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yellow gang|ニューアルバム『Yakety Yak』発売記念インタビュー公開

yellow gang

ノーホーンスカパンクトリオyellow gangが今年2月に発売した『CLACKETY CLACK』に続けて、早くも勢いそのままに、ダンシング&マッドネスな超絶スカパンクチューンが詰まった最新作『Yakety Yak』を完成させた。バンドも結成から20年を経て、近年のその活動は地元茨城での自主企画を中心に活発さを増し、熟成されたサウンドと初期の頃から一貫した”自分たちの好きなもの”をフレッシュさと共に突き詰めた感覚が全面に表現された傑作になっている。

”イエギャン”を昔から愛聴してきた世代はもちろん、ルーツ・ミュージックを愛する人や、速くて騒がしいバンドサウンドを求めていたキッズまでぜひ一度通して聴いてみてほしい。

今回、続けてリリースされたこの2作の関係性や、好調なバンドのモード、共に歩んできたレーベルとの関係性など、メンバーの3名とI HATE SMOKE RECORDSのOSAWA氏に参加してもらい、たっぷりと話を聞かせてもらった。


<2枚のミニアルバムを短いスパンで続けてリリースするアイデアのおかげで、伏線やおもしろい遊びも散りばれることができて、幅が広がった>

--イエギャンのみなさん、この度は続けてのニューミニアルバムのリリースおめでとうございます!音源についても後で詳しく聞かせてもらいたいんですが、なによりすこぶるよかったです!!ではまずはじめに、それぞれ自己紹介をお願いできますか?それと最近のマイブームや気になっていることがあれば知りたいです。

ヤマダ:ありがとうございますー!ドラムのヤマダです~。最近は「ハイキュー」と「僕のヒーローアカデミア」と「七つの大罪」をアニメで見て萌えてます。

Yotchang:どーも、ベースのYotchangです。マイブームですか?そうですね、納豆にニンニクをいれて食べることです!

Shiuchi Gang:ギターのShiuchi Gangです。最近は夜晩酌しながらウクレレを練習したり、子供のために大人の折り紙を覚えたりしてます。すっごい飛ぶ紙飛行機とかを調べて折ってます。

--早速ですが、今作『Yakety Yak』収録曲「I love me!」のMVが先日公開されましたね。Twitterのタイムライン上では感想のツイートや反響も結構目についた印象でしたがどうでしたか?

ヤマダ:嬉しいですね。友達ばっかり映ってるから尚更(笑)。

--秋葉原スタジオリボレPart2にて去年末に行われたライブでの撮影でしたね。今見ると少し前のことなのに、”こんな時代もあったのか”となりかねないような、みんながチャワチャと楽しそうに騒いでる映像で。

Yotchang:あの時撮影できていてよかったです、本当に。今の状況じゃ、こういう映像撮りたくても難しいし。

ヤマダ:リボレも思い入れのある場所で、自分たちの企画もやったし、 Four Tomorrowがやっていた大合奏会に出たり、観に行ったりと、毎年必ず楽しい一日があったところ。そんな場所が閉店する前に、世代も結構バラバラな、若いお客さんも昔からの友達もそこにいて映っているのもいいなって。

--MV中には、はしゃいでいるeitherの佐々木くんの大事な部分がレーベルロゴで隠されているシーンがありましたけど、これ無修正版はどこかにアップロードされたりするんですか?

OSAWA17:あーあれは、店頭用に渡している映像にはモザイクなかったような気がするな(笑)。

一同:(笑)

ヤマダ:お店にはお世話になってるから特別に...(笑)

--なんでですか(笑)。まぁそれは置いておいて、yellow gangの大事にしていることやバンドの魅力が空気感と共にうまく詰めこまれているMVなんじゃないかなと思いました。それに前回発表した『difference』のMVとも続いているような演出がありましたよね?

OSAWA17:そうですね。元々のテーマを簡単に話すと、”パンクヒーローがビデオを渡しに来る”みたいな要素があるんですけど、今改めて見るとヤマダが自宅でSTAY HOMEしている光景に見えちゃいました(笑)。そんな意図はなかったのに、今は簡単にできないような過去のライブ映像を懐かしむシーンのようにも見えたのは、思いがけず今の時代にフィットしているのかな。おもしろいものにできたんじゃないかと思ってます。

--確かに(笑)。そんな視点で2曲のMVを続けて見返してみるとまたおもしろいかもしれませんね。

Shiuchi Gang:MVの打ち合わせでも、メンバーだけではなかなかいいアイデアが思いつかなかったんですけど、OSAWAくんがナイスなアイデアを連発してくれて助かりましたね(笑)。

--今回のミニアルバム『Yakety Yak』は2月にリリースした前作『CLACKETYCLACK』と同じ時期に制作したのかと思うんですが、2作に分けてスパンを置かずにリリースとなった理由などはあるんですか?

