1989年
85年より活動を開始した東京スカパラダイスオーケストラ(以下:スカパラ)は、この年に初音源となる『東京スカパラダイスオーケストラ』をアナログ盤でリリース。翌90年にメジャーよりCD化された。
谷中(敦、バリトン・サックス)「この時がレコーディング初体験だったね。3日で5曲録ったっけ?」
川上(つよし、ベース)「3日で6曲だよ」
谷中「そうそう。今とやってること変わんないよな(笑)。今でもDJやる時にかけたりするんだけど、〈よくやったよなぁ~〉って思うアルバム(笑)。あの時確かレコーディングなのに、カッコつけた洋服着て行った気がする(笑)。あと、ASA-CHANG(P37のインタヴューもチェック!)が〈トイ・ドラム〉って変なドラムを組んで叩きまくってたな」
1990年
この年にメジャー契約。初のフル・アルバムとなる『スカパラ登場』をリリースした。ライヴでもお馴染みの“MONSTER ROCK”を含む13曲を収録。
川上「何も気負ってはなかった。だけどまず最初に〈CDかよっ!!〉ってみんな思ったよね?」
谷中「あ、それはあったね」
川上「その頃CDデッキを持ってるメンバーがいなかったし、〈なーんだ、CD出すのなんかつまんねぇ!〉って。だから、最初は結構テンション低かった(笑)」
谷中「“MONSTER ROCK”録ってるときのマーク(林)のギターが凄かったのをいまでも強烈に憶えてるよ」
1991年
この年、3枚目のアルバム『ワールドフェイマス』をリリース。また、スカパラ初となる武道館公演(写真右)にて10,000人を動員したライヴを成功させている。
川上「このアルバムは全員が曲作りに参加してる。ただ、いま思えば音楽性を広げすぎた」
谷中「いろんなことに挑戦してた時期だよね。吉本新喜劇とジョイント・ライヴしたり、ツアーでフランスに行ったのもこの頃だっけ?」
川上「そう。あと武道館ライヴも。俺は武道館でライヴやるのって、ロック・バンドみたいで当時はすごく嫌だったんだよ(笑)」
谷中「そういうこと言うあたり、川上らしいよ」
フリッパーズ・ギターの“クールなスパイでぶっとばせ”(90年作)のライヴ・テイクでは、スカパラ・ホーン隊がクール&スリリングに客演。
1993年

93年作『PIONEERS』(エピック)
この年にリリースされた4枚目のアルバム『PIONEERS』を最後に、バンマスだったASA-CHANGが脱退。それ以降、各々が場面ごとにリーダー的役割を果たすという現在のスタイルを確立することに。
川上「前作の反省を踏まえて、このアルバムではもう一度自分たちがやりたいことを絞り込んだ感じ」
谷中「ASA-CHANGの脱退もあったんだけど、レコーディングそのものはすごく充実してた。そういえば俺、このアルバムで初めて歌を歌ったんだよな」
川上「ああ、“Sweet Peach Qween”ね」
谷中「今聴くとアルバムのなかで思いっきり浮いてるんだけどさ(笑)」
川上「浮いてるねえ(笑)」
1994年
“HAPPY GO LUCKY”がスマッシュヒットを記録。その勢い冷めやらぬなか、5枚目のアルバム『FANTASIA』がリリースされた。
川上「音の録り方とかにめちゃくちゃハマってた時期だよね。リミッターとか大好きだったし。俺のなかでは〈リミッター時代〉って呼んでるんだよ(笑)」
谷中「本当にいろいろ試してたね」
川上「いまだにライヴでも演奏してる“Moments In Heaven”とか、録り終わったあとにディレクターの名村(武)さんやエンジニアの加納(直樹)さんと一緒に〈歴史的な音が録れた!〉って大喜びした記憶がある!」
1995年
当時フロントマンであったギムラこと故・杉村英詩の療養中に制作された通算5枚目のアルバム『GRAND PRIX』。小沢健二、キミドリ、石川さゆり、竹中直人、高橋幸宏、スリラーUなどを招き、豪華客演陣とスカパラ・サウンドの融合が聴ける貴重な一枚。
谷中「年末のツアーでムッシュ(かまやつ)とか(高橋)幸宏さんたちと共演する機会があったんだよね。そういう流れもあってコラボレーション・アルバムを1枚作ろうって」
川上「なかでも俺はスリラーUの歌の上手さに感動した。あれ聴いて〈負けてられないな〉って思った」
谷中「スリラーUと演った曲は、俺もいまだにDJでかけてるよ」
川上「バーナード・パーディーとのセッションも忘れられないな」
1996年
この年にリリースされたのが6枚目のアルバム『トーキョー・ストラット』。ケン・イシイ“EXTRA”の超絶人力カヴァーや、YMO“SIMOON”のカヴァーなど聴きどころの多い作品。
谷中「ケン・イシイとコラボレーションしたり、この頃はまたいろんなことを試しはじめた時期だったかもしれないね」
川上「YMOの“SIMOON”もカヴァーしてるし。まあ、これは俺と青木(達之)がヘヴィーなYMOオタクだっていうことも大いに関係してるんだけど(笑)」
谷中「“STARLIGHT EXPRESS”や“YOU DON'T KNOW(WHAT SKA IS)”とか個人的にも馴染み深い曲が多いね」
スカパラのほかに、ASA-CHANG、スチャダラパー、桜井秀俊(真心ブラザーズ)らが参加したブロンソンズ(みうらじゅんと田口トモロヲのユニット)のファースト・アルバム(97年作)。ここでご一緒した真心のデビュー15周年を記念したカヴァー・アルバムで、スカパラは“STONE”を粋にカヴァーしてます。

ブロンソンズのベスト盤『スーパーマグナム』(LD&K
1998年
この年にレーベルを移籍し、杉村ルイ(元ザ・ヘアー)をヴォーカルに迎えて7枚目のアルバム『ARKESTRA』をリリース。シングル“愛があるかい?”“Dear My Sister(Album Version)”を含む12曲を収録。
川上「やっぱりバンドにレギュラーのヴォーカリストがどうしても欲しいっていうので、声をかけたのが(杉村)ルイ」
谷中「ルイの加入で作風もかなり変わったよね。前の『トーキョー・ストラット』はほぼインストがメインだったのに、このアルバムでは半分ぐらいがヴォーカル曲になってるし」
川上「グループ内でも、最近すごく再評価されてるアルバムでもあるんだよね」
谷中「移籍一発目で気合いも入ってたしな」
87~91年までザ・ヘアーのヴォーカリストとして活躍した杉村ルイは、ギムラ(95年死去)の実弟であり、98年にスカパラ加入(同年脱退)。アルバム『ARKESTRA』は、ルイがスカパラ在籍時唯一の作品。以降、自身が主宰するレーベルよりソロ作を発表する。

Luiと旧友たちによるコラボレーション・アルバム『Independence Day』(B BIRD)
98~99年にかけて行われたツアー映像に加え、メンバーのインタヴューを盛り込んだ映像集。レーベル移籍、杉村ルイの加入/脱退、ドラマー・青木達之の不慮の死(99年)……さまざまな苦難を乗り越えるメンバーの姿が記されている。
スカパラ、ファンタスティック・プラスチック・マシーン、サワサキヨシヒロなどが集結した総勢14人からなる音楽集団SPEED KING。この面子からもわかるように、スカ、ジャズ、パンク、80'sディスコ調の曲があったりと、音楽性は実に賑やか。ディープ・パープル“Smoke On The Water”の自由奔放なカヴァーが白眉。