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第11回――【今月のレポート盤】SONIC YOUTH 『Smart Bar, Chicago 1985』

連載
ろっくおん!
公開
2013/02/18   11:30
更新
2013/02/18   11:30
ソース
bounce 351号(2012年12月25日発行)
テキスト
構成/もつ煮込み


ロック好きの大学生が集まって放課後タイムにダラダラおしゃべり! 専攻科目よりも皆さんロック史の研究に夢中なようですね!!



【今月のレポート盤】SONIC YOUTH 『Smart Bar, Chicago 1985』

2012年も残すところ数日となった年の瀬。ここはT大学キャンパスの外れに佇むロック史研究会、通称〈ロッ研〉の部室であります。冬休みで人影もまばらですが、部室では大掃除が行われているようですよ。

仲木戸英治「フライヤー類はまとめて紐で縛っておいてくれ、後で捨てるから」

生麦 温「……あのエージさん、大掃除だと聞いて駆け付けたんですけど、僕たちだけですか?」

仲木戸「仕方ないだろ、みんな帰省しちゃったんだから。でももうすぐ汐入が来るはずだ」

生麦「ジョンは? 実家通いでしたよね!?」

汐入まりあ「おはようございます。遅れてすみません! それより最新号のbounceを読みました? 信じられない!」

仲木戸「どうした、プンプンして」

汐入「〈Opus Of The Year〉の編集部が選ぶ50枚に、どうしてソニック・ユースが入っていないんですか! 私なら1位にします! だいたい毎年ロックに厳しくないですか?」

仲木戸「今回はそんなこともないだろう。まあ、〈ロッ研〉が選んだらだいぶ違う並びになっただろうね。で、サーストン・ムーアとキム・ゴードンの離婚をきっかけに2011年後半から活動休止しているけど、各メンバーの動きは盛んだったな」

生麦「キムとサーストンとオノ・ヨーコのコラボ盤とか、リー・ラナルドのソロ作とかですよね」

仲木戸「ドラマーのスティーヴ・シェリーもM・ウォードの『A Wasteland Companion』に全面参加していたし」

汐入「それにサーストンは新バンドのチェルシー・ライト・ムーヴィングで初シングルを配信したほか、来日もして相対性理論とライヴ共演しましたよね! 私、観に行きました!」

生麦「でも、本隊自体は何もリリースしていなかったけど……」

汐入「それがあるんです! 見てください!」

生麦「え、『Smart Bar, Chicago 1985』!? 何これ?」

汐入「85年に行われたUSツアーのライヴ音源がオフィシャル・リリースされたんです。演奏も近年に比べてずっと破天荒というか、攻撃的でカッコイイんですよ」

仲木戸「なるほどね、インディー時代の名作『Bad Moon Rising』と同年ってことは期待できるな。しかも“Kat 'N' Hat”は音盤化されたことのない曲だぜ。これは凄いな」

汐入「初期の主要曲はほぼ収録されていますし、ジャケも雰囲気ありますよね」

生麦「お茶でも飲みながら聴いてみましょうよ」

仲木戸「そうだな、いったん休憩。そういえば、この1年はソニック・ユース以降に現れたグランジ/オルタナ勢が元気だったな」

汐入「ダイナソーJrやジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョン、それにサウンドガーデンもアルバムを発表しましたよね」

仲木戸「スワンズも忘れちゃいけないな。このライヴ盤の頃のソニック・ユースやスワンズは当時〈ジャンク〉と呼ばれていたんだ」

生麦「はい、お茶どうぞ。ヴェテランの活躍も嬉しいですけど、ア・プレイス・トゥ・バリー・ストレンジャーズやブラッド・レッド・シューズ、あとユアーズとか、彼らのチルドレンとも言うべきバンドの活躍も目立った年ですね」

汐入「シューゲイザーで括られがちですけど、私的にはリンゴ・デススターもそこに加えていいと思います」

仲木戸「最新作はアグレッシヴだったもんな」

生麦「何だかこうやって話していると、ソニック・ユース関連だけで今年のロック・シーンの半分くらいが語れちゃう気がしますね」

汐入「そうなんですよ! だからやっぱり〈Opus Of The Year〉は納得いかない!! 私、編集部に手紙で抗議します!」

仲木戸「汐入がムキになるなんて、お前も意外と子供っぽいところがあるんだな~」

汐入「ム、ムキになんかなっていません! それに来年は2年生になりますし!」

仲木戸「おお、そうだよ。これからの〈ロッ研〉をよろしく頼むぞ。青春は音速で過ぎていくからな……」

汐入「え?」

仲木戸「いや、こっちの話。さてと大掃除の再開だ! 終わったら3人でプチ忘年会をやろう、俺が奢るぜ」

生麦「残り1000円で年始までやりくりしなきゃいけなかったんで助かります!」

モコやジョンがいないからか、脱線もせずにマジメな音楽トークで弾んだ年末の〈ロッ研〉でした。さてさて、2013年はどんな年になるのやら。【つづく】

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