ヤマダ:当初フルアルバム1枚で出しちゃおうと思って作ったんですけど、2枚で出したらトピックスが増えるんで活動の幅も広がるだろうし、今ってサブスクリプションやYouTubeで音楽を聴く人も多いと思っているんで、フルアルバムをみんながみんな聴く体力がないっていうか、好きな曲だけ聴きたい人も多いんじゃないかと思っていて。ボクは全然アルバム1枚聴けちゃいますけど。オーディオを持っていない人も多いだろうし、アルバム1枚聴く時間もない人だっているだろうなと。フルアルバムを作って曲がガンガン飛ばされちゃうんだったら、ミニアルバムにして的を絞って作った方が面白いかなって、OSAWAくんと話して決めました。

Shiuchi Gang:アイデア自体はOSAWAくんが提案してくれたんですけど、当初は予想外すぎて個人的にはなかなか受け入れるのに時間がかかったかもしれないですね。けどメンバーでもかなり話し合って、最終的に「あれ、これ面白いかも」って思えるようになった気がします。予め2作品出すのが決まってるのって、1作目で伏線貼ったりとかいろいろ面白いことができそうだし。結果的には2作に分けないとできなかったような遊びができて大満足です。

Yotchang:自分的にはミニアルバムをポンポンと2枚続けて出すアイデアは単純にバンドが動いている感じが伝わりやすいかなって思ったからですね。新しい視点で考えて、分けて出したからこそ、今になってようやく全部出たなーっていう達成感もあるし、おもしろいことができて結果的に良かった!

ヤマダ:中止になっちゃったけど『CLACKETY CLACK』のリリースツアーも回れたら更に達成感は感じられたと思うからそこは残念ではあるけど、ライブに限らず、楽しいことをやれそうというかどう形にしていこうかなっていうことが実はたくさん浮かんでいるんですよ。このリリースの後も色々できそうだなって。バンドとして今モチベーションは持ち続けているなって感じだよね?

Yotchang:うん。今回2つに分けてリリースした流れの勢いそのままに、いいリズムでポンポンと進んでいけそうな匂いは自分たちでもしてるよね。

ヤマダ:そうそう。実はもう録音を進めているものもあるし、新曲も更に増えているしね。形を工夫しながらみんなにお披露目できる機会も作れたらなと思ってます。

--おぉ!いいですね。すごいペース!

Yotchang:そう、おれたち実は今すごいペースなの(笑)!

<カタカタと、ペチャクチャと。生活の音とパーティーのような音とで、僕らの暮らしをしながら音楽を作っていく>

--今作は、色々な部分で前作と連動している作品かと思うんですが、どんなところから『Yakety Yak』と『CLACKETY CLACK』という2つのタイトルになったんですか?アメリカの50年代のヴォーカル・グループ、The Coastersに「Yakety Yak」という曲がありますけどそこからの引用だったりするのかなと思ったんですが...。

ヤマダ: The Coasters は最高なんですけど、そこは関係ないです(笑)。

Shiuchi Gang:2枚に分けて出すことに決めた時に、どうおもしろさを出そうかなと話し合っていて、Yotchangが言った「”Yakety Yak”と”CLACKETY CLACK”をアルバムタイトルにして、『Yakety Yak』の方に"Clackety Clack”っていう曲を入れようよ!」っていうアイデアが素直におもしろいなと思ったからですね。

Yotchang:音源をリリースとして2つに分けてもそこに何か関連性は欲しいなと思っていたので、自分たちなりのこだわりではあるんだけど、こういう形にすると腑に落ちました。

--洋楽でもたまにありますよね。アルバムタイトルと同名の曲はそのアルバムには収録されていなくて、実は次作に入っていたりするケース。

ヤマダ:それに、今回の『Yakety Yak』に入っている「Clackety Clack」という曲では、歌詞で”Yakety Yak”って歌っているんだよね。「生活の音とパーティー的な音とで、僕らの生活をしながら音を作っていく、ライブをしていく」みたいな気持ちも表現しているつもりです。

--なるほど。この2つの単語も普段あまり聞き慣れない言葉かなと思ったんですが、どこから着想を得たんですか?

