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第26回 ─ YEAH YEAH YEAHS & LIARS カップリングツアー@渋谷AX 2003年10月6日(月)

連載
ライヴ&イベントレポ 
公開
2003/10/16   17:00
更新
2006/01/19   18:37
テキスト
文/ヤング係長

ラプチャー、アウトフッド、!!!(チック・チック・チック)など、近年NYを中心に活動を続けるバンドたちの台頭が著しい。そんな中でも中核をなす(と言ってもいいんじゃないかと思う)2バンド、ライアーズとヤー・ヤー・ヤーズの2組のジョイント・ツアーが行われた。


Yuki Kuroyanagi

  最初の出演はライアーズ。会場には、ギターノイズを中心に作られたオープニングSEが10分近く響き、不穏な空気が会場中を包んでいく。そんな中姿をあらわしたメンバーは、なぜか女装したドラマー……だった。ものものしいオープニングと、メンバーのコミカルな風貌のギャップに「ん?」という疑問が湧いたのもつかの間、神経質な衝動をそのまま音にしたようなフリーキーな演奏が始まる。ドラム、ギター、ヴォーカルという構成で、機械のように一定のリズムを刻むドラムに、ギタリストのアーロン・フェムフィルがチープなリズム・マシンやティンパニなどを挟んで彩りを添えていく。真剣さとバカバカしさ、柔らかさと硬さが入り交じったステージに、戸惑う観客も少なくなかったとは思う。が、それを気にとめる様子などみじんも見せずに、フロントマン、アンガス・アンドリューが、長身を振り乱し手足をばたつかせながら会場中を動き回る。その姿を見ていると、音楽的洗練と決別するかのような姿勢を20年以上とりつづけているソニック・ユースの影が重なって見えた。昨年発売されたデビューアルバム『They Threw Us All In A Trench And Stuck A Monument On Top』でも聴くことができた、ESG“UFO”のイントロ・サンプリングを生で再現する姿に、ついニヤリとさせられてしまった。


Yuki Kuroyanagi

  続いては、ヤー・ヤー・ヤーズの登場。メンバーが3人で、ドラマー、ギタリスト、ヴォーカリストというライアーズと同じ編成でありながら、音の印象は大きく違っていた。隙間のあるガレージ・サウンドではあるものの、リズムとソロを効果的に使い分けるギターと、タイトなドラミングがその隙間を補うような役割を果たしている。そしてなにより、ヴォーカル、カレン嬢の存在感が観客を引き付けて離さない。それは、彼女が女性性を強く出したパフォーマンス――たとえば、客を挑発するようなセクシーな衣装だったり、セックスを連想させるようなポーズをとったり――というような理由からではなく、もっと内在的な、90年代のコートニー・ラヴのようなオルタナ界のアイドルが持っていた〈華〉を彼女も持ち合わせているということなんだろう。カレンの一挙手一投足に合わせて会場の盛り上がりも左右されてしまう、そんなイメージすら抱いたほどだ。アルバム『Fever To Tell』からの曲を中心にしつつも、新曲と思しき曲も演奏していたので、既に次の作品の構想は見えているのかもしれない。

両バンド共に1時間ほどの短いステージだったが、それぞれが持つ自由な表現、新しい表現に対する真摯な姿勢は存分に伝わってきた。序文で触れた、ラプチャーなどのNY周辺で活動するバンドたちをひとくくりにするのは都合がいいし、わかりやすいのではあるが、シーンやムーブメントとして語ることで見えなくなってしまうものもある。現場に接することの意味や重要さをあらためて考えさせられたのは、筆者自身にとって大きな収穫だった。

※LIARSのインタビューが掲載中の「襲来! ポスト・パンク・チルドレン DEATH DISCO 2003」もお見逃しなく!

▼両バンドの過去作/関わった作品を紹介