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(第13回)新しい扉

連載
BO NINGENの人生一度きり
公開
2014/02/28   17:30
更新
2014/02/28   17:30
テキスト
文/Taigen Kawabe(BO NINGEN)


ロンドン在住のバンド・BO NINGENが、現地の音楽やアートにまつわるあれこれを紹介する連載! 今回はヴォーカル/ベースのTaigenが、オーストラリア各地を回った〈ビッグ・デイ・アウト〉での出来事(後編)と、記録的な大雪の日に行われた東京公演を含む来日公演の模様をレポートしてくれます!



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自分がいまどこにいるのか。
夜見る夢は、現実の制限を越えて場所も人も混ぜてくれますが、それゆえに夢から覚めた時の錯乱が少し悪化してきている、今日この頃です。

ロンドンに帰ってきました。
空港から自宅に向かう車の中、1か月も離れた気がしないね、とYukiと話しました。

さて、まずは前回のKohheiから受け継ぐ形で〈ビッグ・デイ・アウト〉を中心にしたオーストラリアでのお話。
彼は〈夏休みの帰り道のような、ノスタルジックな感覚〉と例えましたが、まさにその通り。

景色と気温、緯度までがイギリスと真逆すぎて、一瞬で〈Real〉が〈Surreal〉になりました。 到着したホテルの部屋から見える景色は、マグリットの作品のなかに放り込まれたかのようで、次の土地に移動するまで浮遊感が取れなかったものです。



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ゴールド・コーストでの海の景色、夏休み感はKohheiが十分にレペゼンしてくれたので、僕はその後のメルボルンから始めましょう。

メルボルンは、前日に泊まった海の目の前にあるホテルから一転、都会の真ん中にあるホテルです。到着早々、出待ちの女の子からドラマーのMon-chanがスティーヴ・アオキにガチで間違われるというアクシデントから始まった波乱のスタート(ただの喜劇になってしまうので大幅に省きますが、オーストラリア滞在中、冗談ではなく100回以上は訊かれておりました。にょほほ)。



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間違われた直後のMon-chan、一同爆笑



そんなMon-chanですが、メルボルンのライヴ翌日の朝、〈屋上のプールに行ってくる!〉といって部屋を後にしました。

そして30分後、お部屋に帰ってきて発した第一声が、
〈鳥を持ってきたよ〉
手に何か持ってるな、羽?と思ったら、
鳥そのものでした。



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22階のプールがある階のエレベーターまで迷い込んでしまったところを、救出してきたと言うのです。流石、過去に何十羽という鳥を飼っていた経験があるお方です。

迷い鳥は無事、部屋の窓から飛び立っていきました。



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この写真を怖いと見るか優しいと見るか



鳥を助けた翌日はシドニーにてライヴ。この日は共演者のステージをいっぱい観よう!と決めていたので、まずはテイム・インパラをチェック。 いなたさと新しさの隙間を縫うようなサイケ・ポップ、しかも予想外にプログレ色なんかも感じられ、非常に素晴らしいライヴでした。後日、楽屋エリアで仲良くなっていろいろ話したところ、彼らはもともと実験的なサイケ・ジャム・バンドで、僕たちのライヴを非常に気に入ってくれたとのこと。今度何かいっしょにやれたらいいね!との言葉、実現できたら良いな。

自分たちのステージを終え、ツアー・マネージャーの厚意によりスヌープ・ドッグ(a.k.a.スヌープ・ライオン)のライヴをサイド・ステージから観れることに。



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うっすら写り込む山のようなバウンサー



おそらく人生で見た人類のなかでいちばん巨大であると断言できる、山のようなバウンサーがいたりして、人生史上いちばん緊張したステージ袖体験でありましたが、ライヴはめちゃくちゃ良かったです。最高のエンターテイメントでありました。

その後でデフトーンズとメジャー・レイザーをチェックして、ホテルへ帰還。デフトーンズは“ My Own Summer”が聴けただけで、青春の一部を回収できました。



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デフトーンズです、写真ブレブレ



翌日はオフ、マンレイ・ビーチに観光に出掛けた後。



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個人的にはメイン・イヴェントである、プライマスのサイド・ショウを観に出掛けました。

プライマスは、僕のなかでの〈第1次ベース革命〉を起してくれたレス・クレイプール先生率いるバンドであり、 高校時代に初めて聴いた時は、それはそれは衝撃的で――プライマスについて書くと長くなりすぎるので=まとめますと、大好きすぎて、高校生の時にコピバンまでしたことがあるほど好きなバンドだったんですね。

しかし僕が渡英した年に〈フジロック〉で来日、それからもなかなかイギリスには来ず、来たと思ったら僕たちも日本ツアーで観れず……。今回の〈ビッグ・デイ・アウト〉も、まさかの出演時間が被るというすれ違いっぷり。行きの飛行機の中でタイムテーブルを聞かされた筆者は、結構ガチでうなだれたものです。

そこで、楽屋エリアにいたレス先生に勇気を持って話しかけて思いの丈をぶつけたところ、〈シドニーでサイド・ショウがあるから観にきなよ!〉と、この日のライヴの存在を知ったわけです。

そしてレス先生、良い人でした。好きなアーティストに優しくしてもらったら一生忘れません。それは僕がプロレスとかアイドルからも学んでいるところではあるのですが、何かそれを再確認させられました。



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ステージは3時間にも及び、お腹いっぱい。感動と共に〈生バンドにおけるベースとドラムのリズム、グルーヴ、音の組み合わせの可能性〉を改めて思い知らされまして、大変な刺激になりました。ありがとうレス先生。ライヴ後、先生にお礼を言ってホテルへ帰還。

途中のホテル近くの公園で、ポッサム見ました。最初猫かと思った。

その翌日にはトロ・イ・モワの同じくサイド・ショウを見学。メンバーが僕たちのライヴを非常に気に入ってくれたらしく、ホテルで声をかけてくれて知ったこのサイド・ショウだったのですが、こちらもなかなかどうして素晴らしいバンド。観ていて自然に笑顔になり、飽き症の筆者もずっと観ていたいな、と思うステージでありました。音源もライヴも抜群にオススメです。

今回、オーストラリアの自然に触れて心身共にリラックスできたことに加え、このように共演したバンドと仲良くなったり、普段ヨーロッパで共演する機会のないアメリカ/オーストラリアのバンドの演奏に触れられたのが、個人的にはとても大きかったです。リズムの感じ方とか、あきらかに違いますし、観ているだけで自分の使っていなかった神経が活発になる感じ、というのでしょうか。

その後も灼熱のアデレード、終着地点のパースと、〈ビッグ・デイ・アウト〉は続き、ありがたいことに各地で良き反応もいただき……。



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オフの日の描写が多かったですが、筆者もちゃんと演奏しております



われわれのオーストラリア初体験は本当に素晴らしいものになりました。 また絶対にすぐ帰ってくることを約束しつつ。



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今回の心残りはカンガルーに会えなかったこと。次回こそ必ず!



パースからシドニーへ戻り、偶然、同時期にシドニーにいたサヴェージズと夜ご飯をいっしょに食べ、〈Mon-chanスティーヴ事件〉を酒の肴にオーストラリア最後の夜は更けていきました。



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