Shiuchi Gang:正直に言うと、この曲を作っている時にこういう風に歌いたいなっていう音の視点からいろいろな言葉を調べて探しました。響きだったり心地よく韻を踏めそうだなっていう部分も自分は大事にしていて。それをきっかけにして、この曲で歌いたい歌詞の流れと合うかどうかももちろん考えた上でバチッとハマった感覚ですね。”Clackety Clack”と”Yakety Yak”の2つの言葉自体はそれぞれ「カタカタと音をさせて~」「ペチャクチャと喋る」みたいな意味ではあるので、ヤマダが言ってくれたような解釈もできるのかなって思います。歌詞全体を通しての本当のテーマはまた少し違ってくる部分もあるんですけどね。

ヤマダ:ボクらは全員曲を作るから、それぞれの特徴もけっこう違って面白いよね。聴いているうちに後から解釈が深まっていったり。この曲についてもなかなか深いテーマだったような気がするんだけど...。

--どんなことを歌っているかに関しては自由に解釈してほしいという意見もあると思うし、言い切りたくない人も多いと思うんですが、少し解説してもらうとしたら...

Shiuchi Gang:えっと、「Clackety Clack」っていう曲に関しては、何について歌っているかはあまり話したくないっていうのが本音です(笑)。

一同:(笑)

Shiuchi Gang:自分の中にあるちょっとアンチな感情とか...SNSには書かないような気持ちを自分なりに表現している感じもあるので(笑)。ストレートにうまく伝わる気がしないんですよね。すいません。皮肉めいたことをかわいらしいメロディーで表現したいと思った曲です。

<曲作りはゲラゲラ笑いながら完成したり、難航しても思わず「バンドマジックだね!」という言葉が漏れる程手応えを感じたり様々>

--いえいえ、少しでも話してくれてありがとうございます(笑)。このタイミングで他の曲についても少し話を聞けたらなと。オリジナルメンバーである二人が作った曲も、恥ずかしながら正直どっちが作ったのかなっていうのが個人的に予想がつかない曲が多くて。

Yotchang:お~それはしてやったりですね!

ヤマダ:今回の音源で言うと、ほぼほぼ共作が多いんだけど、メロディーをしっかりつけたもので言えば、ボクだとM-2「I love me!」とM-6「SENSE」くらいかな。あとは大体みんなで作った感じ。

Yotchang:そうだね。聴いてもらえればわかると思うけど、さっき話したM-5「Clackety Clack」やM-3「Take Care of Your Mind」みたいに、しうっちゃんの作った曲は「らしさ」が全面に出ているのでわかりやすいと思うんですけど、他にはヤマダが考えたフレーズをみんなで広げていったものが多いかも。

Shiuchi Gang::M-4「Laugh! Laugh! Laugh!」なんかは3人ですっごいゲラゲラ笑いながら作ってた気がするんだよね。

--この曲、ちょうどミニアルバムの中盤で前後のスウィートな2曲をうまくライブのテンションで結びつけている楽曲かなと思いました。

Yotchang:これがたぶん...このミニアルバムの中でナンバーワンの曲なんでしょうね!フフフ。

一同:(笑)

Yotchang:簡単だけど作れそうでなかなか作れない曲なんじゃないかなって思うんで。自分たちらしいし。

ヤマダ:この中で1番古い曲な気がするなー。たぶん2013年に出したepの頃にはありました。その後もライブではあまりやってないと思うんですけど、実はスタジオではけっこう演奏していて。お気に入りなんです(笑)!

Yotchang:M-1「Sugarcoat」なんかははじめにフルアルバムで出そうかなと考えていた時に、その1曲目を飾るつもりで作った曲。これまでもそうだけどyellow gangの音源って速くて短い曲で始まりたい感覚がずっとあったので。歌詞はこれまでもずっとその時思っていることや感じていることを歌ってきたので、今後もそこは変わらないんじゃないかなー。実際世の中に不満はあっても、直接的に意見したり否定することは苦手なので、この歌詞は自分なりにそれをやわらかく包み込んで表現したつもりです。ヤマダが書いた歌詞は逆にけっこうストレートじゃない?

