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第77回 ─ the band apart SMOOTH LIKE BUTTER TOUR FINAL@両国国技館2006年12月23日(土)

連載
ライヴ&イベントレポ 
公開
2007/01/11   13:00
更新
2007/01/11   21:49
テキスト
文/堀 知美

10月から約3ヶ月間、ワンマンも含め全国32カ所をツアーで回ってきたthe band apart。今回は、そのツアー・ファイナルとなった、両国国技館の模様をレポートします! 普段は〈大相撲観戦〉で使用されている両国国技館。相撲のイメージが余りにも強い会場での2006年最後のライブは、the band apartらしい、のびのび自由で爽快な楽しさと、あったかい優しさとに会場全体が包まれ、終演後も拍手が鳴り続けていました。

  〈ツアー・ファイナル、両国国技館!〉と聞いて、驚いた人は大勢いたのではないだろうか? 〈相撲の聖地〉でライヴをするという、若手バンドには異例の試み。いざ会場に入ると、土俵がない。普段、相撲が行われているその場所は、だだっぴろい体育館と化していた。しかし、天井にはしっかりと日の丸の旗がかかり、歴代横綱の肖像画がずらーっと会場を囲むように飾られている。独特の荘厳な雰囲気が会場全体を包む中、前方にはシンプルなステージがひとつ。開演前のBGMにはレーベル・メイトのmock orangeが流れる。会場独特の雰囲気とBGMのギャップに、自然とにやけてしまう。同時に、これから始まるライヴのわくわく感に拍車がかかる……。

  開演と同時に、木暮栄一のドラムが印象的な“72”のイントロが。いよいよ、ツアー・ファイナルの始まり始まり。“Still awake”、“SOMETIMES”と、サード・アルバムの曲順通りにバンアパ・サウンドが心地よく会場に響き渡る。続く、“FUEL”で歓声が上がり、会場全体が踊る踊る! 奏でられる音に、全体が自然と身を任せている。カラフルな照明が会場に色を添え、国技館が完璧にライヴ・ハウスと化した瞬間だ。荒井岳史のヴォーカルが力強い。ソリッドでいてダンサブルなバンド・サウンドが、圧倒的に会場をぐんぐんと突き抜ける。

 「両国観光がてらにこちらへ来た方もいらっしゃるみたいですわ」。ベース・原昌和の味のある口調のMCを挟み、会場のムードもふわっと和む。場所は特別感満載だが、いつもと変わらないバンアパがそこにいる。続けて原曰く「感無量の想いでやります」。

 “the noise”でステージ裏から、開けたように飛び出してくる照明。歌詞の切なさとサビのパッと開かれる感じが光とリンクして、なんともいえない感動的な雰囲気をかもし出していた。続く“higher”では、会場がまさにひとつになる感覚。にこにこ顔で、みんなサビを口ずさむ。心地よさとあたたかな感じが会場を包む。


 “Eric.W”から“coral reef”にかけては、盛り上がりもマックス! ギターの川崎亘一もぶんぶん髪を振り乱し、会場は興奮の渦に。長いツアーのファイナルも終盤となり、メンバーも残された時間で力を全部出し切るかのように精一杯楽しんでいる印象を受けた。力強く、のびのびと演奏する姿が、観ている方まで爽快な気持ちにさせてくれる。嫌なこともどこかに吹き飛ばしてくれるような、国技館の高い天井のもっと上へと突き抜けて行くような、そんなパワーにあふれていた。

 “Can't Remenber”が終わり、荒井、木暮、原と順番にステージを去り、残された川崎のソロが会場に鳴り響いた。ソロを終え、最後に川崎も去ると、会場はあたたかな拍手がずっと鳴り続いていた。アンコールの手拍子とはまた別の意味合いの拍手。それに快く応えるように、荒井はステージへと小走り(!)で登場。「(ステージに)来ればわかるよ。走りたくなる」と、朗らかな表情を浮かべる。原が続いて「こんな大きい所はなかなかできないけど、また小さい所で観に来て下さい」と語りかける。大きな両国国技館に立つ彼らは、私たちと何も離れていない。

 アンコール2回。最後に演奏した“K. and his bike”。プラネタリウムのような照明が会場を演出し、楽曲のセンチメンタルな美しいメロディとぴたりと重なった。この会場に居たすべての人たちの心へと、この場面が浸透していったことだろう。ライヴ後、何日経ってもあの時の感動がくっきりと心に残っている。忘れたくない、名残惜しい感じ。これがきっと、素晴らしいライヴだったということの何よりの証拠だ。

▼the band apartの過去の作品を紹介