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第2回 ─ 曽我部恵一×橋本徹対談〈前編〉 音楽紹介の極意とは?

連載
曽 我 部 恵 一、 POP職 人 へ の 道
公開
2007/11/22   21:00
テキスト
文/bounce.com編集部

ご存知〈キング・オブ・メロウロック〉こと曽我部恵一のマンスリー連載! ご自身のお店〈City Country City〉でも素敵な〈手描きPOP〉を作っている曽我部氏が、タワーレコードのPOPを担当。独自のテーマでCD/DVD/書籍をチョイスし、その作品のPOP作りに挑みます。完成したPOPとセレクション・アイテムは、タワーレコード新宿店の〈曽我部コーナー〉にて展開……というWEB&店舗の連動企画! さて今回は、サバービア主宰/アプレミディ代表の橋本徹さんをお迎えしての特別対談が実現。幾多の人気コンピの選曲を手がけ、さまざまな音楽ガイドブックを編集してきた橋本さんに、音楽紹介文の〈極意〉を指南していただきました。ディープな〈POP論〉から、橋本プロデュース&曽我部参加の話題コンピ『ジョビニアーナ~愛と微笑みと花』の裏話まで、多岐に及んだロング・トークを前編・後編の2週に渡ってお届けします。

――橋本さんにとっての音楽紹介の出発点は、やはり90年末に創刊されたフリーペーパーのレコード・ガイド「Suburbia Suite」だと思うんです。その辺りからお話をうかがえればと。


「Suburbia Suite」をベースに、橋本氏が再編集して刊行した2冊「Suburbia Suite; Evergreen Review」と「Suburbia Suite; Future Antiques」

橋本 当時はバンド・ブームとかユーロ・ビートの盛り上がりがあったりして、自分が聴いてるような音楽は全然知られていなかった。でも一方では、オリジナル・ラヴとかフリッパーズ・ギターとか、ぼくの好きなテイストと共振するようなアーティストも徐々に出て来るようになっていて、好きな音楽に対する愛情を、自分たちの表現に変えていくようなタイプの人たちが、だんだん脚光を浴びてくる時期だったんだよね。その表現手段はDJとかミュージシャンとか、人によって色々だったわけだけど、ぼくの場合は出版社に入社していて、印刷物を作るノウハウがわかっていたから、フリーペーパーでやってみた。それが「Suburbia Suite」の始まりですね。

曽我部 その頃、ぼくは大学生だったんですけど、「Suburbia Suite」にはほんとお世話になりましたよ。読んでると聴きたくてしようがなくなると言うか。そこに自分の聴いたことない音楽の宝みたいなものが眠ってる気がして。

橋本 音楽を紹介するときに、まず書き手として自己満足したいって気持ちはあるんだけど、それ以上に「聴いてみたい」って思ってもらえる文章を書くように、すごく意識してやってた。なるべくイマジネーションを刺激するような文章にっていう。

曽我部 そこがすごかった! 読んで悶々としちゃってたもん。

橋本 ジャケのことしか書いてなかったりね(笑)。あと、自分で書いたものを女の子の口調に書き直してもらったりとか。そういう編集的な作り方をしてた。

曽我部 そんなに凝ってたんですか?

橋本 凝ってたというより、そういうことをするのが楽しかったんだよね。それまでの音楽紹介は、いわゆるロック雑誌的な原稿で思い入れを語るっていう書き方が多かったから、そういう意味で「Suburbia Suite」の文体はカウンターとして新鮮に響いたかもしれない。

曽我部 具体的な内容っていうよりも、その音楽にまつわるちょっとしたエッセイみたいな雰囲気でしたもんね。

橋本 まあ書き方については色んな実験をしてて、DJ向けのガイドを作るときは、ほんとに具体的な書き方もしたし、逆に雰囲気重視で一切曲名やミュージシャン名を出さないっていう書き方のガイドを作ったこともある。意外と伝わんなかったんだけど(笑)。

曽我部 CDショップのポップだと「エレピのイントロから入って~」とか、曲の説明がしっかりされてますからね。今はそういう方がわかりやすいのかなと思いますね。

橋本 そうだね。あと最近のポップって「何曲目がお薦め」みたいに書いてるじゃない? 自分が選曲したCDでそういう風に書かれてると、自分の感覚と全然違うんだよね(笑)。この曲聴いてもらったほうが今は売れるのかあって(笑)。

曽我部 橋本さんでもそんなにズレ感じます?

橋本 すごいある。で、曲順のことで言うと、曽我部君の最近のアルバムって、1曲目がキャッチーだよね。あれで女の子はグッとつかまれるんじゃないかな。

曽我部 ありがとうございます(笑)。最近はポップな曲がアタマの方に入ってるのが結構重要だなと思っていて、1曲目はキャッチーにしておきたいんです。

橋本 それは間口を広げることにもつながるしね。

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