ヤマダ:そうかも。M-6「SENSE」ではストレートに人種についての話を歌詞にしていますね。政治に関わる事や身の回りの不平不満はボクも書いていきたいですけど、これからはもうちょっと嬉しいことだったりもうまく表現していけたらいいかな。

Yotchang:この曲はスタジオで作っていた時のスマホの録音の最後に、ヤマダの「いやーこれバンドマジックだね!」っていう一言が残っていたのが印象的でした(笑)。確かにこういう曲をやりたかったけどなかなか納得行く形にならなかったのを、今回ヤマダが持ってきたものをみんなであーでもにこーでもないと悩んで完成できた時の感覚がその言葉に詰まっていた気がして。

ヤマダ:簡単につまらない感じでバン!と終わるのが嫌で、構成や展開にすごく悩んだ曲だったので、納得行く形になってよかったー!

<それぞれの曲が今のyellow gangのフィルターを通してバチっとハマり、2枚の作品それぞれがパワーと特色のある作品に>

--ちなみに制作時期はちょうど1年前くらいかと思いますが、その時期によく聴いていたものや参考にした音源ってありますか?

ヤマダ:まさに「I love me!」なんかは 片想い に影響を受けていますね(笑)。ソウル的なポップな歌いまわしをこの曲でやりたくて、結果的に耳に残っていた片想いの曲からヒントをもらったと思ってます。他にはこの時期から最近までずっと The Flamin' Grooviesとかガレージをすごく聴いています。

Shiuchi Gang:今作の曲を思い返すと、 The Archies という昔の子供番組のサントラやら、 They Might Be Giants というバンドが子供向けの曲を揃えた「Here Comes Science」というアルバムや、Netflix制作の「Story Bots」という子供番組のサントラといった、子供向けの歌詞がシンプルで、スウィートで、ポップなやつにめっちゃくちゃ影響受けたかもしれません。

--The ArchiesやThey Might Be Giantsは今聴いてみたらどの音源もいいですね!親しみやすさとスウィートな感じがあって今回の2枚の音源に通じる部分がなるほどと腑に落ちました。ここまで細かいところも話してくれたように、全体的に『Yakety Yak』は初期作に比べるとやはりポップパンク色が根底に強くあったり、ミドルナンバーやメロウで色褪せないような楽曲が増えたような気がしますよね。そんな中でも冒頭や終盤にはこれぞというようなキラーチューンやシンガロングもしっかりとあり、アルバム通して聴き応えのある作品に感じました。

ヤマダ:ミドルナンバーやポップパンク色は、ギターのしうっちゃんが入ってからいい感じに取り込めているところだなと思います。今回の作品はメロウなところと爆裂なところといい感じのバランスが出せたかな。

Yotchang:さっきも話したようにみんなが曲をつくるので、それぞれが作った曲をyellow gangというフィルターを通してバンドの曲にする感じなんですよ。だから少なくともテイストやカラーが3色はある。そこから個人のバリエーションによってより幅を広げている感じですね。でも、作品を作るときは全体をざっくり見て、もっとこういう曲があったほうがいいよねって作ったりもしますね。そう考えると作品の全体像としてのイメージは昔からあまり変わらずに持ってるのかも。

Shiuchi Gang:はっきり3色あるんだけど、全然バラバラってわけでもなく、なんか不思議と今の雰囲気ってのがあるなぁって感じられるのが面白いなと思ってます。

--今回2枚に分けてリリースする提案をしたOSAWAさんから見ると、完成した2枚それぞれの盤についての印象はどうですか?

OSAWA17:そうですねー。元々フルアルバム用にあった曲をテイストごとにバランス良く振り分けるのかなと思いきや、個人的にはサウンド的にそれぞれの作品の色がバチッと分かれたなっていう印象です。先にリリースした『CLACKETY CLACK』はどちらかというと色々なジャンルが混ぜ込んであって、表現するとしたら最近のyellow gangの感じが出ている。それに比べると今回の『Yakety Yak』はCDの紹介文にも書かせてもらったんですけど、スカパンクっていうものに特化したサウンドになっていて、初期のyellow gangっぽさもうまく出しているなって感じました。レーベルっていう立場では、今回は制作していく上で伏線や遊びは別として、「2枚合わせてはじめてひとつの作品として成り立つ」っていうようなめちゃくちゃわかりやすいものにはしたくないなとは思っていたので、それぞれの作品が1枚ずつパワーがあってしっかり色の出ているおもしろい仕上がりになったなと思ってます。

