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第55回 ─ Minor Swing presents 2005 NEW YEAR COUNT DOWN 2004年12月31日(金)

連載
ライヴ&イベントレポ 
公開
2005/01/13   22:00
更新
2006/01/19   18:37
テキスト
文/井口 啓子

Ego-Wrappin'主宰レーベル〈Minor Swing〉による年越しカウントダウン・イベントが地元大阪にて開催された。出演はEgo-Wrappin'のほかにDUBSENSEMANIAとTHREESEVENの合計3組。それだけでもムード満点なのに、会場が昭和ビンテージなムード飽和スポット〈味園ユニバース〉とくれば、いい湯加減にならざるを得ないはず! 熱気と色気といい音楽が充満していた当日の様子をレポートいたします!

  大晦日といえば、やっぱり外せないカウントダウン・ライブ。この2004-05年は、Ego-Wrappin'主宰のレーベル〈Minor Swing〉が大阪でイベントをやるとの情報をキャッチ。

 エゴとしては恒例のカウントダウンだが、地元大阪で行われるのは、実は今回が初めて。しかも、その場所が関西人には「行こう! 行こう! み・そ・の!」の深夜CMでおなじみ。昭和ビンテージなキャバレーやスナックや宴会場が集う、殿方の娯楽の殿堂であり、最近では大阪のディ―プ・カルチャー発信地にもなっている名物スポット、味園ビルのキャバレー〈ユニバース〉とあれば、行かないワケにはいきません。

 当日、雪のちらつくミナミの街を歩いて、味園に到着。この日は同ビルの〈香港〉〈マカオ〉〈鶴の間〉でもカウントダウン・イベントが開催。いろんな人が建物の前をあわただしげに行ったり来たり。ソワソワした空気に、ああ、大晦日やねんなーとしみじみ。

 さて、我らが目的地〈ユニバース〉に入って、まず目に飛び込んでくるのは、大惑星と小惑星をイメージしたキッチュ&ゴージャスな電飾やシャンデリア。赤・緑・黄のライトがチカチカと点滅するステージ(70年代のパチンコ屋風?)。祭りムードを盛り上げる、きな粉餅や年越しそばの屋台。そして、フロアを行き交う人・人・人……! 


DUBSENSEMANIA

  いきなり“トラック野郎・一番星のテーマ”が流れたりする絶妙なハズシ具合も、なるほどMinor Swingというか? 過剰なまでの猥雑なパワーに、否が応でもテンションが上がってくる。

 この夜、まずステージに登場したのは、ピアニカ奏者RAS TAKASHI率いる、DUBSENSEMANIA。かなりユルユルなようで、その実、とてつもなく高度に構築された濃密ダブ・サウンドは、あくまでさりげなく会場の空気に溶け込みながら、時空をポーンと超越してゆく。PJのドラミングとRAS KANTOのジャンベの絶妙なシンコペーション。UKダブ直系のクールでファンキーなグルーヴを彩る、メロディアスなコーラスワーク。そんな彼らの音世界が、よりエフェクティヴに展開されるライヴ・パフォーマンスは、とにかく理屈ヌキで気持ちいいのです。


THREESEVEN

  お次は京都のオーセンティック・スカバンド、THREESEVEN。彼らのなによりの魅力は、究極のアマチュアリズムともいえる自由な空気であり、The Miceteethなんかにも通じる〈独特のせつなさ〉だと思うのだが、この日はカウントダウンということもあってか、ゴキゲンなオールディ―ズ風味のナンバーを次々に披露。スカなんか聴いたことがないって人も、ついつい踊らせちゃう熟練の演奏とパフォーマンスは、さすがの一言でした。

 続いては、今宵のスペシャルゲスト、横山ホットブラザーズ。若きエゴファンは、はたして彼らのことを知っているのか……? てな危惧もなんのその。登場するやいなや、ものすごい歓声と共にステージに向かって人が押し寄せる人気ぶり。浪速座のオジオバもビックリのヤンヤヤンヤの大嬌声に、伝家の宝刀・ノコギリ演奏による「お~ま~え~は~ア~ホ~か~?」はもちろん、アンコールまで飛び出す始末。村田英雄“花と龍”をフルヴァージョンではあき足らず、即興替え歌でさらに1コーラス歌うノリノリの大師匠達に、「どこまで引っ張るねーん」と心でツッコミつつ、いやはや大いに笑わせていただきました。

 ジャンルも世代も関係なく、ホンマにおもしろくて凄いものにはストレートに反応する。これぞ大阪の懐の広さ! そして2004年も残すところ30分。いよいよトリのエゴラッピンの登場。個人的には、新作『merry merry』が、80'sニューウェイヴ志向の作品だっただけに、なんで今さらキャバレー? とも思っていたのだが、いざ幕を開ければ、そんな愚問はふっ飛ぶ唯一無比のエゴワールド。“フジヤマ・ママ”のカバーも、ユニバースというエキゾ空間と、エゴ開始前のDJ=元Determinations 高津氏による日本のツイストなどを中心とする選曲の流れもあって、ツボハマリ。ステージを走り回って、観客を煽りまくるヨッちゃん。あくまで飄々と、たまらんフレーズを繰り出してくる森くん。そして、エゴのライヴを支えるおなじみのバンドメンバー。

 とくに“カサヴェテス”~“When I get low, I get high”(エラ・フィッツジェラルドのカバー)の流れでの、スリリングな緊張と熱気みなぎる演奏は、このメンツだからこそ可能なもの。思わず我を忘れて、ひたすら音の渦へと身をまかせる快感……! 新年10分前には、さらにTHREESEVENのメンバーもステージに加わってのセッションも登場。そして、気になるカウントダウンは“Paranoia”。タイトルどおり、執拗なサビのリフレインに、高揚をつり上げられては寸止めを喰らった末、もーダメってところで、ついに秒読み~昇天ニューイヤー! その後は、ブライアン・セッツァー・オーケストラのカバーも飛び出すなど、リラックスした演奏が続き、“サイコアナルシス”~“Crazy fruits”で大団円。

 あらゆるジャンルを呑み込みながら、うねり進化してゆくエゴワールドは、決して平和なニュースばかりではなかった2004年の終わりをあくまで楽しく、艶やかに彩り、新たな年の幕明けをエネルギッシュに飾ってくれた。

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