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electraglide 2012

ANDREW WEATHERALL

連載
360°
公開
2012/11/07   17:59
更新
2012/11/07   17:59
ソース
bounce 349号(2012年10月25日発行)
テキスト
文/小野田雄


新たなユニットでの新作を土産に、不良番長が〈エレグラ〉に帰ってきた!



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ここ数年来、ジャンルの横断というより、内在する音楽を同時に鳴らしているかのような、そんな音楽性を自身のパーティー〈A Love From Outer Space〉で熟成させてきたアンドリュー・ウェザーオール。その一晩のプレイを凝縮した3枚組ミックスCD『Masterpiece』を今年4月に発表した彼が、フロアでの実験をオリジナルで実践するべく、英国の3人組バンド、バタントのティモシーJ・フェアプレイと新プロジェクト=アスフォデルズを結成。その待望のアルバム『Ruled By Passion, Destroyed By Lust』が日本先行で到着した。

「そもそもは自分のパーティーでプレイしたい曲が足りないことへの不満が今回のアルバムの始まりだったんだ。かけたい曲がないなら自分たちで作ってしまおう!と思ったのさ」。

最初期のアシッド・ハウスやニュー・ビートから抽出したBPM120のスロウ・グルーヴ。その空間の活かし方はクラウトロックか、はたまた、ミニマル・テクノの影響か。ダブやスペース・ディスコを想起させるベースラインに、シンセサイザーの浮遊するレイヤーはシンセウェイヴ世代をも直撃し、リヴァーブがかったギターの響きはロカビリーやサイケ、ガレージとその時々で刻々とニュアンスを変える。そして、2004年以降の作品で彼が取り組んできたポエトリー・リーディングを彷彿とさせるヴォーカルも健在であるが、よく知っているような、しかし、間違いなく新境地を切り開くダンス・トラックには、時代を牽引してきた者のみの知る秘密がある。

「昔の詩人の言葉で〈ファッションとは自分自身のスタイルを築けるまで続けるものだ〉というものがあるんだけど、正しいと思うね。ある年齢を越えても最新トレンドを追い続けるのは滑稽に見えるよ。そして、オリジナリティーを実現させるならオリジナリティーを求めちゃいけない。自分に素直なままでいること。そして、〈誰も聴いたことがない音楽を作ってやる〉なんて力まずに、技術とか感情とか原動力にこだわること。心のこもった音楽がいちばん聴く者の心を揺さぶるんだよ」。

そんな彼が心と身体を揺さぶる音を携えて、〈electraglide 2012〉で来日を果たす。 「観客の数は200人だろうが2万人だろうがあまり関係ないんだ。自分の前と後に出るDJが誰なのか、自分の出番が何時なのかわかればそれでいい。もう20年以上もDJを続けてきたことは幸運なものでね、みんなに認めてもらわきゃなんて気はいまさら起きないんだ。だから、今度の〈electraglide〉でも出番が来たら、やるべきことをやって、後はみんなと同じくイヴェントを楽しむまでさ」。



▼アンドリュー・ウェザーオールの関連盤を紹介。

左から、2009年作『A Pox On The Pioneers』(Rotters Golf Club)、2012年のミックスCD『Masterpiece: Created By Andrew Weatherall』(Ministry Of Sound)、ロクスソルスのリミックスを収めたコンピ『International Feel A Compilation』(International Feel/MUSIC 4 YOUR LEGS)