たちは数多くいる。グスタフ・レオンハルト、フランス・ブリュッヘン、アンナー・ビルスマ、デヴィッド・マンロウ、クリストファー・ホグウッド、今も活躍中のクイケン兄弟やウィリアム・クリスティ…。だが、妥協を許さない信念で他者との議論を辞さず、あらゆる種類の無知と偏見に対し演奏と言葉とで徹底して説明を試み続けたこのオーストリアの音楽家がいなかったら、古楽演奏はより困難な闘いを強いられていただろう。

 それは実際、闘いだった。1953年、パウル・ヒンデミット指揮するモンテヴェルディ:《オルフェーオ》の歴史的上演で非公式に産声を上げたウィーン・コンツェントゥス・ムジクス(以下CMW)は、初期はほとんどヴォランティアに近い「音楽開拓団」だった。彼らは信念のみによって結びつき、オーケストラ勤務等の傍らでかろうじて時間を捻出し、歴史的楽器を信じられないような困難の中で入手し、奏法を「発見」し、埋もれた楽曲の価値を演奏することで再認識し、過酷なスケジュールと条件下での演奏会を通じてその成果を聴衆と分かち合っていった。しかも内輪のサークルにとどまることなく、ウィーンの音楽界の中心に、欧州の各地に、アメリカ大陸に打って出て、テレフンケン(後のテルデック)制作のレコードと共に、激しい賛否両論を巻き起こしながらも少しずつ支持者を増やしていった。気がついた時には、時代の最先端にいた。彼らの演奏が、博物館的・教条主義的な「復元」などではなく、過去の音楽が持っていた「ことば」の力を、表面的な「美」に囚われることなく、生々しく、力強く現代にとり戻してゆく試みなのだということに、人々は気づいたのだ。そしてアーノンクールは、CMWの活動を基盤にしつつ、最高峰の現代オーケストラやソリスト、歌手たちとも熱く切り結び、その哲学を浸透させていった。

 この度、ワーナー・ミュージックから再発される16点の「エターナル・コレクション」は、アーノンクールのそのような軌跡を体感するための、必携の録音ばかりだと言えるだろう。まず、1960~70年代初頭のJ.S.バッハ:四大宗教曲ほかの録音がある。これらは、リヒターの権威が他を圧していた時代に、楽譜、演奏様式、楽器、演奏形態のすべてに渡って徹底した読み直しを敢行した勇気ある挑戦であり、歴史の画期である。その若々しい気概に満ちた演奏は、いまだ豊かなメッセージに満ちている。世俗カンタータ2曲も、その後のカンタータ全集への布石として重要だし、ヴィオラ・ダ・ガンバのソナタ集はガンバ奏者アーノンクールの、いまだ色あせぬ記念碑だ。そして79年の《モテット集》と86年の《ミサ曲ロ短調》、93年の《ヨハネ受難曲》は、わずか十数年の間にアーノンクールと仲間たちの音楽言語がどれだけ深化したかの証明となろう。
 80年代以降のセレクションも見逃せない。一期一会の共演となったドレスデン・シュターツカペレ管弦楽団とのモーツァルト:《ハフナー・セレナード》、CMWとの名盤《レクイエム》とその後の記念碑的な『教会音楽全集』とをつなぐ重要作《ミサ曲ハ短調》、90年代以降の新たなパートナー、ヨーロッパ室内管弦楽団との新鮮なメンデルスゾーン:《真夏の夜の夢》、そしてウィーン・フィルと20世紀の宗教的オラトリオに挑み、この壮大な作品の価値を再認識させたフランツ・シュミット《7つの封印の書》。
 そして埋もれていた3点の復活(すべて国内初CD化)にも注目である。アーノンクール得意のオーストリア音楽に焦点を当てた『レオポルド1世時代の音楽』は60年代、EMIに残した唯一の録音。『イン・コンサート』は1973年オランダ音楽祭での貴重なライヴ録音。そして、アーノンクール夫人にしてCMWのコンサート・ミストレスを長く務めた欠かせぬ音楽的伴侶、アリス・アーノンクールが主役となったJ.S.バッハ《ヴァイオリン・ソナタ集》。これまで容易に入手できず幻の録音となっていた復元協奏曲集からの3曲がカップリングされ、ヴァイオリン協奏曲BWV1052Rではアリスの嵐のごとき名演を聴くことができる。以上、すべて発売当時のオリジナルジャケット、アーノンクール自身のものを含むオリジナル解説が掲載されるのも資料的価値が高い。

 これがアーノンクールの変えた世界の一端だ。そしてその問いかけに耳を澄ますことで、私たちもまた、この世界を変えてゆく一員となれる。

カテゴリ : ニューリリース

掲載: 2016年05月27日 14:00