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第40回 ─ Rケリー、Aハミルトン…いま男性ソロ・シンガーが熱い理由

第40回 ─ Rケリー、Aハミルトン…いま男性ソロ・シンガーが熱い理由(3)

連載
360°
公開
2004/01/29   17:00
更新
2004/01/30   14:35
ソース
『bounce』 250号(2003/12/25)
テキスト
文/bounce編集部

R・ケリーが導いた活況

――2003年の下半期、男性ソロのラッシュは凄まじいですよね!

JAM「女性ソロの大玉が目立ったけど、男性モノも1年通じて出てはいたんだよね。ただ、アンソニー・ハミルトンの登場をきっかけに見回してみたら想像以上に豊作だったな」

林「実際増えてきてもいるし、やっぱりR・ケリーが道をつけたと思うんですよね」

JAM「そうだね。アッシャーのような歌って踊れる総合的なポップ・スターみたいな感じでもなく、いわゆるシンガー・ソングライター系でもなく、単に歌の本質的な部分だけで勝負するシンガーたちがケリーに触発された結果なんじゃないかな」

――ケリーが逆境をハネ返したのは本当に曲の力だけですからね。

JAM「まあ、ケリーには天才的な才能があるわけだけどさ」

――ジニュワインからマーケス・ヒューストンまでプロデュース仕事も途切れなかった。

林「そういえば、R・ケリーがパイド・パイパー(ハーメルンの笛吹き)って名乗ってるじゃないですか。結果的にですけど、凄い示唆的ですよね」

――先導者とかいう意味ですよね?

JAM「ああ、それはおもしろい」
――先鋭性だけじゃなく、オーソドックスな面でもシーンを引っ張ってると。

林「レゲエもやって、ベタなバラードがあって、その間にある……“Step In The Name Of Love”みたいな路線があって。その路線を歌うべき人が出てこられる環境を整えたってことですね。ミュージック“Forthenight”とかも感触的には近い」

JAM「そうかも。マイケル・ジャクソン“One More Chance”のR・ケリー・リミックスもこれまた凄くてさ。“Step In The Name Of Love Remix”のグレードアップ版みたいな……ズルいよね、R・ケリーは(笑)」

――マイケルといえば、絶大なプロモーションでヒットしてますけど(笑)。

JAM「でもラジオは“One More Chance”とかかけるのパッタリ止めちゃうのな(笑)。つまんねえよ!」

――せっかくデカい話題なのに、もったいないですよね(笑)。まあ、ケリーは凄いということで。

とにかく同時多発!!

――で、さっきアンソニー・ハミルトンがきっかけだったと仰ってましたが?

JAM「アンソニーはカウンター的というか、開き直って歌バカな部分が功を奏したというか。全体的に土臭くて、1曲ごとがどうという感じじゃない、アルバムとして良い作品になっててさ。女性でいえばアリシア・キーズの新作に似た手応えがあったな。シングル狙いの曲が並んだコンピみたいな感じじゃなくて」

林「あからさまなウリの要素は少ない作品ですよね」

JAM「そう。しかも本国でそれが受け入れられてる。日本からだと見えにくいけど、風向きはそうなってきてるのかも、って感じた」

林「カルヴァン・リチャードソンとかもオールド・ソウルな雰囲気でしたね」

――彼らもそうでしたけど、ここ最近の男性ソロって、ハデな客演とかが少ないですよね。女性モノだとラッパー呼んでミッシー呼んで(笑)とか……。

JAM「(笑)公式はあるよね」

――こないだ1位になってたジェラルド・レヴァートなんかはまったく公式に当てはまらない、ただ〈俺の歌〉だけ、みたいな。今回挙げてる人はほとんど自分で音も作れる人ですけど。

JAM「モンテル・ジョーダンもそうだよね。彼みたいにやりたいことが明瞭で、セルフ・プロデュースの能力があれば、普通にああいう作品になるんだよな。そこに商売っ気とかを加えて、上手く時代と絡んでいくのがR・ケリーなんだけど」

林「結局R・ケリーですね(笑)」

JAM「デイヴ・ホリスターとかも近いかな。タンクと絡んでるのもいいし」

林「ジョーもそうですね。新作ではミュージックをずっとやってるカルヴァン・ハギンズ&アイヴァン・バリアスの仕事が良かった」

――そう思うと、ひと頃よりコマーシャル系とオーガニック系みたいなプロデューサーの区分けみたいなのもなくなりましたね。

JAM「完全にシャッフルされたね。ミュージックもいままででいちばん良かったしな」

林「ジェシ・パウエルみたいにメジャー・インディーでいい感じの人もいて、ヒューストンとかのインディーものも良くて、同時多発的でしたね」

JAM「ヒューストンといえばビリー・クックでしょ(笑)。アレはベスト10入り確実だよ!」
――世代的にもヴェテラン、中堅、新人、と幅がきちんとあったし。

JAM「新人だとハヴィエアも挙げないと。“Crazy”とか死ぬほどイイよね」

林「ケムも重要だし、ネタものだとラティーフも良かったし。こんなに充実してるのは凄いとしか言いようがないですよね」
そして、2004年は……

JAM「アリシア効果もあって2004年の上半期はまた女性モノが増えるんだろうけどね」

林「そうだ、女性モノといえば、デフ・ソウルの新人でK・フォックスっていう女性シンガーがいて……」

――関係ない話じゃないですか!

林「いや、彼女がシカゴの人で、シカゴ・ソウル使いの凄い曲があって。それで見渡すと、R・ケリーやデイヴ・ホリスター、マイク・シティ……とシカゴの薫りがする人が多い。2004年のR&Bはシカゴがキーワードになるんじゃないかな、って睨んでて……」

――関係ある話じゃないですか!

JAM「そういう地域性で見るとおもしろいんだよね。ネタ的なシカゴ流行りは、ビヨンセの“Crazy In Love”(シャイ・ライツ“Are You My Woman?”ネタ)がきっかけなのかもね」

――ジェイ・Zもネタ使いしてたし。

JAM「アヴァントもそうだし」

――カール・トーマスも出ますよね。ってことで、2004年はシカゴに注目!というオチでお願いします。