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第36回 ─ 小島麻由美ワンマンライヴ'03冬公演@新宿リキッドルーム 2003年12月17日(水)

連載
ライヴ&イベントレポ 
公開
2003/12/25   15:00
更新
2006/01/19   18:37
テキスト
文/ヤング係長

ミニ・アルバム『面影』リリース後、大阪と東京のみで行われた小島麻由美単独公演。彼女自身も思い入れがあるというリキッド・ルームでの最後のイヴェントにbounce.com編集部が足を運びました。


 小島サウンドには欠かせない存在となっている塚本功のメリハリの利いたギター(ソロ・アルバム『Electric Spanish 175』も必聴)、そのリズムを支えるファットなドラムと一音一音丁寧に鳴らされるウッドベース、そして畳み掛けるように重ねられるヴィブラフォンやピアノ、フルートの澄んだ音色。いつも思うのだが、小島麻由美のバンドはアンサンブルが絶妙だ。彼女の歌を引き立てつつも、自己主張を忘れない。この日のライヴでも、メンバー同士、そしてバンドと小島嬢のコントラストが引き立っていた。

  当日は胸元と背中が大きく開いたセクシーな衣装に、ASA-CAHNGにセットしてもらったヘア・メイクという、ゴージャスないでたちで登場した小島麻由美。歓声どよめく中、オープニング曲は、ファースト・アルバム収録の“おしゃべり! おしゃべり!”。出だしの高音部分をいきなりはずしてしまい、「もうこの曲でスタートするのやだ」とMCで漏らすなど、愛嬌とファン・サービス(?)もたっぷり。相変わらずMCはたどたどしいながらも、観客や周りのメンバーたちはそれをあしらうこともなく丁寧に受け応えている。デビューから8年が経とうとしているのに、彼女の魅力に引き寄せられた人々が、未だにその〈魔法〉に掛けられ続けているのだろう。筆者もその一人であることは間違いない。


  この日の選曲は、個人的に小島作品の中で最も思い入れのあるライヴ・アルバム『Songs For Gentlemen』に近い並びで、メンバーもほぼ被っている。もちろん、『Songs~』がリリースされた2000年と比べると、ステージ上の各人ともにキャリアは比べ物にならないはずだ。ソロ・パートに入ると、それぞれがちょっとした即興を混ぜ、ほかのメンバーはニヤリとしながらもそれを受ける。音楽を通してのコミュニケーションによって培われた各自の間、そこから生み出される現場性の高さは、まさしくここでしか得ることができないものであった。特に、同アルバムでも、この日のライヴでもハイライトである“恋の極楽特急”でバンドが見せた分厚く抑揚の利いたグルーヴは、メンバーが持つ幅広い音楽要素が融け込み、CDとは比べ物にならない高揚感を味あわせてくれた。

  99年~2000年にかけての、プチ活動休止以降発表された作品の雰囲気に顕著なように、彼女は初期作品で全面に出していた〈危なげなイノセント〉から着々と脱却しようとしている。だが、初期の曲を演奏しながらこうまで説得力のあるライヴを目にすると、今の彼女からそれが失われたところで何の問題もない。それ以上に、時間を経て培ったものが備わっているのだから。メンバーが去った後に彼女のピアノ・ソロで演奏されたラスト曲、“人間ぎらい”を聴きながら、ぼんやりとそんなことを考えていた。

▼小島麻由美の過去作を紹介