--近年のyellow gangのモードと懐の広さを濃い目に抽出してお知らせする聴き応えのある久しぶりの1枚と、初期の勢いある感じも炸裂しつつ、ポップナンバーもあって、過去のyellow gangから最近のyellow gangまでをギュッとアップデートして詰め込んだわかりやすい1枚と、どちらも雰囲気の違う作品なので聴き比べてみるとおもしろいですよね。

Yotchang:そう考えると、しうっちゃんがバンドに入ってすぐに名刺代わりにepを出してからけっこう経つんですけど、その間もゆっくりと活動してきた中で、ここ2~3年でようやく自分たちの中でもバンドの色が新しく確立されてきたのかなって。改めてそれを表現したのが『CLACKETY CLACK』。『Yakety Yak』はそこからバンドの勢いそのままに前に進んでいく作品かな。久しぶりに名刺代わりの作品が完成した感覚ですね。

ヤマダ:ボクら名刺いっぱいあるね(笑)。

Yotchang:え(笑)?今回のはあれよ、ちゃんとした薄っぺらいヤツじゃない良い素材の名刺よ。

<自分たちがおもしろいと思う変化球を投げ続けられるように、地元でやり続けること>

--名刺は何枚あってもいいってことですかね。今も少し話に出ましたが、2013年にepをリリースした頃から今のメンバーで活動していると思いますが、2019年の7inch自主リリースに至るまでの間は、目に見える表立った活動はマイペースだったのかなと思って。その間の心境はどうでしたか?

ヤマダ:ぼくはすごくバンドがやりたかったんです。ライブに呼ばれても断ることが多くなって、そのうちだんだんと呼ばれなくなくなってしまっていて、どこか置いてきぼりになっているみたいな気持ちもありました。

Shiuchi Gang:改めて考えるとそんなに時間が経ったのかとビックリですね。たぶんその間ってちょうどそれぞれの生活でいろんな変化があった時期で、ライブの数が少なくなったり、ヤマダに悶々とさせたりもしたけど、個人的にはこんな曲がやりたいとか7inch作りたいとかはずっと考えてて、進みはスローペースではあれど、そんなに気持ちは変わらず前向きにやれていた気がします。

ヤマダ:その中でどうせマイペースにやるんなら生活圏でバンドができたら最高だよなーって思うようになって、地元である茨城の取手にあるDandelion Cafeでまたボクらの自主企画「JUNK BALL GAME」をどんどんやっていくようになった感じですかね。

--「JUNK BALL GAME」はこれまで32回を数える長年続いている企画ですよね(自分が初めて遊びに行ったのは調べたら2009年に行われたvol.11でした)。ホームを移して、また企画を精力的にやってよかったなと感じたことなどがあれば知りたいです。

ヤマダ:やっぱり都内のライブや地方のライブが多いとメンバーも家族的になかなか了承取りづらいらしいんです(笑)。生活圏でだったら帰りも早く帰れるし、ぎりぎりに来たっていいわけなんでやりやすいし、単純にコスト面もかからない。あとは茨城のバンドの友達が結構できてきたんで、ボクらにしかできない面白いことがここからやれそうだよねって思いからガツガツやり始めました。実際家族にライブを見てもらったり、地元の先輩がふらっと来てくれたり、地元のコミュニティがまたできてきたっていうことと、対バンしたことないバンドにも声をかけたりしているので、どんどん友達が増えて、今はすごく幸せな気持ちがあります。ボクたちの地元に東京や他県のバンドが来てくれるのって、なんか自分の家に友達が来てくれる感覚に似ていて、とにかく楽しいです。

--自分の好きなことや好きな場所に周りの友達が興味を持ったり来てくれることってワクワクするし嬉しいですよね。それに、バンドも20年近く活動していると、「働きながら」あるいは「家族を持ちながら」バンドを続けていくこととうまく向き合っていけるかが大事になってくると。

ヤマダ:そうですね。バンドは生活の中に当たり前に普通にあって、メンバーの生活を尊重して仲良くやれたらいいと思っているので、どうにかうまくやれているかな~(笑)。

Yotchang:メンバーがそうやって考えてくれてるので、助かってますよね。

Shiuchi Gang:まだまだやりたい曲も、なりたいバンドマン像もあるから、もうしょうがない。

ヤマダ:メンバーも家族もやっぱりとても大事な存在なんで!

