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東京JAZZ出演で話題沸騰!キューバの新鋭ピアニスト、アロルド・ロペス・ヌッサ

Harold Lopez-Nussa

 

チューチョ・バルデスやゴンサロ・ルバルカバといったアーティスト直系のめくるめく超絶技巧と、音楽一家で育ったアーティストらしい、クラシックを基礎とした確かな演奏で、オーディエンスを魅了してきたアロルド・ロペス・ヌッサ。最新作では、さらに新しい展開が見えてきました。

タイトルは『El Viaje』というように、キーワードは"旅"。アロルド自身、ピアノを弾き始めた当初より、音楽を奏でることで想像の旅をするような感覚を大切にしたい、と思っていたと語っていますが、今回の作品には、訪ねた土地からインスパイアされた楽曲を演奏しています。そして、さらに大きな変化はセネガル出身のベーシスト、アリュンヌ・ワッドゥを迎えた点にあります。

アリュンヌは、ザヴィヌル・シンジケートの一時代を支えたパコ・セリーのバンドでも活躍し、マーカス・ミラーの『アフロディジア』でもフィーチャーされたアーティスト。アロルドは2010年代の初頭に出会って以来意気投合し、2人の双頭リーダー作品を15年にリリースしていますが、本作はその発展形。

自らのルーツであるキューバを核にしながら、アフリカン・ミュージックのエナジーをバンドに取り込むことへの強い興味を抱いたとのことですが、バンド(トリオ)は新しいサウンド、グルーヴ、ヴァイブレーションを生み出す展開に。その成果は、一聴(!?)瞭然、数々の曲から、あふれだします。アルバムの中心部をなす5曲目には、巨匠チューチョ・バルデスの曲をキッチリ据えつつ、作品の色彩は実にカラフル!エレベのグルーヴ感と天使のような優しいヴォイスを聴かせるアリュンヌは、あのリチャード・ボナを彷彿とさせますが、このバンドは、かつてジョー・ザヴィヌルがボナやセリーをメンバーに加え、世界の音を取り込んで自らの音に仕立てあげたザヴィヌル・シンジケートの世界を、トリオのフォーマットで表現していく相似形のバンドとも。

エレガントなピアノ・ソロとヴォイスから一転、グルーヴ感あふれるリズムにシフトして祝祭的な盛り上がりを見せて行くオープニングを始め、M3は伝統的なキューバのリズムとアフリカのプリミティヴなサウンドが華麗に交錯し、なおかつジャズ・スタンダードのリフも織り交ぜてしまうというナンバー。かと思えば、メランコリックなムードで、パリの憂愁を描くM4のようなナンバーあり、旅の喜怒哀楽を描き出すような豊かな情感が織り交ざるタイトル・トラックあり、リスナーを様々な土地に誘います。

世界を見渡せば、リチャード・ボナは、キューバ・サウンドとの融合を形にした"マンデカン・クバーノ"を結成。その視点で言えば、逆方向のベクトルで融合を目指すのがこのユニット。同キューバが生んだアルフレッド・ロドリゲスも世界各地のアーティストを迎えて音楽で対話する新作を発表しており、その動向は楽しみ。

 

 

掲載: 2016年09月15日 15:45