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SQUAREPUSHER

ニュー・アルバム『Ufabulum』が告げる、スクエアプッシャーの現在地とは……

連載
360°
公開
2012/05/02   00:00
更新
2012/05/02   00:00
ソース
bounce 343号(2012年4月25日発行)
テキスト
文/青木正之


Squarepusher_A4



90年代中頃に登場してからというもの、突拍子もないアイデアを散りばめた曲を次々と生み落とし、エレクトロニック・ミュージックを前人未到のステージへと引き上げたスクエアプッシャーことトム・ジェンキンソン。彼はインスピレーションを重視する制作スタイルのようで、作品ごとにガラッと音の傾向が変わるなんて朝飯前だから、彼の音楽を追いかけてきた人は、何度驚かされたかわからない。そんな天才肌の彼は2010年、突如バンドを率いたショバリーダー・ワン名義で登場し、ヴォコーダー・ヴォイスを全編で聴かせるメロウなエレクトロ作品をリリースしてドギモを抜いた。しかも先行シングル“Cryptic Motion”はエド・バンガーからの発表という念の入れようで、われわれ凡人には想像できない展開に、唖然と立ち尽くすしかなかったのですね、あの時は……。

その衝撃から2年、今度はどんなサウンドでくるかと身構えていると、拍子抜けするほどストレートな、〈これぞスクエアプッシャー〉と言う新作『Ufabulum』を引っ提げて帰還。アルバムには彼を語る際に用いられるキーポイント——ドラムンベース/ジャズ/IDM/アシッド——といった成分がたんまり注入され、歪に、大胆に、そして緻密にそれらを組み合わせて構築した楽曲がズラリ。2作目『Hard Normal Daddy』を彷彿とさせる際立ったメロディーも特筆すべき点で、過去作で美麗なメロもたびたび挿入してきた経歴があるとはいえ、一歩間違えばトランスの域にまで踏み込むドラマ性と昂揚感を持ち込むとは——と、ここまでなら原点回帰という解釈もアリだが、なんと本作は全曲に映像が付けられているそう。とはいえ現時点での資料は音源のみなので、足りない部分はライヴで補完するしかない。本誌が出る頃には終了している〈SonarSound Tokyo〉でのパフォーマンスを、1人でも多くの人が観ていることを祈りましょう。でないとパーフェクトな理解ができないんですよ!



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