bounceと代官山のUNITが共同開催する〈bouNIT〉。LITTLE CREATURES、Saigenji、カセットコンロス、今野英明等音楽を愛する者なら唸るに違いない豪華ラインナップと階層豊かな会場空間を活かした演出で、日曜日の午後をリラクシンに彩りました。さっそく主要アーティストのステージをレポートです!
オープン1年あまりで、すでに東京のライヴハウス/クラブシーンで確固たる存在感を築きあげたUNITとbounceによる新たな企て。その名も〈bounce×UNIT presents bouNIT vol.1〉はB2の〈UNIT〉、B1のカフェ〈UNICE〉、そして一番下B3の〈SALOON〉と3フロアをまたいで開催された。それぞれの会場ごとにライヴ、アコースティック、DJと特色に溢れたラインナップ。日曜の昼からというのんびりとしたシチュエーションも、気の置けない仲間とのミーティングを思わせるものだった。
Saigenji

photo by Yayoi(以下同)
堂々bounce10月号の表紙を飾り、野心的なニュー・アルバム『ACALANTO』発売直後の期待度120パーセントのステージ。とはいえのっけから代表曲“It's too late”の豪快なカヴァー、そしてビールを片手に「乾杯!」のかけ声(?)でいつものSaigenjiのりに場内を引き込んでしまった。新曲を交えぽんぽんと繰り出される構成、そのパワフルな演奏から勢いに任せているように感じられる彼のステージングだが、バンドとのグルーヴ感の駆け引きには相当高い基準があるに違いない。常にアウト・オブ・コントロールな魅力をたたえた奇才に大きな拍手を!
Magnolia

CARAVAN、Keisonと〈Surf Rock Trip〉で新島から帰ったばかり、MAIの陰影に満ちたヴォーカル、ずっしりとしたバンドアンサンブルはよりブルージーに、長いロードを経てしか生まれ得ない艶があった。レイドバックした、昼と夜の狭間に浮かぶサイケデリックな表情。ジェファーソン・エアプレインとグレイトフル・デッドが出会ったような、ピースフルなムードに包まれる。彼らの存在が、今年の夏のサーフ・ミュージックの波を単なる流行に終わらせない。
坂田学

突然のPolaris脱退後、その活動に注目が集まっていた坂田学。豪快なドラムソロからエフェクティヴなサウンドメイキングまで、Polaris在籍時から、彼のドラムソロパートというのは独特だったが、そのソロコーナーをより拡大し濃くしたようなアーティスティックな内容。途中ギターに持ち替えてPolarisのミニ・アルバム『cosmos』に発表したソロ楽曲“あかつき”やコンピレーション『リズムであそぼう』収録の“リズム リズム リズム”も披露した。Dub Master Xによる空間設計も完璧。
おおはた雄一

バンド編成、ソロ、コラボレーションとステージごとにフレキシブルなパフォーマンスを続けるおおはた雄一だが、カフェ、バーやラウンジでのライヴで鍛えてきただけに、〈SALOON〉のくつろいだ雰囲気のなか水を得た魚のよう。ひょうひょうとしたMCを挟みながら、いつも以上にリラックスしたムードでいとも簡単に超絶プレイを繰り広げていく。ライ・クーダー“Cancion Mixteca”、ボブ・ディラン“風に吹かれて”のカヴァーにはアブストラクトな味わいさえ。食事の音までが彼の音楽のすてきな伴奏になっていた。

LITTLE CREATURES
栗原務と青柳拓次は前日のDouble Famousのライヴに続いての出演、ということで数多くの課外活動を経ての、久方ぶりの小さな怪物たちの勇姿。鈴木正人はフェンダーローズとトイピアノを駆使し、ふくよかなサウンドと、独自の緊張感でニュー・アルバム『NIGHT PEOPLE』の世界観を完璧に演出していた。リヴァーヴをポイントにしたアレンジメントが抜群の冴えをみせ、丹念に紡がれた音のディティールを際立たせる。終盤では彼らのライヴでの人気曲“mosquito curtain”もプレイ。彼らの革新性が表面的でなく静かに染み渡るように伝わってきたのだった。
今野英明

ステージに上がったとたん、会場が穏やかな祝祭感に包まれる。ウクレレを片手に、おもむろに演奏を続けるなか、新作『息を吸いこんで』にも忍び込んでいた緊張感、彼の声のなかにある寂しさやぽつりとした空気をしみじみと感じる。セットは新曲や、“見上げてごらん夜の星を”のカヴァー、そしてなんとROCKING TIME時代の“雲の上まで”を! そしてハナレグミも取り上げた“ありふれた言葉”には会場からひときわ歓声が起こる。彼のうたにある永遠の蒼さと暖かさを身近に感じることができた。

カセットコンロス
そしてトリを務めたコンロス。先ほど〈UNICE〉ではヴィンテージ感たっぷりのDJプレイでフロアを湧かせていたワダさんは「なんで俺らがトリなの?」ととぼけた口調で場内をなごませる。カリプソにある、楽観と同時に深いファンクネスをバンドの存在感でもって体現している。ここ数年の活動の充実ぶりによるものだろう、そのごつごつとした黒さとファニーな表情を持つアンサンブルは伸び伸びと、そしてしなやかさを増している。グルーヴを武器に、かつてのTOMATOSやJAGATARAと同じく世代を超えて、世界を踊らせることのできるバンドとして、もっとも注目が必要だろう。
他にもエモの高揚感と爆発力を見せつけたアザーロックバンド、LITE、サザンオールスターズ“熱い胸騒ぎ”からドーン・ペン“No , No , No”までカヴァーし、スティールパンののんびりとしたイメージを覆すエキサイティングな演奏に驚嘆したJ'Ouvert。そのJ'Ouvertをゲストに迎え、クラッシュの革新性をルーディーなスタイルで再解釈したPACINOS。〈UNICE〉で不思議な清々しさを持つ弾き語りを聴かせてくれたcoet cocoehと、ギター一本でアシッド・フォークにも勝る強烈な存在感を示したKayoko。完全大箱対応のゴージャスでグラマラスなプレイを披露したSUGIURUMN……トピックはまだまだ書ききれない。そして各会場を司会として登場、感動的に脱力なダジャレをとばし、開催中も場内を上から下までうろうろしていた大木凡人氏にビガッ!
早くも第二回目が2006年1月22日(日)に決定しているbouNIT。常にカッティングエッジなアーティストをサポートし続ける、bounceとUNIT、今後のコラボレイトにも要注目です。
▼上記出演アーティストの近作品