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第15回 ─ club Teenage Symphony 03@渋谷CLUB QUATTRO 2003年8月7日(木)

連載
ライヴ&イベントレポ 
公開
2003/08/14   20:00
更新
2006/01/19   18:37
テキスト
文/ヤング係長

「いつまでも新鮮なポップ・ミュージックを提供すること」を活動の指針としている良質レーベル、Teenage Symphony主催のイベント、〈club Teenage Symphony 03〉。3回目となる今回は、セロファン、ゲントウキ、無頼庵、bonobos(ボノボ)、ANATAKIKOU(オープニングアクトで登場)が出演した。

トップバッターはセロファン。デビュー当時は〈良心的ギターポップ・バンド〉というイメージがあった彼らも、キャリアと共に進化を重ね、今やすっかり骨太なライヴ・バンドに。この日も芯のあるグルーヴィーな演奏を披露してくれた。曲間に見せたジャム・セッションでは、クラクラするほど厚みがある音が会場に充満していた。そんな貫禄すら漂う彼らの新作『SUMMER GARDEN -Both Sides Now e.p.-』は、収録曲の半分がライヴ演奏という変わった構成になっているので、彼らのライヴ未体験の方はそちらもぜひ。


ゲントウキ 左から笹井享介、田中潤、伊藤健太

続いての無頼庵は、アコギの弾き語りを中心に、パーカッション&キーボードを加えた小編成での登場。堀内章秀の、シンガーとしての本質を剥き出しにしたようなてらいのないボーカルに、彼の表現者としての真摯な態度が伝わって見えたように思う。

3番目の出演者はゲントウキ。メロディーのポップさと楽曲構成力が出演4バンドの中では最も優れたバンドだろう。が、当日は出音のバランスがいまいちだったこともあってか、バンド本来の持ち味であるコントラストの妙をいまひとつ欠いた場面が何度か見られたように思う。繊細であるがゆえの線の細さをどう克服するのかが、このバンドの課題なのかもしれない。


bonobos 上段左から松井泉、蔡忠浩、下段左から森本夏子、佐々木康之

そして、なんといってもこの日のベストにして最も驚かされたのがトリのbonobosだ。5月にリリースされたシングル“Headphone Magic”では、伸びやかで浮遊感のあるヴォーカル、偏愛に満ちた一筋縄ではいかないリズムに確かに耳を奪われつつも、〈フィッシュマンズ直系〉と評されるキーワードのおかげで彼らを素直に受け入れられないでいたのだ。そんな判断保留のままで挑んだbonobos初ライヴだったのだが、彼らを遠ざけていた原因は1曲目が終わる頃には粉々に打ち砕かれてしまった。ドラム、ベースにパーカッション、そこにギターのカッティングが重なる。その一体感のあるリズム・アンサンブルが生み出すグルーヴ。CDよりも作りこまれた感が無い分素直に届くヴォーカル。リード・ギターの奏でるレゲエ~カリプソ~ボサノヴァまでもを咀嚼したようなフレージング(これが素晴らしい)。それぞれが合わさったときのポテンシャルの高さと開放感は、新人離れという言葉すら陳腐にするほどの説得力があった。フロアの盛り上がりも、いわゆるインディー・バンドのそれとは明らかに異なり、開放感が伝染していくような幸福に満ちた笑顔があちこちで見られた。フィッシュマンズの影響を受けていることは間違いないのだろうが、それのみには終わらない個性がちりばめられていることもまた確かなのだ。そしてその個性は、ライヴでこそ本領を発揮しているように感じた。CDを聴いただけでbonobosを判断している人たちは、いちど彼らのライヴを見てほしい。判断するのはそれからでも遅くないはずだ。

▼出演アーティストの作品を紹介