
THA BLUE HERBが、2005年に発表した「THAT'S THE WAY HOPE GOES」以来となる映像作品「STRAIGHT DAYS: Autumn Brightness Tour '08」をリリースした。このDVDは2枚組仕様で、Disc-1では昨年秋に北は青森、南は鹿児島までを1か月に渡って縦断した計16本のツアーをドキュメントしている。そこにはすべての公演で前座を務めたNORTH SMOKE INGのメンバーや、PA担当をはじめとする最小限のスタッフとのツアーの日々(各地の関係者との交流や名産品を食べまくる姿、移動風景やみずから物販を運ぶ姿、リハやライヴのシーンもあれば、終演後の笑顔溢れる乾杯や悪ふざけまで)が収められ、監督の森田貴宏によって捉えられた、まさに素の表情、ありのままのリアルな瞬間を堪能することができる。
「いままでもDisc-1に収められているような側面を隠す気はなかったよ。俺らのそういう面を見せる媒体があったら見せていたと思う。ただ、これまでは(媒体側が)俺らについてもっと他に伝えるべきことがあったんだと思う。例えば、作品であったり姿勢であったり。そして、俺たちの姿勢とか思想は十分に伝えられてきたと思っている。それが好きか嫌いか、認める認めないは別としてね。俺らは順序立てて伝えていきたいんだ。だから次は俺らの人間性そのものもを伝えたい。やっとこういう領域に入ったんじゃないかな。まあ、どっちみちDisc-2があるからね。ある意味Disc-1みたいな人間が、Disc-2みたいなことをやる。それら全部で俺らなんだ。いままではDisc-2の側面だけがすべてと思われてたんだろうけど、実はDisc-1みたいな部分もある人間なんでね」(ILL-BOSSTINO、MC:以下同)。
そのDisc-2に収められているのは、ツアー・ファイナルを飾った東京・LIQUIDROOMでのライヴ映像だ。彼らがホームのひとつと呼ぶライヴハウスが、満員の観客で埋め尽くされた一夜。それが期待と緊張の混じり合った特別な時間だったというのも伝わってくるし、本ツアーのクライマックスというのもわかる。
「はっきり言って、ライヴは良い日もあれば悪い日もあった。俺らのコンディションもあったし。ただ全部の場所で全力でLIQUIDと同じセットをやってきた。そして、あのLIQUIDに辿り着いた。あれはよく出来たドラマになったと思うよ。最後のLIQUIDであんなにお客さんが集まってくれて盛り上がって。俺らの器を越えたストーリーだよね。今回のツアーはそこに導かれていったような感じ」。
観ているこちらが言葉を失うほどの、2時間に渡る壮絶なライヴ。圧倒的なステージングが、終盤には感動へと変わる。その証拠に終演後も拍手は止まず、客電がついてもまだ鳴り続けていた。
「俺らのことを信じてくれてきた人はたくさんいる。彼らを失望させないように、彼らが信じたものが間違ってないというのを証明するために、ライヴは責任持ってやっていきたいと思っている」。
いまやTHA BLUE HERBを、その名前だけなら知っている人も多いだろう。そしてそれぞれが風評、噂などから彼らのイメージをある種決め付けて、知った気になっているのではないか? 本編はそういう勝手な思い込みを壊し、その代わりにTHA BLUE HERBの生身の姿を見せてくれる。
「俺らは生身の人間で、いまだ出来上がっていないということを伝えたい。不完全な人間がどうやって完全な人間に近付こうとしているか、それがTHA BLUE HERBの姿だからさ」。
彼らは日々進化を続けている。それは新たなものを生み出す者の宿命かもしれない。ただ、変化しない点もある。それはどこか?
「愚直っていう言葉がツアー中、いろんな場面で出てきた。〈本当に俺たち愚直だよね〉って自虐的によく言ってた。ただ、今回のツアーは純粋に楽しかった。めいっぱい楽しめた。それがすべてだと思う」。
THA BLUE HERBの変わらないところ。それは真っ当なことをどこまでもシンプルに、そして誠実に行っていく姿だと思う。愚直にというよりは、正直。それが彼らの最大の魅力のひとつだ。
▼THA BLUE HERBの作品を紹介。