--実際に音源のリリースもそうですけど、ここ数年、企画をバンバンやって色々なバンドと良い時間を作っているのを見て、yellow gangが今やりがいと楽しさを感じてバンドをやっているのが伝わってきたし、生活とうまく突き合わせてバンドをやっていることも個人的にめちゃくちゃいいなと感じていました。あまり活動的になれず世代が上になってきたバンドや、ライブの機会が多くない若手のバンドもごちゃまぜにして遊び場を作っているのが素晴らしいなと。

ヤマダ:そう思ってくれるとありがたいですね。企画の1回目を高円寺GEARでした時から「JUNK BALL」=「変化球」を投げ続けられるようにジャンルも被らないように考えているから、毎回バンドを誘う時はそこに頭を悩ませているし、新しいメンバーになっても、場所が変わっても、例え人がそんなに入らなくても、自分たちがおもしろいと思うことをやり続けたいと思っています。

--これまでの出演者も相当な数になると思いますが、呼んでみて印象に残っているバンドを知りたいですね。

Shiuchi Gang:ライブペイントしながら民族楽器を演奏したりするアーティストがいて、あれは衝撃的でしたね...!

Yotchang:すごかったねー!

ヤマダ:彼はツカサくんっていって「 atomic jungle 」っていう名前で活動している、ボクとYotchangの地元の友達。簡単に言うとアフリカに行って帰ってきたら、いつの間にかアーティストになってたんですよね(笑)。おもしろそうだからイベントに出てよって誘ったらパフォーマンスにみんなびっくりしたよね。

Yotchang:ヤマダが中心になっていつもバンドを誘ってくれるので、自分はかなりの確率で知らないバンドも多いんですけど、実際に見てみると毎回「なにこれ、おもしろい!最高!」って感覚になるんで。だからもし知らないバンドがいても毎回楽しめる企画になっているのでそこは保証できる!

Shiuchi Gang:取手でしかやってないのにすっごいかっこいいバンドもいるしね。 恋のロシアンルーレット とか。

ヤマダ: NO NO NO が出てくれたのも嬉しかったですね。個人的に好きで7inchを買っていたので。企画を楽しんでくれた感想もツイートしてくれていたみたいで、その日も良い企画になったかなと。

--Twitterでは3人で飲んでる画像を挙げていたりして微笑ましいなと思っているんですが、スタジオ後などはよく飲むんですか?

ヤマダ:スタジオはスタジオ、飲みは飲みで別に集まりますね。大体みんなでくだらない話をしている気がします。

Yotchang:ヤマダにお説教されることが多いかもしれないなぁー(笑)。

ヤマダ:そんなことないじゃん(笑)!この間も下ネタ話してました、下ネタ。

Yotchang:いやー下ネタとかあんまり話したことないかもなー。ははは。

--急に真面目な感じにシフトしようとしてきましたね(笑)。バンド歴も長くなってくるとそれはそれとして、どこかドライな関係の人達も多いなって感じるので仲睦まじい様子が見えるのはいいですね。そこもバンドのモチベーションに繋がってる要因のひとつなのかもしれませんね。

Yotchang:ボクらはけっこう赤裸々かもしれないですね。バチバチというか言いたいことは言い合えている方なのかなって思っています。

<配信ライブを終えて思う、今のライブハウスに対して考えること、自分たちができること>

--yellow gangは今も昔も変わらず”ノーホーンスカパンクトリオ”と掲げていますが、自分たちが思う「スカパンク」の良さってなんなんでしょう?

ヤマダ:うーん、いちばんは曲調が明るくなるんで、楽しくっていいよねって思います(笑)。SKAもPUNKもとっても大事にしていることですね。

Yotchang:うん、なにより聴いていて楽しいよね。

--「スカパンク」にも、もちろん色々と幅はあると思うんですけど、それこそ1stをリリースした頃と比べても、そう呼べるバンドって今は周囲にあまり多くはなくなってきたかなと感じています。さっき余談で過去の「JUNK BALL GAME」の話をしていたときも、OSAWAさんがやっていたUNITED SKATESは毎回出演していたくらい一緒にやっていたんじゃない?なんてことも聞けましたが、スカパンクに限らず、近いものを感じるバンドはいますか?

