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第35回 ─ SUPERCAR presents High Booster 2003@渋谷AX 2003年11月29日(土)

連載
ライヴ&イベントレポ 
公開
2003/12/11   16:00
更新
2006/01/19   18:37
テキスト
文/ヤング係長

スーパーカー企画イベント〈High Booster 2003〉。ROVO、Buffalo Daughterを迎えて開催された同イベント最終日、渋谷AX公演をレポート。ニュー・アルバムレコーディング中の彼らがホーム・イベントで見せたライヴの内容とは?

  やや遅れて会場に到着し、急いでホールの扉を開いた瞬間、目の前に飛び込んできたのは扉が閉まり切らないほどにびっしり詰まった観客の姿。それを見て、デビュー当時は小さなライヴハウスでコツコツとライヴを重ねていた彼らの姿が一瞬フラッシュバックし、ちょっとした感慨を覚えたりしながらも、人波を文字通り掻き分けて中へと歩を進めた。

  最初の出演はROVO。キャラクターを立て、メンバーにカリスマ性を持たせることで他のバンドとの差別化を図るようなコマーシャリズムとは対極にありながら、ライヴ・バンドとして確固たる地位を築き上げてきた彼ら。この日のライヴも観客を扇情するわかりやすいMCなどもちろんなく、〈黙々と〉楽器に向かうメンバーの姿があった。が、その演奏には終止ピンと緊張感が張り詰め、それが客席にも感染していくかのような、異様とも言える濃い雰囲気を充満させていた。トライバルなリズム隊と対比するように浮き上がる、勝井祐二の妖艶さをまとったアグレッシヴなヴァイオリン。これまでROVOはオープンスペースでしか見たことがなかったが、クローズドの空間で聴くその演奏には、オープンな空間にはない濃密で重たい印象を受けた。

  ウォーミング・アップの粋を遥かに超えたROVOの演奏後登場したスーパーカー。正直言って、ROVOがオープニングに出演するこの日のセットは彼らにとって分が悪いんじゃ……なんて想像をしていたのだが、それは思い過ごしだった。一度下りた幕が再び上がり、姿を現した彼らは、淡々としながらもある種の風格すら漂っていた。そしてその風格は、そのまま演奏にも反映されているようだった。以前の彼らに感じられた線の細さからくる弱々しさは影を潜め、タフさを身に付けたパフォーマンスを見ることができたように思う。特に、中盤から後半にかけて演奏された“STROBOLIGHTS”、“YUMEGIWA LAST BOY”、“White Surf style 5.”といったキラー・チューンで得られたカタルシスは、バックスクリーンに大きく写された宇川直宏のグロテスクでセクシャルな映像と相まって、肉体的要素を格段に増した印象を受けた。

  Buffalo Daughter、ROVOという、ライヴバンドとして格上のバンド達を自ら対バンの相手として選び、イベントを開催すること。それは同時に自分たちとそのバンドが比較されることの覚悟がついているということ=自信の表れだったのだろう。当日のスーパーカーは、相変わらず寡黙で、ファンに媚びることなくバンドが持つペースをキープしていた。それは、リスナーとミュージシャンとの隔絶を前提とした上で、安易なメッセージを送ることなくいかにリスナーとのコミュニケートを図るか。というテーゼを持っているように見えた。

SUPERCAR presents High Booster 2003@渋谷AX
1. RECREATION
2. WARNIG BELL
3. SORATOBI
4. 未発表曲
5. 未発表曲
6. BGM
7. HIRAMEKI INSPIRATION
8. STROBOLIGHTS
9. YUMEGIWA LASTBOY
10. I need the sun
11. STORYWRITER
12. White Surf style 5.
13. Free Your Soul
14. Karma