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第2回 ─ 昔と変わらぬロック・スピリットを見せてくれたTHE WHOはやっぱり凄い!

連載
久保憲司のロック千夜一夜
公開
2004/07/26   21:00
更新
2004/07/29   13:50
テキスト
文/久保 憲司

『NME』『MELODY MARKER』『Rockin’ on』『CROSSBEAT』など、国内外問わず数多くの音楽誌でロック・フォトグラファーとして活躍、さらにロック・ジャーナリストとしての顔も持つ久保憲司氏の週間コラムがbounce.comに登場! 常に〈現場の人〉でありつづけるクボケンが、自身のロック観を日々の雑感と共に振り返ります。

2004年7月24日(土) THE WHO 『LIVE AT LEEDS』

  THE ROCK ODYSSEY行ってきました。やっぱりフーがよかった。そのフーに暖かい声援を送るお客さんもよかった。ロックなんかもう死んでしまったものかもしれないけど、〈ロックが若者文化の中で何をしようとしたか〉という思いは永遠に消え去らないのだと思う。初期のヒット曲はもちろん良かったけど、あまり興味がなかった新曲もライヴで聴くとまた違った印象を受けた。ライフハウス(フーズ・ネクスト)・セットで演奏された、生“Behind Blue Eyes”はいつ聴いてもいい。

 ピートが「昔とは変わり、今は新しい意味を持っている」と言っている“Who Are You”にぼくもガツンとやられてしまった。まさに〈お前は何者なんだ? これからどうするんだよ?〉と問いかけられているような気分になった。

 奇跡の4重人格セット、アンコールでのトミーのセットは、ピートがMCで言っていたように、トリのエアロスミスがフーのために自分たちの出演時間を割いてくれたから成立したものだ。ウドーさん、エアロスミス、お客さん、ロックに全てを捧げてきた人たちの思いが通じたかのような内容だった。そして最後はピートが何十年かぶりにギターを壊した。ウッドストックでも壊さなかったのに(上に放り投げて、エフェクターにガンガンと打ちつけて、客席にポイと投げ捨てていた。まるで「お前らクソ・ヒッピーなんか嫌いだ」と言っているようだった)。かつて「日本なんてモノマネの国に、ロックンロールなんかない」と言っていたピートが、その日本でリスペクトを込めてギターを壊してくれた。初めてピートがギターを壊した時と何一つ変わっていなかった。ロックとは“I Can’t Explain”であり、ステージに立って、どれだけ伝えようとしても伝わらないジレンマが生む暴力なんだ。


photo by Kentaro Kanbe

 ロジャーもタンバリン2つ叩きをやってくれた。メンバー紹介で、今は亡きジョンとキースの名前も言いたそうだった。なんか結構日本のことも考えてくれていたんだな。胸が熱くなって仕方がないよ。涙、涙、涙。

 というわけで『Live At Leeds』。フーを観れなかった人、聴いてみてください。ツェペリンのライヴも凄いですが、フーはその凄さに思想性が入ってくるのです。フーが世界一のロック・バンドになった理由です。そして同時に日本で評価されなかった理由でもあります。英語は難しいかもしれません。でもよく聴いていると、彼らが伝えたかったものがおぼろげながらわかってくると思います。それはロックで何かをしたかった人の歌です。その歌は今も錆びていません。