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JOYSTICKK

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NEW OPUSコラム
公開
2010/06/21   19:48
更新
2010/06/21   19:48
ソース
bounce 321号 (2010年5月25日発行)
テキスト
文/吉橋和宏

 

ふたたび表舞台にカムバックしたウェッサイのスターが初のアルバムを発表! 遅れてきたラッパーの決意とは?

 

JOYSTICKK -A1

 

ホームグラウンドとする宇都宮はもちろん、東京/横浜を含めた関東全域をベースに活動するJOYSITCKKは、81年生まれの28歳。みずからの音楽ルーツたる、いわゆるウェッサイ・シーンの現場で圧倒的な支持を得ているラッパーである。28歳でのデビューは遅咲きとも言えるが、そこにはひとつ大きな理由があった。

2006年のリリース以来いまもなお高い人気を誇るKalassy Nikoff(a.k.a. AK-69)の名曲“Honey Bee”を筆頭としたいくつかの客演仕事と数多の地下現場でこなした精力的なライヴによって、ある時までJOYSTICKKの名は順調に浸透していった。だがしかし、ラッパーとして良い流れに乗ったと思われた矢先に彼はとある事件を起こして逮捕・収監されてしまったのだ。

その後、約3年半にも及んだ刑務所生活は償いと後悔の日々だったようだ。高くそびえ立ったコンクリート塀の内側で見る雑誌には、夢へと向かい邁進していくかつての同志たちの姿……。取り残されてしまう不安と焦りを抑えながら出所の時を迎えた彼はすぐさま作品の制作に取り掛かり、自身の囚人番号〈645〉をタイトルに冠した今回のファースト・アルバムにすべてのフラストレーションをぶつけたのだった。決して〈悪さ自慢〉ではない。自分自身すら見失っていた当時から更生し、生まれ変わった自分をリリックへと投影した本作に『No. SIX FOUR FIVE』というタイトルを付けることで戒めとしたのだ。とはいえ、牙を抜かれてしまったワケではないことがしっかり窺える人間的なリリックにはニヤリとできる。

AK-69、DESTINO、DJ FILLMORE、GIPPER、HYENAら、JOYSTICKKの復活を心待ちにしていた同志たちも客演として新たな門出に華を添えている。本人不在の間もシャウトアウトされ続けた〈JOYSTICKK〉という名に恥じぬよう、彼はもう一度胸を張って歩みはじめる。このアルバムは、遅れてきた新人ラッパーによるその決意表明なのだ。

 

▼JOYSTICKが参加した作品を紹介。

AK-69 a.k.a.Kalassy Nikoffの2006年作『REDSTA -The Melodizm-』(MS)

 

▼関連盤を紹介。

左から、AK-69の2009年作『THE CARTEL FROM STREETS』(MS)、DJ FILLMOREのミックスCD『AZIAN RAPSTA MIXXXED BY: FILLMORE』(ユニバーサル)、DJ RYUUKIの2010年作『Conspiracy』(ラストラム)、S567の2009年作『THE WORKS』(EXIT LINE)

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