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第19回 ─ 幻惑されて、テンプテーションズ

ESSENTIALS 永遠の誘惑盤たち

連載
IN THE SHADOW OF SOUL
公開
2006/11/30   19:00
ソース
『bounce』 282号(2006/11/25)
テキスト
文/出嶌 孝次、林 剛

DAVID RUFFIN 『So Soon We Change』 Warner Bros./ヴィヴィド(1979)

エゴを暴走させすぎてグループを去ったデヴィッド・ラフィンは、モータウンにソロ・アルバムを7枚残しているが、このたび紙ジャケでリイシューされたのはワーナーでの2タイトル。素晴らしいスロウの表題曲で知られるこちらは移籍第1弾で、ジワジワ昂揚していくこれまたスロウの“Break My Heart”が絶品! ディスコ調のアップにおける身のこなしの軽さも案外聴きモノだ。
(出嶌)

DAVID RUFFIN 『Gentleman Ruffin』 Warner Bros./ヴィヴィド(1980)

ワーナーでの2作目。テンプス時代の無遠慮とも言えた豪快な歌いっぷりはやや影を潜めるも、熱のこもったラフィン節は健在。前作に続きプロデュースはドン・デイヴィスだが、さらにアーバンなムードを高めた本作でラフィンはジェントル&スタイリッシュに振る舞う。バック・コーラスにはリオン・ウェアやロニー・マクネアといったモータウン/デトロイトと縁の深い面々も参加。
(林)

EDDIE KENDRICKS 『The Ultimate Collection』 Motown 

印象的なファルセットでノーザン・ビートからサイケ味ファンクまでを華麗に乗りこなし、71年にソロに転じたオリジナル・メンバー。ディアンジェロのカヴァーでも知られる“Girl You Need A Change Of Mind”や豪奢なファンク“Keep On Truckin'”、性急なガラージ“Goin' Up On Smoke”など代表曲はこのベストで一応チェック可能。オリジナル作の一般向けリイシューが望まれるところだ。
(出嶌)

DENNIS EDWARDS 『The Essential Collection』 Spectrum 

20人以上の男たちが出入りしたテンプス史上、3度も加入と脱退を繰り返した放蕩者はこのデニスひとりだ(在籍期間は68~77年、80~84年、87~89年)。2度目の脱退後にモータウンに残したソロ作2枚をまとめたこの編集盤では、定番ネタとして知られる“Don't Look Any Further”など、持ち前のワイルドな歌声が楽しめる。現在はテンプテーションズ・レヴューなる〈分家〉を率いて活動中だ。
(出嶌)

DAMON HARRIS 『Silk』 Hot(1978)


“Papa Was A Rolling Stone”などでエディ・ケンドリックス似のファルセットを聴かせていたデイモン・ハリス。テンプスには71~75年まで在籍し、その後インパクトというグループを経てフィリー勢のバックアップで吹き込んだのがこのソロ作だ。故ラリー・レヴァン御用達のパラダイス・ガラージ名曲“It's Music”を含み、同時期のエディのソロを意識したかのような作りが興味深い。
(林)

TRUE REFLECTION 『Where I'm Coming From』 Atco/ヴィヴィド(1973)

デイモン・ハリスの後釜として2年ほど在籍したグレン・レオナードがそれ以前にいた〈ワシントンDC版テンプス〉とも評される4人組。アルバムはMFSBの面々がバックアップした完全フィリー録音だが、冒頭の“Whisper”からしてサイケ期テンプスのスタイルに則ったようなヴォーカル・ワークを聴かせる。グレンのファルセットに絡むバリトンとのやり取りが何ともスリリング。
(林)

THE ETHICS 『Golden "Philly" Classics』 Collectables 


テンプス屈指のファルセッターとして83年以来グループの顔となっているロン・タイソン。そのロンがかつて在籍していたのが、後にサルソウル系列から登場するラヴ・コミッティの前身グループ、エシックスだ。60年代後期のフィリー・サウンドに乗せてスマートなヴォーカル・ワークを聴かせるが、きっと彼らもテンプスに憧れていたはず。ロンはその憧れを現実のものにしたのだった。
(林)

THE FUTURES 『Castles In The Sky』 Buddah/ヴィヴィド(1975)

フィラデルフィア出身の5人組によるデトロイト録音の名作。後にデイヴィッド・ラフィンを手掛けるドン・デイヴィスも関与するが、こちらも冒頭の長尺曲“Castles”からテンプス風ファンキー路線で迫る。よって、そんなグループの中心人物で低音ヴォイス担当のハリー・マッギルベリーが後にテンプスで活動(96~2003年)したのは、ある意味必然だったのかも。ジャケ写、真ん中の彼だ。
(林)

G.C. CAMERON 『Love Songs & Other Tragedies』 Motown/ユニバーサル(1974)

2003年にテンプスに加入した最後輩メンバーではあるが、キャリアの華々しさでは歴代構成員でも最上位に位置するGC。スピナーズのリードを担当(67~71年)した後、初のソロ・アルバムとなったのが今作だ。パワフルなノーザン調からニュー・ソウル風、スティーヴィー・ワンダー制作の幻惑ファンクまでをこなす唱法の柔軟さは、テンプス加入後にも活かされているものだ。
(出嶌)