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第38回 ─ 平井堅『Ken's Bar』、5周年のメニューは?

連載
360°
公開
2003/12/11   12:00
更新
2003/12/11   18:25
ソース
『bounce』 249号(2003/11/25)
テキスト
文/宮内 健

平井堅がマスターを務める〈Ken's Bar〉が音盤化! そのメニューは……!?


  平井堅が98年から定期的に続けてきたアコースティック・ライヴ――〈Ken's Bar〉。バーのマスター扮する平井が選曲したBGMをバックに、生演奏とトークを楽しんでもらおうというコンセプトのもとにはじまったもので、初期は目黒にあるジャズのライヴハウスで、わりと小じんまりと行われていた。

「お客さんとの距離も近いし、穴が空くような感じでこちらを見られているしで、ホント、いわゆるコンサート・ツアーのほうがラクって言ったらアレですけど(笑)。だけど、なんて言うか、練習の場みたいな感じもあって。たとえばちょっとジャジーな曲を歌いたいなとか、難しい曲を練習したいなとかいうときに切磋琢磨できる場であり、趣味的感覚で始めたものであり、でも非常に緊張する厄介なものであり(笑)。とにかく僕にとってすごく大切な活動のひとつですね」。

 その場でカヴァーした曲の数は、ゆうに100曲を超えるという。

「昔のほうが放ったらかしっていうか、ヘンテコリンな曲も相当やってましたよ。平気でトシちゃん(田原俊彦)の“ハッとしてGood!”とか歌ってたし。だけどあのときは僕が見てもわかるぐらいお客さんが引いてましたけどね(笑)」。

 そんなアイドル歌謡から、ジャズのスタンダードまで、洋邦ジャンル問わず、彼が愛してやまない楽曲を取り上げてきた〈Ken's Bar〉。その5周年を記念してリリースされるのが、コンセプト・アルバム『Ken's Bar』だ。

「ファースト・ステージは楽器1本、セカンド・ステージにはパーカッションなどが入って、ちょっとアップテンポになっていくという、いままでずっとやってきた〈Ken's Bar〉のスタイルと同じような流れにしたくて。そこに今回は1曲1曲、ミュージシャンを招き入れてみたんです」。

 そう、このアルバムにはレイラ・ハサウェイや坂本九(……!? 聴いてのお楽しみ!)といったヴォーカリストも参加しているが、特筆すべきは矢野顕子をはじめ、フアナ・モリーナ、ピーター・シンコッティ、ジェシー・ハリス、saigenjiと、シンガーとしても並ならぬ個性をもった面々が、贅沢にも楽器演奏のみで参加している点だろう。歌心を十分に知り尽くした彼らのプレイは、〈Ken's Bar〉という場の空気を、より濃密なものにしている。

 これまでの平井堅のオリジナル・アルバムとはまたひと味違う、リラックスした風合いのカヴァー曲集。グラスを片手にこのアルバムに耳を傾ければ、アナタの部屋も〈Ken's Bar〉になること請け合い……って、そんなベタい文句もすんなり受け入れてしまえるくらいナチュラルにムーディーな、永く愛されそうな作品だ。

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