ヤマダ:そうですね。スカパンクで言うと同世代のバンドは本当に少ないなって思うし、先輩たちもそこまで動けているバンドって少ないんじゃないですかね。バリバリやれているのって大御所のバンドとかになってくるし。一番近い存在だなって思えるのはやっぱりTHE SENSATIONS と THE AUTOCRATICS かな。

--まさに先日配信で行った『CRACKETY CRACK』のレコ発のメンツですね。

ヤマダ:どちらもルーツ・ミュージックをすごく大事にしてるなって思うので。他にはPOP PUNKのバンドだと The Nerdy Jugheads 。同じような気持ちや感覚を持っている気がするんですよね。長くやっているバンドだけど自分たちのやりたいことをブレずにずっとやっているいいバンドだなって思っています。他にも大阪の TRASH MIND とか。

Yotchang:きっとジャンルやサウンドっていうよりも、バンドの活動の仕方や考え方と か、そういう部分で近しい感覚を持てる人たちのことは気になっちゃいますよね。かっこいいって思える部分って結局気持ちとか考え方だよなーって。だから自分たちの企画もジャンルレスになってくるし、そういうバンドと一緒にやれる機会があると楽しいですよね。

--コロナの影響で『CRACKETY CRACK』のリリースツアーは全て残念ながら流れてしまいましたね...。代わりではないですが、今話題にしたように、7月には下北沢SHELTERにてYoutubeスーパーチャット上での配信ライブを行いました。ライブを終えての率直な感想はいかがですか?

Shiuchi Gang:すごく面白いと思いました。外国から見てくれた人もいたみたいで、今後ライブができるようになってもこういう形もやれたら素敵なんじゃないかな。

Yotchang:うん。今やれることが限られてる中でああいうライブをできたのはすごいなと。

ヤマダ:そうだね。一方で、配信って気軽だし、色々な人が見れていいんですけど、やっぱりなんとなく空気とかそういうものは十分には伝わらない気がしていて、本来やりたいこととは少し違うんだよな...っていうことも正直思いました。早く普通にライブをしてみんなと会ってワイワイしたいです。でもこういう新しい形でライブを見てもらえたり楽しんでもらえた事はとってもありがたい事だし、幸せなことでしたね。

--いま現在(2020年8月)では、誰しもがライブを思うようにはできない現状で、状況を判断しつつその都度模索しながらという状況は避けて通れないですもんね。ちょっとシビアな話になるとは思うんですが、メディアでは偏った報道もあり、その中でライブ(ライブハウス)は「生活に必要ない・なくても困らない」という心無い声も一部ではあります。実際ライブハウスに行かない生活に慣れてしまう人たちも出てくるとは思うんです。その中で自分たちがライブハウスやバンドというものに改めて思うことをできたら聞きたいです。

ヤマダ:多様性を認めていくって話ですよね。たとえば、極端な話で良い例えではないかもしれないですが、生活するのにボク個人としては正直イオンなんて全然必要ないものだけど、そういう大きなショッピングモールがないと生活に困る人ってたくさんいるんですよね。ライブハウスやライブイベントについても同じ話かなって思っているんです。”困った時はみんなで助ける”って普通な事なのに、なんで「自分にとって」から「社会にとって」必要ないものへと認識がすり替わっているか全く謎で...。僕たちができる事は好きな場所でミニマムでもいいからお酒飲んだり話したりして、大事な場所が無くならないようにすることだと思っています。簡単には元通りにはならなくても、一定の基準だけで計らずにきちんと学んで考えながら「あぁなんとなく大丈夫なんだな」って少しずつ少しずつ、安心感やイメージを取り戻していくことが重要なのかな。

Yotchang:うん。でもこれはとても難しい問題ですよね。ただ「ライブをやりたい」とう考えだけでは動けない状況でもあるし、どうしても色々考えてしまいますね。これに単純な答えはないのかなと。「ライブハウスはなくなってほしくなんかない」「バンドは楽しいし辞めたくない」。これは当たり前にそう思うんですけど、やり方を間違えるとみんなが不幸になってしまう。バンドごとに進め方も違うし、個人個人がどう考えているかはメンバー同士でも違う部分があると思うので、「こう思う!」ってバンドして表明するのは難しい部分もありますね。今できる範囲で新しい方法を見つけていくしかないのかな。

--なかなか簡単には言い切れないし、文字にしてしまうと温度感やニュアンスもなかなか伝わりづらいので難しいですよね。言及してくれてありがとうございます!そんな中、さりげなく「I love me!」のMVの最後には、”絶対にまたダンスフロアに戻ってくる。ピットでまた会いましょう!”とメッセージが込められていましたね。

OSAWA17:ネガティブな気持ちにどうしてもなってしまうこともあるけど、やっぱりその気持ちだけは忘れたくないですね!

