「大ゴッホ展」に行く前に知っておきたい!日本美術がゴッホに与えた影響
今年の9月から、神戸、福島、東京を「大ゴッホ展」が巡回する。今回は代表作の1つでもある『夜のカフェテラス』が来日予定とされ、注目度も高い。知らない人はいないほど著名な画家であるフィンセント・ファン・ゴッホだが、実は日本と浅からぬ仲にあることはご存じだろうか。ゴッホと日本のつながりについて見てみよう。
●ゴッホ独特の技法を生んだきっかけは浮世絵!?
現代の日本において、ゴッホ人気はかなり高い。2022年から2023年に角川カルチャーミュージアムで行われたゴッホの没入型アートイベントの総来場者数は24万人を超えた。もちろん世界的にも人気があり、2023年にパリのオルセー美術館で開催されたゴッホ展では79万人以上を動員。1986年の開館以来の最多入場者数を記録した。
実はゴッホは熱心な「浮世絵コレクター」としても知られている。浮世絵を中心とする日本美術に強い関心をもったゴッホは、弟のテオに対して「日本美術は、因習にとらわれた教育や仕事からぼくたちを解き放ち、自然へと回帰させてくれる」と手紙を綴ったことも。さらに、自身の作品にも浮世絵を登場させており、『タンギー爺さん』という作品では肖像画の背景を一面浮世絵にしたこともある。ゴッホは日本画の平面的で大胆な構図や、自由で鮮やかな色彩表現などに魅力を感じていたようだ。
現代では大人気画家の一人であるゴッホだが、生前から評価されていたわけではない。画家であり、ゴッホ研究者でもある吉屋敬が書いた「ゴッホ 麦畑の秘密」では、ゴッホがどのような人生を送ったのかがわかる。たびたび女性トラブルを起こし一族の問題児とされており、晩年は精神を病んでいたというゴッホ。自ら耳を切り落としたり、ピストル自殺を図ったりと、その人生は波乱万丈だったという。
さらに本書では、画家ゴッホと日本美術の繋がりも詳細に描かれている。浮世絵の中でも、特殊加工した「クレポン(ちりめん絵)」に特に魅了されたゴッホは、そのシワや凹凸を油彩画で再現しようと試み、ゴッホ固有の技法としていった。今の私たちが「ゴッホらしい」と感じる独特の技法は“浮世絵との出会い”があってこそだったと聞くと、日本美術がゴッホに与えた影響の大きさがより理解できるのではないだろうか。
現代で強烈な人気を誇るゴッホが、どんな人生を送り、どのように作品を生み出してきたのかがわかる本書。ゴッホの人となりや日本美術とのつながりを知ることで、作品を見る視点が変わるかもしれない。
大ゴッホ展
画家、フィンセント・ファン・ゴッホ(1853~90)の名品を集めた巡回展「大ゴッホ展」(産経新聞社など主催)が東京都台東区の上野の森美術館を東京会場として開催されることが決定しました。世界屈指のファン・ゴッホコレクションを誇るオランダのクレラー=ミュラー美術館所蔵の名品を2期に分けて公開します。
■クレラー=ミュラー美術館
オランダ・ヘルダーラント州のデ・ホーヘ・フェルウェ国立公園内にある美術館。約90点の油彩画と約180点の素描などからなる世界屈指のファン・ゴッホ作品を収蔵・展示しています。
■「大ゴッホ展」東京会場 開催概要
会場:上野の森美術館(東京都台東区上野公園1-2)
会期:第1期/2026年5月29日(金)~8月12日(水)
第2期/2027年10月~2028年1月頃(期間確定後に公表)
主催:産経新聞社、TBS、TBSグロウディア、博報堂DYメディアパートナーズ、上野の森美術館
■巡回情報
第1期
神戸会場:神戸市立博物館 2025年9月20日(土)~2026年2月1日(日)
福島会場:福島県立美術館 2026年2月21日(土)~5月10日(日)
第2期
神戸会場:神戸市立博物館 2027年2月~5月頃(開催確定後に公表)
福島会場:福島県立美術館 2027年6月19日(土)~9月26日(日)
【公式ホームページ】https://grand-van-gogh.com/
タグ : レビュー・コラム
掲載: 2025年03月13日 09:42