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【第3回】――ダニー・ハサウェイ

連載
ハマ・オカモトの自由時間
公開
2011/11/16   00:00
更新
2011/11/16   00:00
ソース
bounce337号 (2011年10月25発行号)
テキスト
構成/編集部


ハマ・オカモト先生が聴き倒しているソウル〜ファンクを自由に紹介する連載!





【今月の課題盤】 DONNY HATHAWAY 『Live』 Atco (1972)

マーヴィン・ゲイの『What's Going On』を紹介した前回を読んでくれた人はより楽しめると思うのですが、今回はダニー・ハサウェイの『Live』を紹介します。この方は70年代ニュー・ソウルの代表的なシンガーの一人で、同時代のマーヴィンやカーティス・メイフィールドと並んでゴン甘(スウィートな感じ)からゲットー(悪くてダメな感じ)な歌まで幅広く、怪しい雰囲気もありますが、でもどこかピースなムードを持つ歌手だと思います。79年に33歳で亡くなるまでオリジナルは3作あって、ロバータ・フラックとのデュエット作も有名。ですが、ダニーを初めて聴いたのが『Live』だったので、僕にとっては数あるライヴ盤のなかでも最強だと思って挙げてみました。良すぎて笑っちゃうことがよくあるんですけど、これがまさにそれ。映像を観なくても、ツバが飛んでくるような勢いや小さい会場で暑いし臭かっただろうなっていう雰囲気が感じられるし、バンドとお客のノリが一体となって曲が展開していく様子がすごく伝わってきて、本当のライヴ・アルバムとはこういう作品のことじゃないかと思わされます。71年に2か所で行われたライヴから収録されていて、1曲目はなんと“What's Going On”! 原曲がリリースされてたぶん半年も経っていない頃なのにもうカヴァーしていたんですね。いまの時代だとオリジナルのリリースから間もない時期にカヴァーされて、しかも盤になるなんてことはほとんどあり得ないですけど、それがこれほどのクォリティーで実現してしまうとは……。もう本家越えレヴェルのアレンジ。僕らはカヴァー曲を演るにあたっては本家の良さを残しながらもそれに負けないものを、というのを大事にしているんですが、まさにそういう感じなんです。これカヴァーなんだ!ってビックリするほどの完成度で、本家とはまた全然違う良さがあるんですよね。

あと、ダニーがバンマスとしてグイグイとバンドを引っ張っていくところも聴きどころですが、僕的にはベースを弾いてるウィリー・ウィークスに注目したいところ。のちにドゥービー・ブラザーズとか多くのアーティストをサポートする世界的なセッションマンとして有名になる人で、最近はエリック・クラプトンのバック・バンドでプレイしていますが、この頃はまだ駆け出し。なのに、ここで最後に収録されている“Voices Inside(Everything Is Everything)”では3分くらいのベース・ソロを披露しています。バック・バンドのメンバーがそこまでフィーチャーされるのは当時革新的なことだったらしいし、演奏もすごいので聴いてみてください!



PROFILE/ハマ・オカモト

ハマ・オカモト OKAMOTO'Sのヒゲメガネなベーシスト。最新作『欲望』(ARIOLA JAPAN)が好評リリース中。10/26(水)にジュンスカ×ユニコーン公演のオープニング・アクトとして登場するほか、各種イヴェント出演も。詳しくは〈www.okamotos.net〉へ!