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第7回 ─ 思わずジャケ買い! のあれこれ

連載
曽 我 部 恵 一、 POP職 人 へ の 道
公開
2008/03/19   13:00
更新
2008/03/19   17:42
テキスト
文/bounce.com編集部

ご存知〈キング・オブ・メロウロック〉こと曽我部恵一のマンスリー連載! ご自身のお店〈City Country City〉でも素敵な〈手描きPOP〉を作っている曽我部氏が、タワーレコードのPOPを担当。独自のテーマでCD/DVD/書籍をチョイスし、その作品のPOP作りに挑みます。完成したPOPとセレクション・アイテムは、タワーレコード新宿店の〈曽我部コーナー〉にて展開……というWEB&店舗の連動企画! さて今月のセレクション・テーマは〈思わずジャケ買い! のあれこれ〉。

今月のお題は、CDやレコードに必ず付いてくるお手軽アート〈ジャケット〉。思わずジャケ買いしたくなる、ナイスなアートワークの作品を紹介していただきます!

RAMONES『Ramones』

曽我部「このジャケは完璧でしょう。メンバー全員が写ってるし、モノクロだし、革ジャンにジーパンにスニーカーだし。いまは結構おしゃれでグラフィカルなジャケも多いけど、やっぱりメンバーが写ってて欲しいってのはあるかな。それは自分のジャケットを作る時も一緒ですね。サニーデイ・サービスの頃は、メンバーが写らない方がクールかなって思ってたんですけど、ソロになってからは自分の顔を出してる。音楽にしてもジャケにしても〈そのときの記録〉って意味が大きいから。それに、俺のCDのジャケが木の写真とかだったら変でしょ(笑)」。

THE STOOGES『The Stooges』

曽我部「このジャケはヌメッとしてて、とにかく気持ち悪い(笑)。ヌケが悪いというか、鈍い刃物を振りまわす危ないヤツって感じ。ロックってもっとハツラツとして、前に進んでいく音楽だと思うんですけど、このアルバムは、すごくネガなアプローチですよね。とにかく面白くないんだってことをひたすら言ってるわけで。こんな音楽は後にも先にもこれしかないんじゃないかな。やっぱりこういう、音とジャケが直結してるものが好きですね。例えば、ウィーザーの『Pinkerton』って、内容は100点だけど、ジャケが意味わかんないでしょ(笑)。あのジャケがもっと良かったら歴史に残るクラシックになるんだろうけど、あれじゃあちょっと……っていう。だから、100年後くらいにウィーザーが取り沙汰されるとしたら、ファースト・アルバムの方かなあと思う」。

OASIS『Definitely Maybe』

曽我部「メンバーみんなで部屋にいて、地球型の巨大なボールとかバート・バカラックのポスターなんかが写ってる。でも全然おしゃれじゃない。スタイリッシュな感じを目指したんだろうけど、その頑張った感がダサいよねえ(笑)。90年代に音楽がおしゃれなものになりかけた時に、オアシスはガツーンと変なダサさに揺り戻したじゃないですか。〈とにかくロックなんだ〉みたいな。そこが重要ですよね。おしゃれでかっこいいのは普通なんですよ。こんなにダサいけど、どうしようもなくかっこいいっていうのがロックのやるべきことなわけで。それは〈ダサかっこいい〉とも全然違う。そういう感覚が、このジャケにはよく表れてる。バカラックのポスターを載せるっていう音楽愛が込められてるのも最高」。

MY BLOODY VALENTINE『Loveless』

曽我部「家でレコードを整理してたら、このアルバムが2枚出てきたんだけど、やっぱこのジャケはいい。変だよね。道に落ちてたら、誰しもが見るんじゃない? みんなで持ち寄って、20枚くらい床に並べてみたいな。『Loveless』は、なぜか年月を経るごとに好きになってますね。何がいいのか、彼らが何をしたかったのかが、いまいちよくわかんない。でもロックってこういうことだなと思わせられる。その魅力ですね。マイブラは謎!」。

VELVET UNDERGROUND『Velvet Underground And Nico』

曽我部「ド定番すね。何がすごいって、このジャケを見ても、みんなバナナだと思わないで、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドだなって思うでしょう。バナナのTシャツを着てたら〈あ、ロック好きなの?〉って話になるし。でもよく考えたら、ただのバナナっていう。このアンディ・ウォーホールのメディアを操作していく力は天才ですよね。でもこれ、メンバーは相当嫌だったろうなあ。だってダークなイメージのバンドじゃないですか。みんな黒い服を着てサングラスかけちゃって。リリースの半年くらい前から〈どんなジャケになるんすか?〉なんてルー・リードもそわそわしてたと思うんですよ。で、ウォーホールに〈これなんだけど〉って見せられたのがバナナ(笑)。でもこのジャケットじゃなかったら……って考えると怖いよね」。

THE BEATLES『The Beatles(The White Album)』

曽我部「最後はやっぱりこれかなあ。究極のジャケですよね。一言で言えば、ずるい(笑)。いまのCDはグレイの字で〈The BEATLES〉って入ってるけど、元々の盤は真っ白で、エンボス加工の〈The BEATLES〉って文字が浮き上がってるだけ。このアート・ワークを選んだのは絶対ジョンでしょう。解散後のジョンとヨーコのアートな活動にも繋がるし。当時の段階で、このジャケってのは勇気がありますよね。あと、このアルバムは内容がかなりとっちらかっているから、それをフォローする意味合いもあるんじゃないかな。このジャケをあてがうことで、なんとかまとまるという」。

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