アルバート・サモンズ(vn)ウィリアム・マードック(p)『アコースティック録音時代のヴァイオリン・ソナタ集』2025年2月27日発売
戦前の英国を代表するデュオのアコースティック録音によるヴァイオリン・ソナタのすべてを復刻】
輸入盤CD
アルバート・サモンズは1886年に靴職人の家に生まれ、熱心なアマチュア・ヴァイオリニストだった父と兄の手ほどきで演奏を始めました。自作のヴァイオリンでメンデルスゾーンの協奏曲を演奏しているところをビーチャムが聴いて自身のオーケストラにスカウト。ティボーやイザイ、カザルスらに高く評価され、英国を代表するヴァイオリニストとして活躍しました。特にエルガーの録音は今も同曲を語る上での必聴盤の一つとされています。ウィリアム・マードックは1888年にオーストラリアの技師の家に生まれ、法律家を志して勉学を積みながら、奨学金を得てロンドンの王立音楽学校でピアノを学びました。在学中に2度も金メダルを得ながらも法律家への道を歩もうとしていたマードックですが、名歌手クララ・バットのツアーに抜擢されて高い評価を得たことが音楽家への道を決定づけました。サモンズとマードックは第1次大戦中に英国近衛歩兵連隊軍楽隊(グレナディア・ガーズ・バンド)で出会い、意気投合。人気ヴァイオリニストとお気に入りの伴奏者による主従関係のようなデュオが主流だった当時としては異色の、対等のデュオとして高い評価を得ました。
このディスクは二人が英コロンビアにアコースティック録音したヴァイオリン・ソナタをすべて復刻したアルバムです。いずれの曲もSPレコードの収録時間に合わせて「短縮」されていますのでご注意ください。レーベルによれば、短縮版ながらすべてこれらの曲の史上最初の録音とのこと。特にコールリッジ=テイラーとアイアランドはこのデュオが初演を行った翌日に収録されたという点でも貴重な記録です。100年以上前の録音なので音質には限界がありますが、ノイズはかなり整理されており、ヴィブラートやポルタメントの使い方などヴァイオリン演奏史に関心のある方には聴きものとなることでしょう。全12ページのブックレットには貴重な写真に加えて、歴史的録音に詳しいJonathan Woolfによる興味深い解説が6ページ掲載されています(英語のみ)。それによれば、これら「短縮版」は演奏者二人が(時に作曲家立会いの下で)音楽的な説得力を保つべく試行錯誤と熟議を重ねて作ったそうで、これも録音史の貴重な証言と言えるでしょう。
(ナクソス・ジャパン)
【曲目】
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)
1-4. ヴァイオリン・ソナタ 第5番 ヘ長調 Op. 24「春」
(短縮版 ブックレット表示による演奏時間 3:37/3:21/2:02/3:58)
ベートーヴェン
5-7. ヴァイオリン・ソナタ 第9番 イ長調 Op. 47「クロイツェル」
(短縮版 3:56/7:58/3:44)
セザール・フランク(1822-1890)
8-9. ヴァイオリン・ソナタ イ長調より第1楽章&第2楽章
(短縮版 3:38/3:29)
エドヴァルド・グリーグ(1843-1907)
10-11. ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ハ短調より第1楽章&第2楽章
(短縮版 3:58/3:57)
12-14. サミュエル・コールリッジ=テイラー(1875-1912)
ヴァイオリン・ソナタ ニ短調 Op. 28
(短縮版 7:01/3:54/3:57)
15-17. ジョン・アイアランド(1879-1962)
ヴァイオリン・ソナタ 第2番 イ短調
(短縮版 3:58/7:55/2:47)
【演奏】
アルバート・サモンズ(ヴァイオリン)
ウィリアム・マードック(ピアノ)
【録音】
(すべてMONO)/音源(初出盤を使用)
1-4. 1917年10月5日/Columbia L 1231/32 (matrices 76012/15)
5-7. 1917年3月7日/Columbia L 1210/11 (matrices 75488/91)
8-9. 1916年6月3日、7月5日/Columbia L 1149 (matrices 6865/66)
10-11. 1916年6月5日/Columbia L 1079 (matrices 6863/64)
12-14. 1917年4月15日/Columbia L 1396/97 (matrices 75860/63)
15-17. 1917年3月7日/Columbia L 1322/23 (matrices 75484/87)
復刻プロデューサー: Eric Wen
復刻エンジニア: Raymond Glaspole
マスタリング: Rick Torres
カテゴリ : ニューリリース
掲載: 2025年01月21日 00:00