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第17回 ─ くるりサマーコンサート'03@クラブチッタ川崎 2003年8月20日(水)

連載
ライヴ&イベントレポ 
公開
2003/08/28   16:00
更新
2006/01/19   18:37
テキスト
文/ヤング係長

全国4ヶ所で行われているくるり主催のイベント、〈くるりサマーコンサート'03 ~
浴衣入場無料(ウソ)~ 〉クラブチッタ川崎公演にbounce.com編集部が足を運んできました。


思うに、現在のくるりは、ドラムス不在というバンドとして矛盾した編成で表現することに対し、まるでそれがテーマであるかのようなこだわりを持っているのではないだろうか。ライヴの度にバンドに合うドラマーを変えて様々な表現を試そうとする姿や、スタジオに入りながらもなかなか新作が届かない現状を見ると、ついついそんな推測をしてしまう。

この日は3人のメンバーに、ツアーで同行しているジョン・ヴァンダースライスのバックでドラムを担当しているクリストファー・マグワイヤという外国人ドラマーを入れた編成。くるりは、ディスメンバメント・プラン、先のジョン・ヴァンダースライスの2組の出演を経てトリで登場した。外国人がサポートで入ると、コミュニケーションが取りづらいという問題もあると思うのだが、当日はそんなことを気にする隙もないほど練られた演奏を、新旧曲織り交ぜたセットで聴かせてくれた。岸田のヴォーカルが持つ表情の豊かさや、バンドとしてのテンションの高さ(岸田のメガネが飛ぶ場面が何度も!)、割って入る大村のシャープなギターなど、バンドとしての表現力の底が一段上がったということを実感する場面が度々あった。が、この日のキモは間違いなくクリストファーによるダイナミックなドラミングだ。リズムはしっかりキープしつつ、シンバル、タムを多用した乱暴なまでの手数の多さ。さらには片手でマイクを持ちコーラスに周りながらのドラミングという、離れ業まで披露してみせた。あまりのバカテクぶりに、まるで手品か大道芸でも見ているかのように、ポカーンと口を開けている客もいたほどだ。そのドラムの効果が最も発揮されていたのが、序盤に演奏された“ワンダーフォーゲル”だろう。元々バンド・アレンジが難しい16ビートのこの曲を、クリストファーはさもあたりまえのようにプレイし、楽しんですらいるようだった。筆者は、何度かライヴでこの曲を再現しようと試行錯誤している彼らの姿を目にしてきたが、リズム隊の体力が追い付いていないせいか、ここまで分厚いグルーヴを生み出しているとは言いがたかった。しかし、この日は有無を言わさず体が動かされるという体験を味わった人も多かったはずだ。

1時間10分があっという間に過ぎるほど、緊張感が漂ういいステージだったと思う。とはいえ、サポートのドラマーがまた変わることによって内容が全く違ったものとなる可能性も十分にあるはずだ。表現者としてどんどんストイックになってきている今のくるりが持っている、リズムに対する執拗な執着。次のアルバムでこの執着がどう関わってくるのか、ライヴを見た後はそれが楽しみでしょうがない。