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第25回 ─ 曽我部恵一 Live Tour 2003@渋谷AX 2003年9月30日(火)

連載
ライヴ&イベントレポ 
公開
2003/10/09   18:00
更新
2006/01/19   18:37
テキスト
文/内田 暁男

OO TELESAの面々を従えた曽我部恵一ツアーも中盤戦。渋谷AXに凱旋した彼らはたくましい〈バンド〉としてその姿を現した。セカンド・アルバム『瞬間と永遠』からさらに先へ進んだ曽我部恵一の歌世界とは?

 
  まずは曽我部がおもむろに“ふたり”を弾き語ってるあいだにバック・バンドであるOO TELESAの面々がステージに登場。もうこの最初のなにげないシーンだけでイイ雰囲気なんです。最高なんです。

  いっしょにロードを続けるOO TELESAとのあいだで膨らみつづける信頼関係がこの日の演奏にも反映されていたことは誰の目にも明らかだったろう。荒々しいガレージ・バンドが次から次へとメロウな楽曲を演奏する。そんな雰囲気でこの日のライヴは進行した。“NEW LOVE”はハード・ロックのようなリフの快感があったし、ハウシーな“White Tipi”のブレイク部分には無限のサイケデリアが宿っていたし、“瞬間と永遠”のサビ部分の前のめりなドライヴ感は圧巻だった。セカンド・アルバム『瞬間と永遠』収録曲はどれも、盤とはまた違う表情を見せながら曽我部恵一の歌世界の深さを再認識させるかのよう。そう、彼の〈歌世界〉は底なしだ。

  たとえばささやかな小品といった趣きの“ちょっとまってて”(ファースト・アルバムに収録)が曽我部のキーボード一本で歌われたときにほのかな死生観すら立ち上がってきたのには鳥肌が立ってしょうがなかった(エリック・サティの〈ジムノペティ〉を引用してたり)。披露された数曲の新曲もロマンティックな色彩を強めながらさらに深いところへ。とくに〈僕はひとり公園へ歩く/そして宇宙の前に立った〉というぶっ飛んだ歌詞が歌われる “ブルーのこころ”のヤバイことヤバイこと。彼の音楽に触れるたびに〈サイケデリック〉という言葉が浮かぶんだけど、日常の風景と表裏一体で別世界があることを示すという意味で、彼ほど危険なミュージシャンはいないと思う(歌モノの領域で近いアーティストはスピッツの草野正宗ぐらいしか思い浮かばない)。って何回も書いてんですけど、ホントにそうなんですよ。

  彼らのロードはまだまだ続く。あの5人のあいだにこれからも育まれるであろう信頼関係の深さがきっと、彼らを一回りも二回りも大きくするに違いない。