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第9回 ─ ツアー真っ只なか! 曽我部恵一の〈ライヴ盤な日々〉

連載
曽 我 部 恵 一、 POP職 人 へ の 道
公開
2008/05/15   22:00
テキスト
文/bounce.com編集部

ご存知〈キング・オブ・メロウロック〉こと曽我部恵一のマンスリー連載! ご自身のお店〈City Country City〉でも素敵な〈手描きPOP〉を作っている曽我部氏が、タワーレコードのPOPを担当。独自のテーマでCD/DVD/書籍をチョイスし、その作品のPOP作りに挑みます。完成したPOPとセレクション・アイテムは、タワーレコード新宿店の〈曽我部コーナー〉にて展開……というWEB&店舗の連動企画! さて今月のセレクション・テーマは〈ライヴ盤〉です。

  曽我部恵一BANDはただいま、アルバム『キラキラ!』を引っさげてのライヴ・ツアー真っ只なか。今回は、めまぐるしくライヴな日々を送る曽我部氏による〈ライヴ盤特集〉です! というわけで、まずは曽我部さん、ライヴ盤って好きですか?

曽我部「そうっすね。最近はライヴ盤しか聴いてないくらい。若い頃はライヴ盤の存在意義がわかんなくて、スタジオ盤があればいらないじゃんって思ってたんですよ。でもいまはむしろ、ライヴ盤の方がいい。スタジオで作り込んだり、エディットを重ねたものには興味がないんです。スタジオ・アルバムでも一発録りでやってほしいし、その人にとってのライヴ盤であってほしい。完成度はどうでもよくて、その人が出ていればいい。そう考えると俺は、音楽ってあんまり好きじゃないのかもしれない(笑)。単に、人が好きなのかなって。とはいっても、世の中一般的には、シュガー・コーティングされてる音楽の方が受け入れられるよね。EXILEのライヴ盤は求められてないと思うしさ(笑)。俺だって中学くらいの頃は、三上寛さんとか〈迫りすぎだな~〉と思ってたところがあったし。だから俺らは、そこも注意しなきゃいけないと思う。リスナーに近づき過ぎても駄目。そのバランスは大事だよね。それじゃあ行きましょうか」。

BOB MARLEY & THE WAILERS『Live!』

曽我部「これは、言わば定番ですよね。実はあまりライヴ盤的じゃなくて、音的にしっかりしたものなんだけど、ボブ・マーリーの肉体性というか〈全身声帯〉みたいな感じが、まざまざと伝わってくるところがすごいと思いますね。躍動感があり過ぎる。あと、お客さんとの関係性もすごくいいな。ベタベタし過ぎず、かといってクールでもなく、ひとつの空間をみんなで共有している気がします」。

RAMONES『It's Alive』

曽我部「これは最高。スタジオ盤よりちょっと速くて、ヴォーカルも荒い。基本をやってるだけ。シンプル過ぎる。工夫とか一切なし。なんにもない(笑)。この工夫のなさはいいなあと思うんですよ。ここでギター・ソロが入って……とか、そういうものが一切ないままでやってるところがミソかなと。そもそもラモーンズのライヴはかっこいいよね」。

憂歌団『BEST OF UKADAN LIVE』

曽我部「これはとにかく〈いい感じ〉って言葉がぴったりのアルバム。飲み屋でおじさんが突然歌いだす感じというか。憂歌団のライヴには結構影響を受けてるんですよ。お客さんの持って行き方とか。とにかく庶民的で、かなり敷居が低いところでやってる。そこがいいっすねえ。憂歌団の魅力はやっぱり、木村さんの歌と……顔かな(笑)。すごい気持ちよさそうな顔で歌ってるところが、ライヴ盤を聴いていて想像できるんだよね」。

JEFF BUCKLEY『Live At Sin-e』

曽我部「この人は『Grace』ってアルバムが評価されてると思うんだけど、それは俺は別になんとも思わなくて。でもこれはすごい。コーヒー・ショップみたいな、ちっちゃいスペースの隅に立って、アンプだけ置いてやってる。で、お客さんがコーヒーを飲んでる音とか、しゃべり声とかが普通に入ってる。全編弾き語りで、ヴァン・モリソンのカヴァーとかもやってるんだけど、めっちゃいい。エレキ1本ですごい世界に行っちゃってますね」。

THE MISFITS『Evilive』

曽我部「これは音が最悪(笑)。こんなもん、よく商品にしたなあっていう音質なんすよ。演奏もグシャグシャしてるし、注意して聴かないと何の曲かもわからないくらい。たぶんラインでカセットに録ったものを、そのままレコードにしたんじゃないかなあ。その感じが最高にいい。グレン・ダンジグはヴォーカリストとして素晴らしいよね。ジム・モリソン級。男っぽくてロマンティックな歌い方。俺、ロックでもレゲエでもラップでも、ヴォーカルが駄目だと聴かないんすよ。申し訳程度の歌は聴けない。上手い/下手は関係なくて、線が細くても、切り込んでくるものがあればいいんです。例えば、ニュー・オーダーのバーナード・サムナーの歌はいいと思いますもん」。

曽我部恵一BAND『LIVE』

曽我部「これはバンドを結成して、1年経ってないくらいの時期の音源かな。バンド組んだし、ライヴ盤でも出そうか、くらいの気持ちで作ったんだよね。ジャケも単に歌ってる自分の顔っていう。ライヴ盤ってそういうものだと思うし。あらためて聴くと、やっぱり初々しいよね。いまはもっと堂々と、存在感のあるライヴがやれてると思う。やっぱりこの〈存在感〉っていうのが大事なんだよね。もっともっとライヴをやることによって、もっと確固たる存在感を出して行きたい。いまのツアーが終わったら、また何かリリースしようとは思ってます。ツアーをやったら、毎回なんかしらのかたちで出したいんで」。

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