『Ticket To Ride』 A&M(1969)
ビーチ・ボーイズ愛丸出しのジャケも清々しいデビュー作。ほぼリチャードによるオリジナルで構成され、しかも5曲で彼のリード・ヴォーカルを聴くことができる。最初と最後に置かれたアカペラからは、いかに2人がハーモニーにこだわっていたかが窺えて興味深い。
『Close To You』 A&M(1970)
表題のバカラック・ナンバーが大ヒットを記録するなか発表された2作目。ビートルズ“Help!”は原曲と真逆のバラードに、ティム・ハーディン“Reason To Believe”もカントリー臭を排した都会的なA&M流儀のポップスに……といった具合に兄のアレンジ力が光っている。
『Carpenters』 A&M(1971)
〈バカラックのお抱え〉的な触れ込みもあって、この3作目では怒涛のバカラック・メドレーが用意されている。そんな御大の難しい旋律を悠々と歌いこなす様に、カレンの腕前が見え隠れ。“Superstar”が妙に禁欲的に聴こえてしまうのも、陰のある声あってこそ!?
『Now & Then』 A&M(1973)
ジャケのアメ車に象徴されるように、〈豊かなアメリカ〉が描かれた5作目。ラジオ・デイズを懐かしんだ“Yesterday Once More”からの流れが素晴らしく、シフォンズやクリスタルズの名曲がキラキラとした歌声で蘇る。ベスト盤では味わえない構成力に唸らされる一枚だ。
『A Kind Of Hush』 A&M(1976)
ビッグバンド風の“Can't Smile Without You”や凝ったコーラス・ワークを披露する“Sandy”など、ゴージャスで洗練された〈らしさ〉炸裂の7作目。儚げなフルートの音色と歌声が心を揺さぶる“I Need To Be In Love”にはアルバート・ハモンド(父ストロークス)も関与。
『Made In America』 A&M(1981)
バカラックら黄金期を支えた面々とふたたび組んだ一枚で、カレン存命中の最終作。兄は睡眠薬中毒、妹は拒食症、セールスは下降線と状況は最悪だが、潮風の似合うAORから軽快なカントリー・ポップまで、爽やかなサウンドに負の要素は見当たらない。