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CHROMEO

連載
360°
公開
2010/10/20   15:30
更新
2010/10/20   15:30
ソース
bounce 325号 (2010年9月25日発行)
テキスト
文/轟ひろみ

 

クローメオのダンディーな魅力を徹底解剖だよ

 

 

80年代リヴァイヴァルという言葉がかまびすしく囁かれ出したのは、思えば2000年代初頭のことでした。そうやって10年が過ぎてみると、80年代のフレイヴァーを強調したり意識したムードは少なくとも音楽シーンにおいては常に顕在化されていたわけで、あるいはそれこそが(80年代じゃなく)2000年代固有のモードだったのでは?とも思えてくるほどです。ただ、さまざまな形で80年代マナーが出てこようとも、それらは主にエッジーでファッショナブルな側面だけを強調したり、キッチュな部分にのみ焦点を当てていたりして、格好つけすぎ具合が格好悪くて格好良いような、往時らしい大衆性を巧く復古できている人はそういませんでした。そこでスポットライトを浴びせたいのが、本稿の主役たるクローメオであります。

カナダはモントリオールで結成されたクローメオは、メガネで痩身のデイヴ・ワン(ヴォーカル/ギター他)とガチムチ体型のP・サグ(トークボックス他)が組んだコンビ。両者はティーン時代からの親友同士で、同じようにMTVを観て育ち、同じようにヒップホップにハマって音楽活動を始めたそう。今回の新作『Business Casual』は彼らにとって3枚目のオリジナル・アルバムとなります。これまでの作品でも奇を衒わずにエレクトロの意匠でポップセンスを磨き上げてきたクローメオではありますが、今回はよりいっそう趣味の世界を追求して、ソフトなアナログ・シンセやヴォコーダーという従来の持ち味をより大衆的なポップ・サウンドへと飛躍させているのです。

ここにある〈80年代〉は、単にファッショナブルな記号ではなく、不思議と自信たっぷりな格好つけすぎ具合が格好悪くて格好良い、ひたすら楽しいユーモアで満たされたもの。それをあくまでも懐古的ではなくモダンに響かせるのもこの才人コンビの腕前とフィリップ・ズダールのエンジニア手腕ならでは。リアルタイム派もそうでない人も、『Business Casual』から弾け飛ぶエレガントでセクシーなビートに打たれたら……間違いなく心のなかでムダにデカいサングラスをかけて、肩幅を広げてクールなフリで踊り出してしまうことでしょう。

 

▼クローメオの作品を紹介。

左から、2004年作『She's In Control』、2006年作『Fancy Footwork』、同作の豪華2枚組ヴァージョン『Fancy Footwork: Deluxe Edition』(すべてTurbo/Vice)