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SONOMIとKREVA

KREVA

連載
360°
公開
2010/09/24   18:57
更新
2010/09/24   18:57
ソース
bounce 324号 (2010年8月25日発行)
テキスト
文/轟ひろみ

 

こちらもアイじゃなくY? 新作『OASYS』が早くも到着!

 

ドリーム~カニエ~ドレイクあたりとのシンクロも感じさせる、スムースな歌モノ感覚を掌中に収めて登場した『心臓』は、改めて振り返るまでもなく、恐ろしく完成度の高いKREVAの最高傑作だったと思う。〈もはやヒップホップの枠を超えて~〉といった陳腐な決まり文句すら必要ないくらい(そもそも枠を超えるのがヒップホップである)、あるいはどう呼ばれようが何の問題もないほどのクォリティー・ミュージックがそこにはあったのだ。

それと並行して外部でのプロデュース活動やコラボも当然のように賑やかになっており、昨年から今年にかけては、『心臓』にも参加した古内東子との“スロウビート”を筆頭に、三浦大知やCOMA-CHI、久保田利伸、SEEDA、Crystal Kayといった面々との手合わせで存在感を発揮。先日もDJ HAZIME仕切りの“I REP”でDABOとAnarchyを相手にストロング・スタイル全開のラップを聴かせ、改めてMCとしての優性も見せつけたばかりだ。そんなわけだからKREVAの次なる一手がどうなるのか気になっていた人も多いと思うが、〈サマソニ〉をはじめとする精力的な夏フェス出演などを展開しながら完成されたのが、このたび届けられる新作『OASYS』だ。

今回は全8曲入りのミニ・アルバムという体裁になる。サウンド面では『心臓』の延長線上にあるアトモスフェリックな音像が気持ち良く貫かれていて、冒頭にイントロ的に配された“道なき道”からは、よりビートそのものの気持ち良さに重きを置いたような印象も受ける。すでにライヴで披露されているという“かも”も、世のつぶやきを〈まずはそれ言葉にする必要があるかどうか考えな〉と刺す“最終回”も、リリックに寄りすぎるのではなく、メロディーやフロウや声色も含めたサウンドスケープ全体でトータルな聴こえの快さを作り出すものだ。

そして、そのような〈サウンド志向〉が極まるのは、なんとYOUNG PUNCHのカヴァーとなる“エレクトロ・アース・トラックス”で、ここでは古めかしいヴォコーダーのようなロボ声で朗々と歌を披露している。しかも、夕暮れ時の眩しさが目の前に浮かんでくるような“Oasys”はフュージョン風味のインスト・チューン。こうなるとSONOMIがフックを担った“たられば”における〈普通〉のラップがトリッキーに思えるほどだ。で、変化していく自身を〈変わりゆく変わらないもの〉と歌う“Changing Same”がそこに用意されているのも周到すぎる?

この野心的な仕上がりは、残暑のシーズンを迎えるリスナーにとってのオアシスなのか、あるいはリラックスしてくつろぎたいKREVA本人にとっての癒しなのか、ミニ・アルバムならではのイレギュラーな遊びなのか、以降の方向性をハッキリと指し示すものなのか……今後の展開がさらに楽しみになってきた。

 

▼関連作を紹介。

左から、KREVAの最新DVD「KREVA CONCERT TOUR "09-10"「心臓」ROUND3 横浜アリーナ」、KREVAの2009年作『心臓』(共にポニーキャニオン)、古内東子の2010年作『PURPLE』(tearbridge)、三浦大知の2010年作『Who's The Man』(SONICGROOVE)、DJ HAZIMEのミックスCD『Manhattan Records THE EXCLUSIVES JAPANESE HIP HOP HITS』(Manhattan/LEXINGTON)