NEWS & COLUMN ニュース/記事

第103回 ─ サディスティック・ミカ・バンドをお客様に〈Ho!楽〉新連載がスタート!!

そして時は2006年、タイムマシンに乗ってやってきたミ〈カエラ〉・バンドからニュー・アルバムが届いたよ!!

連載
360°
公開
2006/11/02   19:00
更新
2006/11/02   22:10
ソース
『bounce』 281号(2006/10/25)
テキスト
文/桑原 シロー


 今年の春、突如としてTVCMにお馴染みの顔ぶれが現れて、“タイムマシンにおねがい”の演奏が始まった――89年の再結成当時、同じくTVCMにシングル“BOYS& GIRLS”が起用された際は、メンバーがブラウン管に登場していなかったっけ……。ミカ・バンドを語る時はどうもヴィジュアル部分に目がいきがちだ。再結成時は着物を羽織ったメンバーが広告などに登場してたけれど、今回はどんなヴィジュアルでくるのか?などと考えつつ再々結成アルバム『NARKISSOS』を聴けば、〈おぉ!〉と唸らせるロック・チューンが満載。奥田民生が歌詞を提供した“Sadistic Twist”では〈いかにも!〉といったシャッフル・ビートが飛び出したりもしてゴキゲン×2。それにしても、なんて伸びやかな演奏ばかりなのだろう。

「すごく難しい曲ってひとつもない。ただ、それを気持ち良く、良いグルーヴで演奏するというのが、実はもっとも困難なことだと思うんです。みんなが互いにやりたいことを知ってて、それを表現できる技術というかね……なんだろうな、センスというのかな、それを持っている。だから今回は本当に作為的なことはなにもしていないんですよ。演奏した音をそのまま録っているからね。だから、とてもナチュラルな音なんですけどね、でもなぜかロックしてる」(加藤和彦、ギター)。

 アルバムの音世界へ入る玄関には〈シンプルこそすべて〉と書かれた看板が掲げられているようにも見えた。久々におもしろい仲間が集合し、かつてよく確認し合っていた〈気持ち良さの生み出し方〉についてあれこれ相談し合っている様子が明確に音に表れている。先のTVCMが発端となってアルバム制作へと進んだ、というのが今回の再々結成の経緯だが、〈やればおもしろいかも〉という調子で出発した彼らは、やがて〈俺たちやっぱカッコイイ!〉という実感へと辿り着いたようだ。

「ふだんは全然バラバラの人たちが、このバンドに集まるとひとつのブランドになる。それぞれが役割をわかってるし、大人だしね。最初は始める前にいろいろあるんだけど、いざ始めちゃうと音楽だけに入れる」(小原礼、ベース)。

「ドラムをちゃんと叩いてみようかな、と思ったの。バンドのような形でみんなと〈せーのっ〉といった感じでは最近やってなかったしね。ドラムを叩くのはこれが最後というぐらい本気で叩いたから、結構スッキリした(笑)」(高橋幸宏、ドラムス)。

 さらに今回の注目点は、トノヴァンが直感で選んだという3代目ヴォーカリスト=木村カエラの存在だ。なお、メンバーからは〈歴代のヴォーカリストのなかでもいちばん歌がうまい〉とお墨付きをもらっているとのこと。そんな彼女も「きちんとそれぞれ生きているからこそ、集まると素敵な音楽ができる」と、年齢が倍以上も違う大人たちを絶賛。相思相愛の関係を結んでいる。

「〈ミカ・バンド的〉なるものの集大成ですよね。汗をかかないロックをやるミカ・バンドとしてのね」と加藤は語るが、リスナーは手に汗握らずにいられない! さらに高中正義の新作や、井筒和幸が監修したドキュメンタリー映画など、興奮は続く!

▼サディスティック・ミカ・バンド関連作品を紹介