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第15回 ─ よそ者たちのフィラデルフィア

連載
IN THE SHADOW OF SOUL
公開
2006/06/22   18:00
更新
2006/06/22   19:22
ソース
『bounce』 276号(2006/5/25)
テキスト
文/林 剛

壮麗な輝きを求め、多くのアーティストがフィリーを詣でた時代……

 〈フィリー詣で〉という言葉がある。70年代に一大旋風を巻き起こしたフィラデルフィア・ソウル、その発信地となったシグマ・サウンド・スタジオに、MFSBの奏でる華麗なサウンドやミキシングを求めてフィリー以外からやってきた(フィリーを拠点としない)アーティストたちの動きを、古くからのソウル・ファンがそう呼んでいるのだ。

  その動きは、まず60年代後期、ジェリー・バトラーやウィルソン・ピケットらが、フィラデルフィア・インターナショナル(PIR)を設立する直前のギャンブル&ハフに制作を仰ぐという形で起こった。そして70年代に入ってPIRが躍進すると、〈フィリー詣で〉はギャンブル&ハフの手に負えなくなるほど活発化。デルズやフォー・トップス、エディ・ケンドリックス、ベンE・キング、それにエルトン・ジョン……と、すでにビッグな成功を収めたアーティストが、さらなる成功を願って、あるいはマンネリ打破などを理由にMFSB一派と組むようになる。時にはMFSBの面々による出張録音も行われた。と、それが今回のテーマだが、ネコも杓子もフィリーという風潮は粗製乱造を招くことも少なからずあったかもしれない。とはいえフィリー・ソウルの様式美はそれ自体何ら非難されるものではなく、そのサウンドの魔力に抗い難いものがあるのは事実だ。今回エクスパンションからリリースされた『The Spirit Of Philadelphia 2』は、まさにそんな魅力を伝えるコンピ(の続編)ということになるものだが、来るべき〈PIR特集〉の前フリとして(?)、まずは多方面に散らばったフィリーのスピリットを感じてもらえればと思う。

▼〈フィリー詣で〉音源を収録した作品を紹介


エルトン・ジョンの編集盤『The Complete Thom Bell Sessions』(MCA)