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第58.5回 ─ TOWER RECORDS PREMIUM SPECIAL!! NO MUSIC,NO LIFE. 平間至×箭内道彦 対談

連載
タワーレコード Premium
公開
2004/12/01   19:00
更新
2004/12/29   18:14
テキスト
文/坂本幸隆

1997年にスタートして今も続いているタワーレコードコーポレイトボイス「NO MUSIC, NO LIFE.」広告シリーズ。2004年10月で制作回数71回、出演者は総勢約300人にのぼるこのシリーズがいよいよ写真集として出版されました。この機会に、カメラマンである平間至さん、ディレクターである“風とロック”の箭内道彦さんによる、この8年間を振り返っての対談?思い出話?愚痴?が実現。さて、その内容は…。

写真集発売の1週間前、原宿に集合したカメラマン平間さん、ディレクター箭内さんを含めたNO MUSIC, NO LIFE.ポスター制作スタッフ。制作開始から約8年を経過していながら、改まってこれまでの制作を振り返ったこともなかっただけになかなか本題に入れず、次回撮影のTHE MAD CAPSULE MARKETSや銀杏BOYZの撮影打ち合わせ等で随分時間がたった後、とりあえず「飲みながら始めますか」的なテレまじりのNO MUSIC, NO LIFE.制作対談スタートです。

平間(以下、H) :しかしよく出来ましたね。何度もこの写真集企画は挫折しましたから。今回予定通りできたのはビックリですよね。


箭内(以下、Y) :ポスターもそうですが、今回の写真集も短期間で作りましたよね。表紙だって最初は黄色一色だったのに、急にまったく逆のデザインに変更してみたり、行き当たりばったりな感じがポスターの延長線上な感じで…。

-そういう意味では、今回写真集にまとめるに当たって、それぞれに8年間を振り返られたと思いますが、このシリーズを始めた8年前と現在で何か気分的に違うこととかありますか?

H: 簡単に言うと、相変わらず慣れないですよね。撮影で、事前に打ち合わせがないとか、絵コンテがないとかありえないですからね。前日まで、誰を撮るのかわからないとか。

Y:でも、この時間のなさは素晴らしいと思うんですよね。本当に世の中に出ている広告の中で一番最新のものが新鮮なまま出でいると思うんですよね。普通の広告より間違いなく1ヶ月以上は短い。だいたい、スタッフが余裕でやってないですから。毎回ドキドキしながらやってますから。「これ、今回大丈夫?」とか「どーなっちゃうんだろう」みたいな。


-よく考えると出演するアーティストも同じように心配なわけですよね。何撮られるかわからないわけですし。

Y:だから、アーティストにも「いつも打ち合わせや絵コンテはありません」って言ってます(笑)。それが当たり前のように。ただ、逆にアーティストの方々の方が「他の回に対して自分たちはこう面白いことをやりたい」「絶対他ではやったことがないことをやりたい」みたいな事を自分から考えてくれるという、NO MUSIC,NO LIFE.は不思議なシステムになってます。今までのポスターがライバルのような。 

H: そういう意味では、全員が慣れていない。出演する側ももちろん始めてなわけだし。

Y:平間さんは、テレビの企画みたいに目隠しして現場に連れて行かれてるような。

H: しかも、目隠し取って30回ぐらい回されてからカメラ渡されて撮影している感じ。前日の夜にならないと電話がかかってこないし。しかも、こっちから催促の電話しますからね。機材とかフィルムとかのオーダーができないって…。

Y:でも、はじめからバキバキに決めてるとこの空気感は出ないですよね。そこはやっぱり平間さんのすごいところです。全体を通すと不思議な統一感がある。統一感のない統一感のような…。

H: 8年分の広告写真を集めて普通こんな統一感は出ません。それは不思議ですね。あと、改めて見ると、写真一枚一枚の情報量が多いというか、濃いですよね。


Y:普通の広告写真は、広告したい商品とせいぜいタレントに焦点があるわけです。でも、このシリーズは写真とNO MUSIC,NO LIFE.というコピーとデザインがあると、その情報の多さが処理されてしまう。広告としては非常に珍しいケースです。自分も写真を選ぶ時に気持ちの中でNO MUSIC,NO LIFE.と言いながら選んだりしてます。是非、写真集を見ている皆さんにも、そう言いながら一枚一枚見てもらいたいと思います。

H: 写真を改めてみても、一緒に出演しているアーティストの「リスペクト感」や「友達感」や「意中の人に会えたドキドキ感」が伝わる写真はいいですよね。そういう時は、撮っていても映っている人がいつも以上にかっこよかったり、綺麗だったりするのがわかります。

Y:そういう意味では、平間さんの写真は「状況」ではなく出演者の「気持ち」を撮っていると言っても過言ではないですよね。

H: 結構危ないロケ現場もあったんですけどね(笑) 、大阪の通天閣辺りとか。そう考えると、制作に関わるスタッフの現場での、自分や箭内さんと衝突しながらのファインプレーにも助けられてますよね。とにかくネガティブなことだけ言うスタッフとかも、よく考えると大切だったりして(笑)。

Y:スタッフなのに写真に映っちゃってる人も多いですけどね。 現場スタッフといえば、キャスティング会社のスタッフは優秀です。最後までがんばってくれますよね。彼には、最近独立したのでヒーロー物っぽいカッコいい名前とロゴをプレゼントしました。「キャスティングマン」っていうんですけど(笑)。

H: なんか困ったときに必ず解決してくれそうですよね(笑)。あとは、天気に恵まれるのも幸運ですよね。撮影の予備日とかないわけですから。


Y:晴れが必要な時には晴れたり、ちょっと小雨が必要な時に雨が降ったり。そういえば印刷会社の人も実は大変な平間さんファンだったらしく、色校も随分内校を出してくれているらしいです。そんな出会いも幸運ですよね。

-とにかく、このNO MUSIC, NO LIFE.企画はスタッフの努力だけでなく、いろいろな善意と幸運に支えられているということですか…。運も実力のうちというか…。

Y:簡単に言うと「合気道主義」というか。平間さんの撮影スタイルから体得しましたね。運やアーティストの方々の現場での気持ちを利用すると言うか、来た球を相手の力も使ってもっと遠くに打ち返すというか。

H: 「NO MUSIC, NO LIFE.の制作は合気道だ」っていうことですか。こんなまとめていいのかなぁ?とにかく、最悪でも前日の夜の6時までには出演者と絵コンテを連絡して下さい(笑)。

-この後、過去のポスター一枚一枚について延々と撮影秘話が続いたことは言うまでもなく、その様子は、年明けに開催される予定のNO MUSIC, NO LIFE.ポスター展でのトークイベントで。