<盟友とも呼べるレーベルとの関係と、バンドとしてのブレない姿勢>

--今作も長い付き合いである盟友OSAWA17氏主宰のI HATE SMOKE RECORDSからのリリースです。1st(レーベル品番-002!!)をリリースしたのが2007年なので、互いに一種の運命共同体のような関係かとも思いますが、これまでで印象に残っていることはあります?

Shiuchi Gang:OSAWAくんはアイデアも行動力もライブも凄過ぎて、正直相当尊敬してます。あと、何年も前に、某大御所スカバンドのボーカルのモノマネを見せてもらったんですが、それも絶品でした。

ヤマダ:思い出はやっぱり初対バンの時かな。OSAWAくんがソファにどかんと座って愛想が全くなくって怖かったのを思いだします(笑)。

Yotchang:ソファ覚えてる...、あれは怖かったな...(笑)。

一同:(笑)

ヤマダ:1枚目のお誘いをしてもらった時のことも覚えているなー。確か池袋マンホールで「レーベルやるからCD出さない?」って軽めに言われたような。嬉しかったな。

OSAWA17:全然覚えてないなー(笑)。でもレーベルを始めてから最初のコンピを出してすぐの時期だったよね。振り返るとずっとリリースさせてもらっているけど、途中1回某レーベルの方がマンホールに来て、「ウチから音源出さない?」っていうオファーもあったよね?

ヤマダ:ありましたね。2ndを出した後くらいのことだったかな?声をかけてくれたのは嬉しかったけど、すぐに「ボクら友達のレーベルから出してるんで、すみません」って断ったんですよね。だから、OSAWAくんには厳しいこともよく言われてきましたけど(笑)、本当にボクらのことをよく考えてくれていて、こういう関係は嬉しいなって素直に思ってますよ。OSAWAくんが迷惑じゃないといいなって気にはしているけどね(笑)。

OSAWA17:迷惑じゃないっすよ(笑)!ははは。いや、一緒に楽しませてもらってます。他にもレーベルからリリースさせてもらっているバンドは多いけど、yellow gangは他のバンドと比べて全然距離感も違うので。リリース関連の色々を進める時に他のバンドはその9割をバンド主体で動くとしたら、yellow gangに関しては「お前もメンバーかよ」っていう勢いでアイデア出すし口出すし、「うるさくないかな?」ってたまにこっちが思うくらい(笑)。

Yotchang:ベタな言い方だけど、OSAWAくんもyellow gangのメンバーだからね~(笑)。めちゃめちゃ意見してくれて助かってます。

ヤマダ:信頼できるプロデューサーだね!

--聞くところによると、最近ジャケットやグッズで使われている、yellow gangのメインキャラクターの”ハチさん”のデザインもOSAWAさんが手掛けたとか。これはなんでハチになったんですか?

yellow gang

yellow gang

ヤマダ:これは「君たちは働きバチだね」って言ってくださりまして...。

OSAWA17:違う違う(笑)!働きバチっていうのもおもしろいんだけど、デザインを頼まれた時にyellow gangというバンド名から連想していって、なにかないかなと考えた時に、「虫の世界のギャングといったら蜂でしょ!!」と思いついて、キイロスズメバチがぴったりなんじゃないかと描いてみました。わかりやすいキャラクターじゃない?

--そうだったんですね。さっきの働きバチ説だと、レーベル社長とレーベルでこき使われているバンドマンの関係みたいで...(笑)。

一同:(笑)

OSAWA17:本当だよ!そんな風に言った覚えないのに、ここまでのいい話が台無しになるところだった(笑)。

--そんな風に言い表されていますが、20年続けてきた”yellow gang”は改めて自分たちで言葉にするとどんなバンドだと思いますか?

ヤマダ:ぼくらは簡単に言葉にするとやっぱり仲良しって感じですかね(笑)。飲みにいったりしながら楽しくやりたいです。バンドの音楽的な活動は、色々なバンドと繋がって、地元に何か音楽的な土壌を作りたいし、残せたらいいなと思ってます。曲もいっぱい作りたいなー!さっきも話したように今ボクらのモチベーションは高いし、やりたい事はまだまだたくさんあるんですよ。

Yotchang:まぁ、仲良しだよね(笑)。とにかくバンドってステキですよ、人間関係も音楽関係も。みんなのやりたいことをどんどん許容、吸収していく。だからこそ幅広いけど芯はブレないバンドでこれからもいたいです!

Shiuchi Gang:うむ。

タグ : J-インディーズ

掲載: 2020年09月11日 17:00