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第12回 ─ 時代を変えたバンド、オアシスの〈全て〉が詰った映像集

連載
久保憲司のロック千夜一夜
公開
2004/10/07   15:00
更新
2004/10/07   15:52
テキスト
文/久保 憲司

『NME』『MELODY MARKER』『Rockin' on』『CROSSBEAT』など、国内外問わず数多くの音楽誌でロック・フォトグラファーとして活躍、さらにロック・ジャーナリストとしての顔も持つ〈現場の人〉久保憲司氏が、ロック名盤を自身の体験と共に振り返る週間日記コラム。今週は、9月に10周年記念DVDをリリースしたオアシスについて。

2004年9月30日(火) OASIS「Definitely Maybe」(DVD)

  ついに出ましたオアシスのDVD「Definitely Maybe」。ブリット・ポップ前夜の興奮がよみがえります。でも本当のことを言うと、ぼくはオアシスのことをよく分かっていなかったのです。多分日本人で初めてオアシスの写真を撮ったのはぼくだと思うのですが(ホワイトアウトとのダブル・ヘッドライナー・ツアーの時、一枚目のシングルが出た頃かな?)、ただの70年代の焼き直しだと思った。ストーン・ローゼズとセックス・ピストルズを合体させるという彼らの意図が全然分からなかった。今から考えると凄いコンセプトだけど、あのライヴはぼくにはロック過ぎた。

 これからの時代を支える3バンドとして売り出されたオアシス、スウェード、アドラブル。この中だとぼくは絶対スウェードだろうと思っていた。これまでぼくは、一目見てそのバンドが売れるかどうかを予想して外したことがなかったのですが、この時初めて外した。スマッシュの日高さんはこのツアーのロンドン公演を見て、まだ日本盤が出るかどうかも分かってなかったのに、オアシスはロックだと、日本公演を決めていた。ほんとうに凄い人だ。

 リヴァプールでライヴを見たとき、楽屋に行ったらノエルから「お前の顔知っている」とむちゃくちゃ懐かしそうにしゃべりかけてきてくれたのに、ぼくはあまり相手にしなかった。ぼくの仕事の仕方はバンドよりクルーにいつもやさしく接しようと心がけているから、インスパイラル・カーペッツのローディーをやっていたノエルはぼくのことをよく覚えていてくれたのだろう。でもその時のリアムは「シンナー好きなんだよな」とか本当にアホのフーリガンみたいなことをいうからぼくはオアシスには引いていたのだ。

 楽屋にはリアル・ピープルのメンバーもいて、ぼくのホテルもメンバーと同じブリタリア・ホテルだったんだけど、「疲れているから」と彼らのどんちゃん騒ぎから逃げたのだ。ぼくの人生の最大の失敗だ。この時仲良くして専属カメラマンになってたら、今頃大金持ちだったのになぁ。

  このDVDの目玉であるライブ映像は、色んな場所の公演から選ばれていて、それはそれで楽しいのだけど、ちょっと集中出来なくなってしまうのが残念だ。初期のオアシスに浸りたかった。しかしこのDVDの本当の目玉は本人も含む関係者たちの証言で綴る〈オアシス成功への道〉だろう。こんなDVDがバンド結成して10年ちょっとで出たことあっただろうか? セックス・ピストルズなんて何十年もかかった。フーのDVD「Kids Are Allright ディレクターズ・カット完全版」を観ても、フーは凄かったというのはよくわかるけど、なんで売れたかなんて分からない。多分ニルヴァーナについてもここまで語られることはないだろう。もう本人いないし。

 このDVDには、「オアシスがなぜ売れたか」、「その為にどれだけの苦労をしたか」、「オアシスの素とは」など、切々と語られるのだ。バンドで成功したい人は絶対必見です。今これをやって売れるかどうかは分かりません。でも、ノエルが自分たちのことをよく自覚していたことには感動を覚えます。ちょっと前に出たストーン・ローゼズのDVDでも本人が語っていたら面白かったのに。でもストーン・ローゼズはそういうこと出来なかっただろうな。ノエルは本当に別格だね。時代を変えた人たちの事実がこうしてDVDで早くも見れるのはほんとうに凄い。興奮するよ。