2006年初夏、21世紀の活動をついに見せ始めた〈音楽に愛された〉音楽家、ヤン富田。去る6月30日、タワーレコード渋谷店B1F STAGE ONEにて行われた『フォーエバー・ヤン ミュージック・ミーム1&2』発売記念イヴェント、〈新作アルバム『フォーエバー・ヤン ミュージック・ミーム2』発売記念イヴェント〉の模様をお伝えいたします!

続々とファンが詰め掛ける中、ライブが始まる前の会場には、なんとヤン富田の未発表音源/別アレンジの楽曲が流れ(イヴェントならではの小粋な演出♡ ……とはいえやはり音源化熱烈希望!)、弥が上にも気分は盛り上がる。
BGMが止み、会場が暗転すると、ヤン富田、ナイーヴスのいとうせいこう、高木完が登場。ヤン富田がモジュラー・シンセ〈SERGE Modular Music System〉を操り、電子音のドローン(通奏低音)が響き渡る。そしてそこにいとうせいこう、高木完の両氏が手に持ったタンプーラとスワルサンガムを奏で始め、倍音を多く含んだ三つの音は徐々に熱を帯び、絡み合いながら進行していく。そのダビーでサイケで瞑想的な世界はさながら「フォーエバー・ヤン ミュージック・ミーム1」所収の“ビート禅”、あるいはTORUMAN『友情』収録の“SURF 禅”の実践版/ライブ・バージョンそのもの。まさしくメディテーション!!!! 渾然一体となった音の塊に身を委ねていると、聴こえてくるは“フォーエバー・ヤン”の、あの神々しいまでに美しいトラック。やはりこのビートは大音量に映える。瞑想状態だった(?)オーディエンスも徐々に覚醒し(??)、マイクの前に立った二人の熱気を帯びたラップに体を揺らしていた。
〈ライブ&トークイヴェント〉ということで、次は三人によるお話。開始5分と満たないうちに「この機会に質問を……」と質疑応答に移ろうとするヤンさんにやさしくツッコミを入れる二人。二人から話題を振られているのに、シンセのチューニングに夢中で、話半分でしか聞いてなかったりと、噂にたがわぬお茶目かつ真摯な側面を見せてくれたりも。笑いの絶えない、ほのぼのとした雰囲気の中、使用機材の話や、いとうせいこう&タイニーパンクス『建設的』の制作秘話(というよりも思い出話♡)などを聞かせてくれました。
そして本編最後には、その『建設的』の収録曲であり、最新作『フォーエバー・ヤン ミュージック・ミーム2』にも収録されている“だいじょーぶ”を。いとうせいこうのボーカル&ハープ、高木完のエレキ・ギター、ヤン富田のモジュラー・シンセという編成で披露。フリーキーなイントロを長めに取ったこのライブ・バージョンは、『建設的』とも『フォーエバー・ヤン ミュージック・ミーム2』とも異なる世界観で、〈もう大丈夫〉という一節に新たな解釈の幅を提示しているようにも聴こえた。それにしても、いとうせいこうのファルセット・ボイスには得も言われぬ味わい深い魅力がある。
止まぬ拍手の中、ヤン富田一人が姿を現し、アンコールとしてDOOPEES“SOME DAY, THAT PLACE IN TIME”のストリング・オーケストラ部分を使用したモジュラー・シンセの独演を披露。映画のエンディングのような、希望に満ちた、そして悲しげなストリングスの旋律と、シンセのパラメーターに繊細な変化を加えながら手繰り寄せられる音色との兼ね合いは非常にドリーミー。ドローン・ミュージックにつきまとってしまいがちなおどろおどろしい雰囲気を見事に回避し、寧ろメロディアスでポップな空間がオーディエンスを包んでいた。会場出口では直筆サイン色紙(お茶目!!!)が配られるという思わぬプレゼントも!!!! なんとも充実したイヴェントでした。
5月以降、「10年分とも20年分とも」と自身で言うほど氏にしては珍しく頻繁なペースでライブを行っていますが、そんなこと言わずいっそのこと50年分でも100年分でもその姿を僕達の前に現してくれることを節に願います!
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