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第25回 ─ メインストリームのオルタナティヴ

第25回 ─ メインストリームのオルタナティヴ(2)

連載
IN THE SHADOW OF SOUL
公開
2007/08/30   12:00
更新
2007/08/30   16:02
ソース
『bounce』 290号(2007/8/25)
テキスト
文/林 剛

ESSENTIALS 心のメインストリーム盤たち

TERRY HUFF AND SPECIAL DELIVERY 『The Lonely One』 Mainstream(1976)
メインストリームを代表するソウル盤にして70'sスウィート・ソウル傑作としても名高いワシントンDC産ヴォーカル作品。スペシャル・デリヴァリーと歌うのはLPでは“I Destroyed Your Love”のみとされるが、アル・ジョンソンのドリーミーなアレンジとテリー・ハフのファルセットがあればそれで十分だろう。恋に傷付いた男の心情を切々と歌い上げるナマズひげの兄貴に心酔!(林)

『Gonna Have A Good Time』 Pヴァイン
メインストリームとその傍系レーベルに残されたソウル音源をシングル中心に編集した日本制作のコンピ。この第1弾はディスコ一歩手前の70'sダンス・サウンドとソウルフルな歌に注目した内容で、バート・デコトーがアレンジしたセカンド・ヴァースやチョコレート・シロップによる開放感溢れるヴォーカル曲から、カルヴィン・アーノルドの南部系ファンキー・チューンまで傑作揃い。ステップトーンズのグレイトなダンサー、アルメタ・ラティモアの心地良いミディアムにも心躍る。 (林)

ALICE CLARK 『Alice Clark』 Mainstream/Pヴァイン(1972)
ジャズというよりゴスペル色が濃厚な情熱ヴォイスの持ち主。アリス唯一のアルバムは、ボビー・ヘブ作の数曲をはじめポップス曲のカヴァーが中心ながら、NYの腕利きプレイヤーたちだとされる面々のグルーヴィーな演奏をバックに、70年代らしい昂揚感を煽りながら力強くソウルフルに歌い上げる。ダニー・ハサウェイも歌った“Hey Girl”が粋にラストを飾る、メインストリーム屈指の歌姫盤だ。(林)

ELLERINE HARDING 『Ellerine』 Mainstream/Pヴァイン(1972)
女優~コメディエンヌとしても活躍したというマルチなシンガーの名作。愛を込めて〈下町のミニー・リパートン〉と呼びたいハイトーン・ヴォイスが最大の魅力なのは疑いないが、グルーヴィーなアップだとパワフルで気さくな歌いっぷりが顔を出す。演奏陣にバーナード・パーディやコーネル・デュプリーらを迎えたこともあって、同時期のアレサ作品に似たエレガンスも見え隠れ。(出嶌)

『A Man Needs A Woman』 Pヴァイン
コンピ第2弾は男女のソロ・シンガーにスポットを当てた内容。ノーザン・スタイルのモダンな70'sソウル曲を含みつつ60年代後半の〈買い取り音源〉も含む選曲は、ジャッキー・ビーヴァーズ・ショウのサム&デイヴ曲カヴァーに代表されるようにサザン~ディープ色が強く、痛快なファンキー・ナンバーも飛び出す。JBばりの激唱を聴かせるLJ・レイノルズや、その姉であるジーニー、またドリス・デューク、ロジャー・ハッチャーといった著名シンガーのシングルも貴重だろう。(林)

SUGAR BILLY 『Super Duper Love』 Fast Track/Pヴァイン(1975)
ブルース畑のシンガー兼ギタリスト、ビリー“シュガー・ビリー”ガーナーが傍系レーベルのファスト・トラックに残したファンキーな快作だ。女性にサトウキビを握らせるというジャケにも通じる、濃厚でいやらしい男汁サウンドの下世話な格好良さが痛快そのもの。コクのあるディープな歌いっぷりも冴え渡っている。なお、ヒットした表題曲は後にジョス・ストーンがカヴァー。(出嶌)

『Talk To The Rain』 Pヴァイン
セクシーなジャケで内容が想像できそうなコンピ第3弾は、ハーモニーの美しいスウィート・ソウル曲で構成された悶絶の甘茶ソウル盤。テリー・ハフ及びスペシャル・デリヴァリーはもちろん、第1弾でも他曲が紹介されたスペクトラムやチョコレート・シロップらの激甘バラードが続々登場し、レーベルの奥深さを思い知らされる。圧巻はウィー・ジーが本家脱退後に率いた分家ドラマティックス(~ドラマティック・エクスペリエンス)の4曲。有名とはいえ、これは本盤の目玉だろう。(林)